わずか10年余りで、セアラー州はブラジルで教育面の成績が最も優れた州の一つになりました。
州の社会経済状況が厳しいことを考えると、この成果はなおさら意義深いものです。
パンデミック後の世界でこの成功を再現するには、政策遂行能力の構築に重点的に取り組む必要があります。
ここ数十年、学校教育への普遍的なアクセスを可能にするうえで大きな進展がありました。それを受け、多くの途上国が生徒の学習成果の向上に向けた取り組みを加速させています。しかし、政治的な公約や財政投資が、必ずしも学習の改善につながってきたわけではありません。また、人口の一部の教育の質を高める一方で、他の人々を犠牲にすることも珍しくありません。そのため教育格差は一段と顕著になっており、この傾向は新型コロナウイルス感染症のパンデミック中も続き、さらに深刻化しました。
教育の質を高め、公平性を促進しようと、多くの途上国が他の教育制度から教訓を得ようとしてきました。とりわけ、シンガポールやフィンランドのように、高い社会経済発展水準と豊富な資源を背景に優れた教育を実現している地域が注目されています。豊富な資源に恵まれることがほとんどないグローバルサウスの国々にとって、このメッセージはあまり役に立たず、時にはいら立ちを感じさせるものかもしれません。
セアラー州はブラジルで教育面の成績が最も優れた州の一つ
こうした背景を踏まえると、ブラジル北東部のセアラー州の事例はきわめて異例です。国内でも特に貧しい地域に位置するため、2005年当時、セアラー州の生徒の学力評価、進級率、中退率が全国平均を大きく下回っていたことは、驚くにあたらないでしょう。それでも、わずか10年余り後の2019年までに、セアラー州は国内で教育面の成績が最も優れた州の一つになりました。この改善は公平性を損なうことなく達成されました。2017年には、セアラー州で社会経済的に最も恵まれない層に属する生徒の得点も、国内の他地域の同じ層の生徒と比べて最も高くなりました。
セアラー州の目覚ましい教育改善は、社会経済発展の水準が同様に低い隣接州、リオグランデ・ド・ノルテ州の経験と比べると、さらに不可解です。セアラー州とは異なり、リオグランデ・ド・ノルテ州では過去20年間、教育分野の実績が低迷したままでした。このため、両州の教育制度で発展の軌跡が分かれた理由を、資源の利用可能性だけで説明することはできません。

政策遂行能力を適切に整えたことが成功の鍵
最近の研究は、サウサンプトン大学とリオグランデ・ド・ノルテ連邦大学の研究者によるもので、こうした成果を政策遂行能力の観点から捉え直し、新たな知見を示しました。これは広く、「政策機能を果たすために必要な一連の技能と資源、すなわち能力と実行力」と理解されており、この概念は公共政策や行政学の研究者の間で、政策の成功と失敗を理解するためにますます用いられています。
教育行政に特化して考えると、教育制度には、多様な情報を収集し、そこから意味を読み取るという不可欠な能力が求められます。2000年代初頭まで、セアラー州の公教育の実績に関する情報はほとんどありませんでした。実際、州内の市町村立小学校の実績に関する初期の診断の一つでは、2004年時点で小学2年生の39%が読み書きできないことが明らかになりました。セアラー州教育局は、この状況に意気消沈するのではなく、学習危機の深刻さを知らせる警鐘として受け止めました。
複数の学問分野にわたる専門知識を持つ職員と、市町村レベルで以前に実施された改革を通じて蓄積された実務知識を生かし、セアラー州教育局は、生徒、教室、市町村、州の各レベルに関する多様で相互補完的な情報を含むデータ基盤を構築し、整備してきました。これにより、教育制度の実績や進捗を追跡し、課題を適時に把握できるようになりました。
世界経済フォーラムは、子どもたちのデジタル・インテリジェンスを高めるために何をしているのでしょうか?
セアラー州は、さまざまな政策手段を適切かつ柔軟に活用し、高い実施能力も示してきました。たとえば州は、市町村立学校を支援し、連携を図るために地方分権化の取り組みを始めました。これは、リオグランデ・ド・ノルテ州を含む他州の同様の取り組みが、主に州立学校を対象としていたのとは異なります。ただし、教員研修などの支援を直接提供したのは、識字率が特に低い市町村に限られていました。それ以外の市町村では、段階的な方法を取り、まず市町村教育局の職員を研修し、その職員が後に各市町村の教員を研修する方式を採りました。
こうした具体的な政策介入の根底には、教育改善を州の優先課題として扱うという確固たる政治的決意がありました。この決意をもたらした州の指導者たちは、かつてソブラル市の職員でした。同市は教育実績の低い自治体でしたが、一連の小規模な改革を通じて教育分野の実績を立て直すことに成功しました。政治的意思に加え、セアラー州は他の州政府部局や州政府以外の関係者からも支援を得ました。
セアラー州とは対照的に、リオグランデ・ド・ノルテ州の改革では、教育制度の進捗や課題を把握するためのデータを作成し、分析する関心と専門知識の双方が欠けていました。この重要な情報がないまま、州は成人教育における非識字問題への対処を試みましたが、学校教育の段階では実質的な介入を行いませんでした。州内の政治的混乱も、改革を支持する連合の形成を難しくし、状況を改善しませんでした。総合すると、政策遂行能力のさまざまな側面における差異こそが、社会経済状況の似た両州で教育成果が異なる主な要因だと考えられます。
セアラー州から何を学べるでしょうか?
分析、実施、政治の各能力を組み合わせれば、厳しい社会経済状況下でも教育改善を実現できることを示す感動的な事例として、セアラー州の教育改革は、グローバルノースで大きく取り上げられてきた高い成果を上げる教育制度の事例に、時宜を得た一例を加えています。世界的な注目を集めるとともに、ブラジルの教育制度では教育格差を埋めるため、セアラー州の例に倣おうとする動きがあります。2021年、リオグランデ・ド・ノルテ州はセアラー州から「適齢期識字プログラム」(PAIC)の教材を受け取り始めました。2007年に開始された主要なプログラムで、教育方法の開発、評価、教育管理を包括的に扱っています。
それ以前には、ブラジル連邦政府も同様に、このプログラムを全国規模に拡大しようとしました。しかし、全国版の取り組みは2018年に終了しました。この事例は、政策介入を生んだ地域の能力的な基盤を慎重に考慮しなければ、同じ国内であっても、その政策を模倣してうまくいく可能性は低いという教訓を示しています。グローバルサウスの教育制度改革に取り組む人々にとって、そうした能力をどう蓄積するかは喫緊の課題であるべきです。パンデミック後の世界で、学習の遅れを取り戻し、より良い形で「再建する」ためにも、その重要性は一段と高まっています。
