優れたビジネスリーダーを定義する資質については、多くの人が意見を共有できるだろう。最高のリーダーは決断力があり、人を鼓舞し、洞察力に富んでいる。現実的でありながら、成功に必要なリスクを取ることもできる。
しかし、世界で最も革新的なCEOに共通する、私たちの一般的なリーダー像にはなじみにくい資質がもう一つある。それは好奇心だ。
「30年間、優れたリーダーがどのようにして卓越した仕事をするのかを解明しようとしてきました」と、MITリーダーシップ・センターのエグゼクティブ・ディレクター、ハル・グレガーセンは語る。「彼らは皆、より良い質問をすることに秀でていると分かりました。現状を驚くほど見事に変容させる、触媒となる質問です。」
質問することは常にリーダーシップの一部だったが、急速に変化する今日のデジタル環境では、かつてないほど重要になっているとグレガーセンは言う。彼はMITスローン経営大学院でイノベーションとリーダーシップを教える上級講師でもある。成功の「要」と彼が呼ぶイノベーションを実現するには、リーダーは適切な質問をするほかない。
彼の最新刊『Questions Are the Answer: A Breakthrough Approach to Your Most Vexing Problems at Work and in Life』は、ハーパーコリンズから今年後半に刊行予定で、積極的に質問することを深く掘り下げている。これは、以前のベストセラー『The Innovator’s DNA: Mastering the Five Skills of Disruptive Innovators』(ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン、ブリガムヤング大学のジェフ・ダイアーとの共著)で取り上げた5つのスキルの一つだ。ビジネス、テクノロジー、政府、社会的企業における世界有数の革新的なリーダー200人以上への調査インタビューをもとに、グレガーセンは、優れた質問には触媒としての性質があることを見いだした。つまり、創造的思考を妨げる壁を取り払い、解決策を求める取り組みを、新しく加速した道筋へと導くのだ。多くの場合、質問が口にされた瞬間、まったく意外でありながら、すぐに腑に落ちるという逆説的な効果をもたらす。
質問をする最も一般的な場は、ビジネス会議だ。質問する力を高めるため、グレガーセンは従来のブレインストーミングを応用した「クエスチョン・バースト」を教えている。新しいアイデアを提案するのではなく、参加者が課題や機会について質問する。多くの場合、このプロセスから新たな視点と革新的な解決策が生まれる。しかし、ビジネス会議だけで分かることには限りがある。
外に出る
グレガーセンは、リーダーに廊下を歩き回り、外の世界へ出て、新たな質問のきっかけとなる情報や視点を探すよう勧めている。
「最も革新的で成功しているリーダーに共通する特徴の一つは、仕事時間の約30%を新しいアイデアの探究に積極的に費やしていることです」とグレガーセンは言う。「業界を揺るがし、まったく新しい道筋を切り開く洞察につながり得る、受動的なデータを探し求めます。孤立の殻から抜け出すためにあえて行動し、際立って異なる状況に身を置き、普段なら耳にしないこと――人々が言いたい、あるいは尋ねたいのに口に出せないこと――を聞けるよう、異なる人々と交流するのです。」
CEOであれ国家の指導者であれ、トップに立つことの最大の落とし穴の一つは孤立だ。「最初のリーダー職に就いた瞬間から孤立は始まり、上に行くほどそれに伴う課題は深刻になります」とグレガーセンは言う。「自分の世界観に合うよう、すでに手が加えられ、操作され、まとめられた情報が絶え間なく押し寄せます。トップに立つと、自分が知らないことすら知らないと気づくのは、耐え難いほど難しくなります。そこで変化に取り残され、意表を突かれるのです。」
CEOが殻に閉じこもると、「会社のイノベーションは衰退に向かっているか、すでに死んでいる」とグレガーセンは続ける。「数年前、チャールズ・シュワブのCEO、ウォルト・ベッティンガーにインタビューし、最大の課題を尋ねました。彼は『孤立です』と答えました。『人々は私が聞きたいと思うことを言い始め、聞きたくないことは言わなくなるのです。』」
グレガーセンが、今日のビジネス界で最も革新的な質問の使い手の一人と称賛するピクサー/ディズニーのエド・キャットムルにインタビューした際、キャットムルは孤立が現実との「危険な乖離」につながると指摘した。「成功して組織のトップに立った瞬間、危険なほど現実から乖離してしまうのはとても簡単です」とグレガーセンは言う。「ほとんどのCEOは在任中、結果を左右する決断を2つか3つ下します。それらを正しく行うための土台を築くには、オフィスの外に出なければなりません。意外で、居心地の悪さを感じさせ、自分の行動を考え直させる人々に会う必要があります。」
よく耳を傾ける
質問は、先入観なく答えに耳を傾けてこそ価値があるとグレガーセンは言う。「こうした状況に身を置けば、自分が何かについて間違っていると分かる可能性は非常に高く、それは居心地の悪いことです。リーダーは静かにして、周囲の世界だけでなく、自分の内側で起きていることにも耳を傾けなければなりません。そうすることで、別の問いが浮かび上がり、これまで気づかなかった機会が開けることがあります。」
グレガーセンがSalesforce.comの創業者兼CEO、マーク・ベニオフに、どうすれば自分に適切な質問を投げかけられるのか尋ねたところ、答えは「耳を傾ける」だった。何年も前、ベニオフは中小企業にエンタープライズ・ソフトウェアを販売する方法を模索していた。その際、1年間の休暇を取り、世界を旅した。
「ベニオフは、際立って異なる場所に身を置き、リーダーもそうでない人も、富裕層も貧困層も、企業も政府も、営利も非営利も含め、何千人もの人々に質問しました」とグレガーセンは言う。「そしてある日、太平洋で泳いでいるとき、アマゾンが本を売るようにエンタープライズ・ソフトウェアを売るというアイデアを思いついたのです。今なら『なるほど、当然だ』と思えますが、当時は『そんなことを思いつくなんて、ばかげている』という反応でした。このアイデアがまったく新しい業界を生み出しました。」
ベニオフは、自身の大きなアイデアが生まれた経緯を決して忘れなかった。「耳を傾けることはSalesforceの文化の中核をなす要素であり、継続的にイノベーションを起こす力の一部です」とグレガーセンは言う。
質問し、耳を傾ける力はイノベーションに欠かせないが、リーダーには「観察し、人脈を築き、実験する」ことも必要だとグレガーセンは言う。これらのスキルは、「スティーブ・ジョブズの言う『つながっていないもの同士をつなぐ』状況や、アインシュタインの『組み合わせ遊び』を生み出す助けになります。『The Innovator’s DNA』では、これを連想的思考と呼んでいます。」
これらすべてのスキルを最高水準で備える人は少ないが、リーダーは少なくとも一つに秀でることが重要だ。たとえば、インテュイットのスコット・クックは生まれながらの観察者だ。「何が意外なのかを知ろうと、常に世界を見回しています」とグレガーセンは言う。一方、アマゾンのジェフ・ベゾスは生来の実験者だ。テキサスにある祖父の農場で夏を過ごした若い頃に、その能力を磨いた。「祖父が壊れたトラクターを買い、修理するよう彼に課題を出しました」とグレガーセンは語る。「ジェフは早くから、挑戦し続ける必要があると学んだのです。」
優れたリーダーシップに結びつく従来からのスキルのうち、決断力は今も欠かせない。質問し、耳を傾けた後には、適切なアイデアにたどり着いたとき、それを見極めて行動に移す必要がある。また、そのアイデアが成功する機会を与えなければならない。
グレガーセンは、有名なナショナル ジオグラフィックの写真家サム・エイベルと協力し、ビジネスリーダー向けの写真講座でこの考え方を教えている。適切な構図を見つけ、シャッターを切る絶好の瞬間を待つことが重要だと説く。ビジネスの場では、リーダーは成功に向けた適切な枠組みを組み立て、全面的に取り組むべき時を待つ必要がある。
「何を成し遂げたいのかについて、確かな構想や深い明確さを欠いている経営幹部があまりに多い」とグレガーセンは言う。「状況を十分に力強く描けていないため、待つことも、他の人々がそれぞれの役割を果たすと信じることもできません。その月限りの流行を追うのが得意なリーダーは大勢います。構想は描けても、全面的に取り組んでいないため待つことができないのです。」
鋭さを保つ
探究し、質問し、創造的に考え、知識を吸収する力は、年齢とともに衰える傾向があり、絶え間ないイノベーションが求められる業界にとっては悩ましい問題だ。しかし、創造性や開かれた心が失われるのは、生物学的な過程というより、同調圧力が積み重なった結果かもしれない。
「より良い質問をする能力を失うのは、年齢が一因ですが、より良い質問をすることを重視しない組織で何十年も働くことも原因です」とグレガーセンは言う。「押しつぶされてしまうこともあります。」
白髪世代にとって心強いのは、キャットムルをはじめ、今日企業を率いる最も革新的なリーダーの多くが60歳を超え、70歳以上の人もいることだ。「私がインタビューした中で、最も挑発的なイノベーターの一人は、79歳のスチュワート・ブランドです」とグレガーセンは言う。伝説的な作家であり、『The Well』と『Whole Earth Catalog』の創刊者でもある人物だ。
「ブランドは何十年もの間、シリコンバレーの最先端を行くイノベーターの一人であり、今も周囲で最も聡明で好奇心旺盛な人物の一人です」とグレガーセンは続ける。「どうすればより良い質問を組み立てられるのか尋ねると、『毎日、自分がどれだけ多くのことについてまったく間違っているのかを考える』と答えました。彼は常に意外な発見を引き出そうとしています。若くても年を重ねていても、自分のやり方だけが唯一の方法だと思い込むことが落とし穴です。」
その落とし穴を避ける最善の方法は、リーダーが孤立せず、質問が奨励され、従業員が新しいことに挑戦しても打ちのめされない企業文化をつくることだ。「イノベーションに強い組織では、人々が立ち上がり、真実を追求できるようにする信頼が、システムの基盤にしっかりと根づいています」とグレガーセンは言う。「上級リーダーに気まずい質問を投げかけず、体系的に意外な発見を探し求めなければ、意外な事態のほうが先に私たちを見つけるでしょう。」
クエスチョン・バースト:簡単な実践方法
積極的に質問する力を養うため、グレガーセンはビジネスリーダーに「クエスチョン・バースト」と呼ぶブレインストーミングの工夫を試すよう勧めている。まず、組織が直面する中心的な課題や機会を定め、グループの全員にそれについてどう感じるかを書き出してもらう。次に、課題について急いで新しいアイデアを出すのではなく、通常は4分間など、時間を決めて順番に質問していく。
クエスチョン・バーストには二つのルールがある。答えを述べてはならず、なぜその質問をするのか説明してもならない。「そうすることで、他の人が問題や機会をどう捉えるかを制限せずに済みます」とグレガーセンは説明する。
セッションの最後に、全員にもう一度手短に気持ちを確かめてもらい、気持ちに変化があったかを確認する。その後、質問を一緒に検討し、さらに調査する価値のあるものを決める。最後に、このプロセスによって課題を捉え直せたか、新しいアイデアが生まれたかをグループで検討する。
グレガーセンは長年にわたり、何千人ものリーダーと実施したクエスチョン・バーストの結果を記録してきた。その結果、少なくとも80%のケースで課題の捉え方が少し良い方向に変わり、少なくとも一つの価値ある新しいアイデアが生まれることが分かった。このプロセスは、解決策を提案するだけの場合より多くのアイデアを生み出すだけでなく、意欲を高める効果もある。
「その後、少なくとも80%のケースで、人々は問題や機会について前向きな気持ちになります」とグレガーセンは言う。「研究によると、感情がより前向きな状態にあると、価値ある新しいアイデアを得られる可能性が高まります。」

