気候変動対策の強力な担い手となり得る中間層

Visitors is silhouetted against a cloudy sky on the observation deck of a skyscraper in Tokyo February 23, 2007. REUTERS/Kim Kyung-Hoon (JAPAN)Also see GF2DWTFXPQAA - RTR1MQ3F
Middle class households are more educated than ever before.Image: REUTERS/Kim Kyung-Hoon
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「人生で最良のものは無料だ」と、昔の歌はうたう。だが、きれいな空気、健全な海、多様な種の保全といった地球規模の共有財に関しては、もはやそうとは言えない。私たちは何世紀にもわたり地球の偉大なシステムを酷使してきた。そして今、その請求書を支払う時が来ている。

共有財を守る方法は二つある。一つ目は、人間の環境負荷を減らすことだ。これは、ローマクラブが有名な著作『成長の限界』(PDF)で1972年に発表した初期の主張である。二つ目は、技術や取り組み方を革新することだ。

「アジェンダ2030」と、世界目標をめぐる合意は、二つ目の道筋を重視している。成功の鍵は、持続可能性を最優先すべきだと主張する環境保護派と、人々を第一に考える開発実務者との橋渡しをすることだ。

共通の目標を掲げているからといって、両者の間にある緊張を無視するのは現実を見ないことになる。誰もが、人々の豊かさと健全な地球環境の両方を望んでいる。しかし、その実現に使われる手段は、しばしば互いに相反する影響をもたらす。

この緊張関係が最も明確に表れる例が、石炭火力発電所に対する見解の違いだ。建設時の初期費用が低いため、経済成長を重視する多くの政策立案者にとって魅力的である一方、環境への甚大なコスト(地球規模の気候変動と国内の健康被害の双方を含む)は、環境保護派にとって受け入れがたいものとなっている。

この場合、技術が今、適切な代替策をもたらしている。インドでは、太陽光発電のコストは、石炭火力より安くなっている可能性がある。再生可能エネルギーとエネルギー効率を基盤とする双方に利益のある解決策は、成長と炭素排出量の削減を同時に実現できる。

しかし、別の状況では、少なくとも現状の普及速度では、技術は答えにならない。成長の制約をめぐる現代的な問題は、途上国で台頭する中間層に対する多くの環境保護派の複雑な見方に表れている。この層の人々は、貧しい人々より多くの商品やサービスを消費する。その分、汚染や環境劣化も進む。買い物で使うレジ袋、自動車からの炭素排出、食べ物を廃棄することで荒廃する土地、家畜飼料用穀物の生産に必要な灌漑による地下水位の低下、休暇中に使う日焼け止めによるサンゴ礁の破壊。挙げればきりがない。

中間層の発展に抗おうとしても意味はない。経済的、政治的な力があまりにも強い。現在およそ30億人に達する中間層は、中国、インドをはじめとするアジア諸国の急速な経済成長を背景に、歴史上かつてない速さで拡大している。産業革命の始まりから、最初の10億人の中間層消費者が生まれるまで、おそらく150年かかった。時期は1985年ごろだ。二つ目の10億人がその水準に達するまでには21年、三つ目にはわずか9年しかかからなかった。国際通貨基金が予測する道筋に沿って世界経済が回復すれば、2028年までにさらに20億人が中間層に加わり、総数は50億人に達する。

したがって、根本的な課題は、この大規模な中間層の拡大と健全な地球環境をどう両立させるかだ。人々の善意に訴えても効果はない。個人は、自分自身や日々の習慣が地球に大きな害を及ぼしているとは考えていない。集団行動の大きな失敗がある。各人が問題への対処を誰か別の人に任せればよいと考えるため、行動や習慣を変える人は少ない。そして変えたとしても、影響は小さい。米国では、個人が自分の炭素排出量を意識するようになり、LED電球を使い、電気自動車を運転するようになっても、その人の炭素排出量の削減は約5%にとどまる。

同様に、税や規制などの経済的なインセンティブも、成長や繁栄の見通しを損なうと受け止められれば、逆効果になりかねない。中間層は環境保護の理念に共感するかもしれないが、家計も強く気にかけている。世界価値観調査のデータによると、中間層の多くは、自国の環境を改善するためであっても、まして世界規模の取り組みのためには、増税を受け入れる用意がない。

しかし、地球規模の共有財に対する中間層の影響を緩和する方法はほかにもある。長期的には、中間層の拡大が人口増加を抑える強力な力になり得る。現在の欧州を見てみよう。人口増加率は年約0.2%にすぎない。実際、世界で予測される人口増加のほぼすべては、ナイジェリアやコンゴ民主共和国のように中間層の小さい地域で起きている。

中間層と人口増加のつながりは明らかだ。中間層の世帯は、教育水準が高く、都市部に住む割合も高い。子どもへの投資も多い。多くの地域で、娘たちは中等教育を受け、さらに高等教育へ進む。これは出生率に大きな影響を及ぼす。学校教育を受けていない女性は、高校を修了した女性より平均して4~5人多く子どもを産む。

世界全体で積み上げれば、その影響は大きくなり得る。人口について複数のシナリオを公表している国連は、2100年の世界人口の最も可能性の高い推計を109億人としている(現在は74億人)。一方、国際応用システム分析研究所の人口学者は、教育の改善を考慮すれば、ウィーンにある同研究所の推計では、2100年の人口はわずか90億人にとどまる可能性があるとしている。

この20億人の差は、中間層世帯が学校教育と家族計画を利用できるようにする一連の支援策が、どのような成果をもたらし得るかを示している。実際、気候変動対策支援として毎年約束された1,000億ドル(798億ポンド)の8分の1だけを教育に振り向ければ、教育支援の総額は倍増する。これにより、繁栄を築くと同時に地球を守ることができる。このように双方に利益をもたらす提案は、環境分野と開発分野の間に橋を架ける助けとなる。地球規模の共有財を守り、世界目標を達成するために、こうした連携が切実に求められている。

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