ザンビア東部のチパタ市は、自転車が主な交通手段であることから、通称「アムステルダム」と呼ばれている。
ザンビアの116地区のうち、自転車の数が最も多いのはチパタだ。
チパタで自転車が普及した背景には経済状況があったが、今では空気がよりきれいで、死亡事故が少ないことも評価されている。
その一方で、少年たちが家族のために収入を得ようと自転車をこぎ、正規の教育を放棄している。
人力の自転車が毎日、チパタの信号のある交差点を縦横に行き交い、食料品や乗客、公務員、さらには外交官まで運んでいる。
数か月前、ザンビアの首都ルサカにあるスウェーデン大使館は、駐ザンビア大使のアンナ・マイ・フルトゴード氏がチパタで自転車に乗せてもらう動画をツイートした。
とても興奮したフルトゴード氏は後に、その乗り心地について「環境に優しいだけでなく、車より滑らかで、とても快適です」と語った。
ザンビアの116地区のうち、自転車の数が最も多いのはチパタ地区だ。チパタ市の元市議会議員ポール・ナヨンベ氏は、市内に自転車タクシーが最大3,000台あると推定する。
チパタで自転車が普及したのは、住民が環境を守りたいと望んだからではない。むしろ経済的な事情から、より安価な移動手段を選ばざるを得なかったのだ。
しかし、2010年に膨大な数の自転車が道路を走ることで注目を集め始めて以来、住民は自転車が環境に優しいことをより意識するようになった。
始まり
ナヨンベ氏によると、約10年前、「中国の自転車商人がチパタに自転車店を開き始めると、新品の自転車の価格は一気に180ドルから、手頃な90ドルに下がった」。
「アジアからの自転車輸入がチパタに押し寄せる前は、ラレーなどの欧州製自転車ブランドは高価で、地元の人々には手が届かなかった」と同氏は語る。ラレーの自転車は350~2,000ドルだった。
さらに、チパタのアジア系自転車商人は、一括購入する余裕のない人が5か月に分けて支払えるようにしている。
「手頃な分割払いがあったから、私たちは始められたのです」と、毎日チパタ市中心部を縦横に走る自転車タクシーを10台所有するラメック・シグワラ氏は語る。
チパタの住民の中には、自転車による移動が起業を支える地域経済に貢献し、何千人もの若者に仕事を提供していると言う人もいる。
ザンビアのエネルギー省に勤めるディレディ・モヤナ氏はこう語る。「最も重要なのは、市の社会経済開発への貢献です。自転車に乗れば、少数の自動車タクシー事業者を豊かにするのではなく、庶民の懐にお金を回せます」。
また、自転車は通勤者が朝夕の交通渋滞を避けるのにも役立つ。乗客の安全を確保するため、道路には自転車レーンがきちんと標示されている。
さらに、自転車の運賃はタクシーより50%安く、住民はその利点を活用している。一般的な自転車移動の運賃は10セントだ。
最後に、チパタは小さな都市なので、自転車タクシーなら市内の主要地区に比較的早く到着できる。
影響
自転車タクシーがチパタの都市環境にもたらした影響は良好だが、課題もある。
非営利団体チパタ青少年開発財団の都市交通設計コンサルタント、アラン・フィリ氏によると、自転車で移動する文化のおかげで、チパタの自動車事故による死亡者数はザンビアでも特に少ない。
「ルサカと違い、チパタでは自動車事故に対応するためサイレンを鳴らして走る救急車をあまり見かけません」とフィリ氏は語る。
ザンビア警察によると、2021年に同国では32,372件の交通事故が発生し、2,163人が死亡した。そのうちルサカ州だけで17,774人と、国内最多を占めた。一方、チパタを州都とする東部州では1,151人だった。
「自転車での移動に関して、私たちは正しいことをしているのです」とナヨンベ氏は誇らしげに語る。
さらに、チパタの空気は他の都市よりきれいだと言われている。「チパタは免れてきました。車の密度が低いため、ルサカの深刻な大気汚染を」と、水資源開発・衛生・環境保護省の生態学者で大気質監督官を務めるミシェック・ナシロンゴ氏は語る。
課題
自転車移動の事業によって何千もの雇用が生まれた一方で、チパタでは少年たちが自転車をこぐために正規の教育を放棄し、家族の稼ぎ手になっている。
「深刻な危機になりつつあります」と、ナジョバ・ズールー氏は警告する。中等学校の教師である同氏によると、毎年、クラスの10人ほどの十代の男子生徒が、自転車タクシーの日銭に引かれて教室を離れている。
2018年、教育政策データセンターは、ザンビアの15~24歳の28%が初等教育を修了していないと報告した。自転車タクシー事業が全国の中退率の直接の原因とは言えないが、チパタでは要因の一つとなっている。
「中等教育を終えていない少年がチパタで自転車タクシーを営むことを禁じる市の政策を導入してほしいです」とズールー氏は提案する。
こうした懸念がある一方で、チパタの通勤者は自転車が街の原動力だと言う。「自転車に乗ると安心できます」と、市内に住む母親のモーリーン・ランガ氏は語る。





