「ジェンダー」は、通常、予算と結び付けて語られる言葉ではない。例外は、カナダのビル・モルノー財務相が2018年に発表した声明で、この言葉が実に358回も使われたのを耳にした場合だ。
ジャスティン・トルドー首相は、フェミニストとして知られ、女性の平等を優先しようとしている。その根拠は、理念だけでなく経済にもある。
「私が話しているのは、より多くの女性を採用し、昇進させ、職場に定着させることです」と、同氏は今年の世界経済フォーラム年次総会で説明した。「それが正しいことだからでも、善いことだからでもなく、賢明なことだからです。」
カナダ政府によると、この40年間だけでも、労働力に占める女性の増加が、カナダの実質1人当たりGDP成長率の33%を占めてきた。経済成長を促し、世帯所得を押し上げ、より多くの世帯が中間層に加わる助けとなっている。
また、RBCエコノミクスの調査では、男女が労働力に平等に参加すれば、カナダのGDPは最大4%押し上げられる可能性があると推計している。
そのため今年の予算では、より多くの女性を職場に復帰させ、さらに賃金も引き上げるため、さまざまな施策が打ち出された。
格差の解消
カナダの女性の平均賃金は男性より31%低い。その一因は、パートタイムや臨時、低賃金の仕事に女性が過度に多く従事していることだ。しかし、労働時間の違いを考慮しても、男女間の賃金格差の中央値は依然として12%にとどまっている。
賃金面では公共部門が先導し、連邦規制対象の業種で同一労働同一賃金を徹底する新法を施行する。
「私たちにできるのは、率先して手本を示すことです」とモルノー氏は述べた。「そうすることで、女性の仕事があまりにも長く過小評価されてきたことを、すべての雇用主が振り返ってくれることを願っています。」
それでも、キャリアの上層部で女性の代表性が高まらなければ、賃金全体の平等という目標に大きな進展は期待しにくい。
カナダの労働力に占める女性の割合
賃金平等への取り組みに加え、予算では職場でのセクハラ被害者を支援する法律扶助の資金として620万ドルも確保された。
また、子どもが生まれた後に休暇を取る男性を増やすため、夫婦が育児休暇を分かち合うことを前提に、さらに5週間の有給休暇を提供する。
現在、両親がいる家庭は子どもの誕生後に12カ月または18カ月の休暇を取得できるが、育児休暇の申請の86%は女性によるものだ。
財政赤字を受け入れる
こうした改革には、必然的に国庫負担が伴う。たとえば育児休暇の延長には、5年間で12億ドルかかる。また、連邦規制対象の組織で同一賃金を確保するための費用も、相当な額になると見込まれている。
つまり政府は、毎年の財政赤字を計上し続けることになる。現在、2018~19年度には140億ドルの赤字が見込まれている。トルドー首相率いる自由党は、2015年の選挙運動で2019年までに財政収支を均衡させると公約していたにもかかわらずだ。
それでも、ジェンダーに焦点を当てた予算は、今後もカナダで続いていく。政府は、あらゆる予算決定をジェンダーの視点から分析すると約束しており、この慣行を法律にも明記する方針だ。
女性の就労者が増えることで新たな施策が経済拡大につながれば、こうした投資は長期的に必ず実を結ぶだろう。




