人材採用はあらゆる組織にとって重要な課題であり、金銭的インセンティブが誰が仕事に応募するかを決めるうえで重要な役割を果たすことが知られています(Dal Bó et al. 2013、Ashraf et al. 2014)。理論研究によれば、候補者が仕事について不完全な情報しか持たない場合、金銭的インセンティブは、より広範な仕事の特性を伝えるシグナルになり得ます(Benabou and Tirole 2003)。ある業務を行う人に多額の報酬を支払うことは、その業務が困難または不快であること、あるいはその他の特定の特徴があることを示唆する可能性があります。こうした特徴が労働者にとって重要であれば、金銭的インセンティブが伝えるシグナルは選抜に影響します。
私の ジョブ・マーケット・ペーパーでは、新設されたコミュニティ・ヘルス・プロモーター(CHP)職の採用キャンペーンを対象に、金銭的インセンティブの「シグナル」経路を研究しています。ウガンダの農村でCHPを採用する過程において、NGOのBRACと協力し、この職の予想収入に実験的な差を設けました。これを用いて、金銭的インセンティブが(1)候補者の仕事に対する認識、(2)応募者集団の規模と構成、(3)組織の業績に及ぼす影響を推定します。
CHP職は二つの要素から成ると考えることができます。「社会的」要素では、報酬のない保健サービス(健康教育、妊婦健診)を提供し、地域社会に正の外部性をもたらします。「事業」要素では、労働者が利益を得ます。つまり、CHPは生活必需品や健康関連商品を販売し、利益率を通じて報酬を得ます。NGOもこの職もそれ以前には村に存在していなかったため、候補者は二つの要素の相対的重要性、仕事が生み出す社会的成果、NGOの意図などを事前に正確に知ることができませんでした。そのためこの状況は、金銭的インセンティブが潜在的な応募者の間で二つの要素の重要性に対する認識を変えるかどうかを示すのに理想的です。
この研究環境の第二の特徴は、労働者間で収入にばらつきがあることです(販売した商品ごとに利益率を得ますが、基本報酬はありません)。そのためNGOは、採用された場合に各候補者がいくら稼ぐかを事前には把握していません。この特徴を利用し、CHP職を「高報酬」「中報酬」「低報酬」として広告することで、エージェントの予想収入を操作できます。これは、実際に働くCHPの収入分布から異なる値(最高値、平均値、最低値)を示すことで行います。処置が予想収入に及ぼす影響は理論上は一義的ではありませんが、収入分布のより高い値を示すほど予想収入が高くなることが分かりました。顕著性などの理論がこの結果を説明する可能性があります。これらの処置を、収入期待に外生的な変動を生み出す手段として用います。
1. 金銭的インセンティブは、候補者の仕事に対する認識に影響するか。
BRACが保健プログラムを拡大していた231の農村コミュニティで、計3,500人の回答者に対し、CHP職を「高報酬」「中報酬」「低報酬」として広告し、その後、仕事に対する認識について質問しました。結果から、候補者により高い収入水準を示唆すると、その仕事の事業志向の性質がシグナルとして伝わることが分かります。つまり、その職は保健サービスの提供よりも商品の販売に多くの時間を割く仕事だと受け止められます。金銭的インセンティブを高めると、仕事に期待される社会的成果が低下することを示します。一方、予想労働時間や業務の難しさに対する認識など、その他の期待には影響がありません。
2. 金銭的インセンティブは選抜に影響するか。
認識について質問すると、仕事の特定の側面が顕在化し、エージェントの期待や行動に影響するため、別の実験で金銭的インセンティブが選抜に及ぼす影響を調べました。BRACがプログラムを拡大していた315の農村コミュニティで、この職を「高報酬」「中報酬」「低報酬」のいずれかとして無作為に広告しました。この第二の実験では、認識について質問するのではなく、CHP職に応募したエージェントの人数と種類、およびその後に任命された人についてデータを収集しました。
金銭的インセンティブを高めると、応募者が増え、欠員が埋まる確率も上昇することが分かりました。しかしその代償として、向社会的な選好の強いエージェントが応募をためらいます。これは、金銭的インセンティブが強いほど、その仕事が「社会的」ではないと受け止められることと整合的です。
向社会的な動機を持つエージェントは、応募した場合にのみ任命され得るため、応募段階でのクラウドアウト効果は、採用候補者集団の構成に影響します。「高報酬」および「中報酬」処置で採用されたCHPは、「低報酬」処置の場合と比べ、保健ボランティアとして働いた経験がある割合、および地域社会を助けることが仕事の重要な特徴だと回答する割合が有意に低くなっています。公衆衛生NGOへの任意かつ匿名の寄付を求めると(独裁者ゲーム)、多額を寄付する割合が有意に低く(高い動機のクラウドアウト)、何も寄付しない割合は高くなります(低い動機のクラウドイン)。これは以下の図のパートAに示されています。
3. 金銭的インセンティブは、選抜を通じて組織の業績に影響するか。
より高い収入を示唆して候補者に働きかけると、潜在的な労働者の集団が変わることは明らかです。しかし、この変化はその後の業績に影響するのでしょうか。この問いに答えるため、2年間にわたりCHPの定着率と業績に関する月次データを収集し、CHPの顧客の無作為標本を対象に調査を実施しました。
2年後、CHPの27%が離職しました。向社会的な動機は定着率を左右する主要な予測因子であることが分かりました。寄付額が標準偏差1つ分増えると離職率が8パーセントポイント低下し、保健ボランティアとしての経験があると離職率が11パーセントポイント低下します。

また、仕事が「低報酬」として広告されたときに採用されたCHPは、より良い業績を上げることが分かりました。より多くの世帯を訪問し、妊婦健診をより多く行い、最も脆弱な世帯を対象にする割合も高くなっています。さらに、担当区域に住む世帯は、ウガンダで最も致死率の高い病気の一つである下痢の治療法を知っている割合が高く、聞き取りの前の6か月間に腸内寄生虫に感染した割合が低くなっています。
結論
金銭的インセンティブが伝えるシグナルの種類や強さは、仕事の特性によって状況ごとに異なることは間違いありません。それでも、今回の知見は、組織がこうした潜在的なシグナルと仕事の広告方法に細心の注意を払う必要があることを示しています。これらは選抜に大きな影響を及ぼし、それを通じて組織の業績にも影響する可能性があります。これは、強い向社会的動機を持つ労働者を必要とする公共サービス提供組織(政府、非営利団体、NGO、社会的企業、慈善団体など)にとって、特に重要です。
この記事は、最初に 世界銀行のDevelopment Impact Blogに掲載されました。
著者:Erika Deserrannoは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの博士課程在籍者です。
画像:2008年12月5日、マドリード中心部のHays事務所で候補者を面接するHays人材紹介会社のマネージャー。REUTERS/Susana Vera。



