なぜ今の場所に住んでいるのか?あなたやほかの人々を動かす要因

People walk across a street in Tokyo July 12, 2009. REUTERS/Stringer (JAPAN BUSINESS SOCIETY) - RTR25VH9
Economists point to three factors to explain how population is distributed: geographical characteristics, agglomeration, and history.Image: REUTERS/Stringer
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世界全体で、あるいは特定の国の中で、人々はなぜ今いる場所に住んでいるのだろうか。人口が非常に密集している場所がある一方、ほとんど人の住んでいない場所があるのはなぜだろう。日常では、こうした人口密度の違いを当然のこととして受け止めているが、よく考えると不思議な点も多い。

人口分布を説明する要因として、経済学者は3つを挙げる。第1は、地理的特性の違いであり、しばしば「第一の自然(first nature)」と呼ばれる。こうした違いによって、居住や生産に適した場所とそうでない場所が生まれる。山岳地帯、砂漠、ツンドラなどで人口密度が低くなりがちなこと、そして世界人口の多くが比較的容易に食料を生産できる場所に暮らしていることは、これで説明できる。

第2の要因は集積である。規模の経済や貿易による利益があるため、人間はしばしば狭い地域に集まるほうが効率的だと考える。もちろん、多くの産業、とりわけ食料生産はこうした集中の恩恵を受けず、むしろ第一の自然の資源が利用できる場所に分散している。さらに、集積の利益には限界がある。混雑や輸送費が生じるため、都市人口は多くの都市に分散し、それらの都市もまた空間的に離れて立地する。

人口分布に影響を与える最後の要因は歴史である。いったん成立した都市は、その場所にとどまり続ける傾向が非常に強い。この持続性は多くの要因から生じており、しばしばまとめて「第二の自然(second nature)」と呼ばれる(Cronon 1992)。その要因には、長期間にわたって存続する資本、政治権力、そして特定の場所で集積が始まると、そこが将来の均衡の自然な焦点となることが含まれる。Bleakley and Lin(2012)およびMichaels and Rauch(近刊)が論じているように、都市が特定の場所に成立した理由がもはや重要でなくなっていても、この持続性は大きな意味を持ちうる。

自然、集積、歴史がどのように作用し合い、今日見られる世界の人口分布を形づくったのかを完全に説明するには、単一の研究ではあまりに複雑である。私たちの最近の論文の目標は、より限定的だ(Henderson et al. 2017)。経済・技術の発展が、第一の自然の特性が人口分布に及ぼす影響をどのように変えたかを問う。これらの特性自体は、これまでのところ歴史を通じて大きく変化していないが、居住地に与える影響は変化してきた。空調、灌漑、特定の鉱物資源の新たな用途の発見は、そうした変化の分かりやすい例だ。私たちは、経済・技術の変化に伴う変化が最も重要だったと考える2つの自然的特性に焦点を当てる。第1は地域の食料生産への適性、第2は国内・国際貿易への適性である。ここ数世紀、人口密度を決める要因としての肥沃な土地の重要性は低下してきた。農業生産性が向上し、農場で働く労働力の割合が小さくなったこと、また輸送費が下がり、人々が食料の生産地の近くに住む必要がなくなったことが理由だ。輸送費の低下と貿易による利益を得る機会の拡大は、国内または国境を越えた貿易にアクセスしやすい立地(沿岸、航行可能な河川沿い、天然の良港など)の価値も同様に高めてきた。

私たちの目標は、こうした変化が今日の人口分布にどう表れているかを示すことだ。この目標に取り組むうえで、前述した持続性の影響が非常に重要だと分かった。私たちは、過去の技術が当時の集積にどう影響したかに関心があるが、使用する人口密度データ(後述)は今日の世界についてしか得られない。しかし、ある国で集積がいつ始まったかを大まかに把握できれば、今日の分布と歴史的な分布の類似性を利用して、その当時利用可能だった技術が集積にどう影響したかを知ることができる。

第一の自然に関するデータと今日の人口分布

歴史の役割を見る前に、まず第一の自然の特性が今日の世界の人口分布をどれほど説明できるかを検証する。これは、それ自体が興味深い問いだと言えるだろう。

人口の分散を測るにあたり、私たちは気象衛星が夜間に観測した光を出発点とする。具体的には、2010年の「Global Radiance Calibrated Nighttime Lights」データセットを使用する(Ziskin et al. 2010)。以前の研究(Henderson et al. 2012)では、国民所得勘定のデータが不十分な国において、夜間光データの経時的変化がGDP成長率の有用な代理指標となることを示した。光のデータは、解像度0.5分角(経度・緯度1度の120分の1)のピクセル格子として提供される。これを4分の1度四方の格子に集約する。各区画の面積は赤道上で約770平方キロメートルとなる。この解像度で、サンプルは約24万の格子区画から成る(水域だけで構成される区画は除く)。図1は、世界全体の格子区画データを示している。

図1 平均を差し引いた夜間光

Image: Vox EU

光を予測するために用いる第一の自然の変数は、3つのグループに分かれる。第1の「農業」グループは、食料生産と明らかに関連する要因である。6つの連続変数(気温、降水量、生育期間の長さ、農業に適した土地かどうか、標高、緯度)に加え、生物群系を示す14の指標(生物学者の研究に基づき、その地域で優勢と予想される自然植生を記録した、相互に重複しない地域区分)から成る。第2の「貿易」グループは、水上輸送へのアクセスに焦点を当てる。格子区画の中心が海岸、航行可能な河川、大きな湖、天然の良港から25キロメートル以内にあるかどうかを示す二値変数と、海岸までの距離を示す連続変数を用いる。最後に、「基礎」グループとして起伏の度合いとマラリア生態環境の2変数を定義する。これらは農業と貿易の双方におおむね同程度に関係すると考えられる。

図2a 固定効果を含まない、平均を差し引いた予測夜間光

Image: Vox EU

図2aは、格子区画ごとの夜間光を、第一の自然に関する3つの変数群で回帰した際の当てはめ値を示している。これらの変数は合わせて夜間光のばらつきの47%を説明し、図を見ると、当てはめ値は私たちが知る世界の姿と明らかによく似ている。しかし、この結果から、自然が人口密度のばらつきを実際にこれほど大きく説明すると結論づけるには、2つの問題が考えられる。第1に、可視光のばらつきは人口密度だけで決まるわけではない。1人当たり所得も大きな決定要因だ。そのため図1では、バングラデシュのほうが人口密度は高いにもかかわらず、日本のほうがはるかに明るく見える。第2に、地理的特性と所得または人口密度との統計的相関は、地理の真の影響を示すとは限らない。地理と相関する別の要因の影響を代理している可能性がある。たとえば、ヨーロッパの植民者が、定住に適した気候の土地には良い制度を、そうでない土地には悪い制度を導入したとすれば(Acemoglu et al. 2001の議論)、ヨーロッパ型の気候は所得を直接左右しないとしても、高所得を予測することになる。

図2b 固定効果を含む、平均を差し引いた予測夜間光

Image: Vox EU

この2つの問題には、各国内における夜間光と自然的特性のばらつきを見ることで対処できる。形式的には、分析に国固定効果を含めることに当たり、以下で報告するすべての分析でこの方法を用いている。図2bはその一例だ。国内の夜間光のばらつきだけを使って第一の自然の特性の影響を推定し、推定した国固定効果を除いて、世界全体の当てはめ値を算出する。図が示すように、各国内で地理が人口にどう影響するかだけを知っていても、世界各地の人口密度のばらつきをかなりうまく予測できる。農業と貿易の変数は、国内のばらつきの3分の1強を説明する。

第一の自然の特性の重要性の変化

次に、人口分布を決める要因としての自然的特性の重要性が、時とともにどう変化したかを考える。前述のとおり、私たちの手法の要は、集積が早く起きた国と遅く起きた国を比較することにある。早期の集積は、より昔の自然的特性の重みを反映している。残念ながら、集積がいつ起きたかを正確に示す、信頼性の高い一貫した指標はない。そのため、都市化に加え、教育と1人当たりGDPという2つの代理指標について、1950年のデータを用いる。この時点でこれらの指標が高い国ほど、都市化の過程が早く始まったと仮定する。データを分析するため、複数の統計手法を用いる。その1つは、「農業」と「貿易」の各変数の係数を早期集積国と後期集積国で別々に推定すると同時に、2つの国グループの境界をデータから決める方法だ(実質的には、考えられるすべての分割点を順に試し、最もよく適合する点を探す)。たとえば1950年の都市化率を使うと、早期集積国と後期集積国の境界となる都市化率は36.2%で、189か国中70か国(格子区画の57.2%)が「早期」グループに入る。次に表1は、可視光を従属変数として回帰した際の決定係数を示している。使用するのは、基礎変数のみ(国固定効果を含む)、基礎変数と農業変数、または基礎変数と貿易変数のいずれかだ。農業変数を加えたときの当てはまりの改善は、後期集積国より早期集積国で大きい。これに対応して、貿易変数を加えたときの改善は、早期集積国より後期集積国で大きい。1950年の教育または1人当たりGDPでデータを分けた場合も同様の傾向が見られ、新世界または旧世界だけを対象とした場合にも確認できる。都市化またはその代理指標と農業・貿易変数を線形に交差させるなど、別のモデル設定でも同様の結果が得られる。

表1 決定係数

Image: Vox EU

これらの結果は、一見すると不可解な話を示している。後期集積国は一般に貧しい国であり、早期集積国より平均して農業への依存度が高い。それにもかかわらず、人口と経済活動の立地を予測するうえで農業変数の性能が高いのは、後者のグループだ。この一見した矛盾は、農業生産性が上昇した時期と、貿易費用が低下した時期に注目すれば説明できる。集積が早く始まった国では、農業生産性の上昇が輸送費の低下に先行した。つまり、人々が農場から都市へ移り始めた時点では、食料を運ぶ費用はまだ比較的高かった。その結果、都市は食料生産に適した地域の近くに立地した。これに対して後期集積国では、都市化を可能にした農業生産性の上昇は、輸送費の低下に比べて後から起きたため、立地を決める要因としては輸送費低下のほうが相対的に強く作用した。図3はこの説明を裏づけるデータの一部を示す。早期・後期集積国のグループ別に人口の都市部比率を示し、輸送費の世界指数も合わせて示している。後期集積国が特定の都市化率に達した時点では、早期集積国が同じ水準に達した時点と比べ、輸送費がはるかに低かったことが明らかだ。

図3

Image: Vox EU/Bairoch/Mohammed and Williamson

この分析から導かれる興味深い示唆は、現在になって都市化が進んでいる国の人口分布は、早い時期に都市化した国よりも現代の技術に適しているということだ。たとえばヨーロッパでは沿岸部の人口密度がすでに特に高いが、推定結果によれば、ヨーロッパの発展がもっと遅かったなら、沿岸部の人口密度はさらに高くなっていたはずだ。同様に、アフリカがより早く発展していたなら、エチオピア高原やコンゴ盆地などの内陸地域の人口密度は、今日実際に見られるより相対的に高かっただろう。

私たちの論文で示した説明からは、国内の地域間格差についても別の示唆が得られる。農業に適した土地を中心に経済活動が営まれ、輸送費が高かった時代から人口分布を受け継ぐ早期集積国は、沿岸部への集中が強く輸送費が低い後期集積国より、夜間光の空間的な分布が全体として平等になると予想される。この予測を検証するため、各国について格子区画間の夜間光の空間ジニ係数を計算した。表2は、夜間光のジニ係数を1950年の都市化率に回帰した結果を示す。予測どおり係数は負だ。さらに、地理的変数で予測した夜間光のジニ係数に加え、国土面積と人口(ひいては人口密度)の指標を調整しても、結果は変わらない。

表2 夜間光のジニ係数

Image: Vox EU

結論

「地理は運命」という格言は、しばしばナポレオンの言葉とされる。一方、米国の実業家ヘンリー・フォードは、実際に「歴史はたわごとだ」と述べた。私たちの研究は、国内の人口分布を考える際、どちらの言葉にも疑問を持つ理由があることを示した。人々がどこに住むかを決めるうえで、地理が大きく影響するのは明らかだ。しかし、重要となる地理的側面は時代とともに変わる。さらに、立地には非常に強い持続性がある。そのため、過去に地理が果たした役割、すなわち歴史は、今日の人口の空間分布にもなお反映されている。

何百年も前に築かれた都市に座り、何千キロも離れた場所で栽培されたコーヒーを飲む多くの読者にとって、こうした話は大きな驚きではないだろう。しかし、地理、技術、経済成長、歴史が織りなす動的な相互作用を理解することは、今日世界が直面する多くの課題を考えるうえで非常に重要だ。私たちの論文はその取り組みの小さな一歩にすぎない。経済・技術の発展に伴って異なる地理的特性の影響が変わり続けているだけでなく、今後数十年で地理的特性そのものも、ますます速いペースで変化する。同時に、発展途上地域の多くでは都市化が急速に進んでいる。今日下される立地の決定は、これから何世紀にもわたって影響を及ぼす。

参考文献

Acemoglu, D, S Johnson, and J A Robinson(2001)、「比較発展の植民地的起源:実証的検証」、The American Economic Review 91.5 1369-1401.

Bairoch, P(1988)、 Cities and Economic Development、シカゴ:University of Chicago Press。

Bleakley, H, and J Lin(2012)、「舟運と経路依存性」、The Quarterly Journal of Economics 127.2: 587.

Cronon, W(1992)、Nature’s metropolis: Chicago and the Great West、WW Norton & Company。

Henderson, J V, A Storeygard, and D N Weil(2012)、「宇宙から経済成長を測定する」、American Economic Review 102(2): 994-1028

Henderson J V, T Squires, A Storeygard and D Weil(2017)、「経済活動の世界的な空間分布:自然、歴史、貿易の役割」、ワーキングペーパー、Brown University。

Michaels, G, and F Rauch(近刊)、「都市ネットワークの再編:117-2012」、The Economic Journal。

Mohammed, S I. Shah, and J G Williamson(2004)、「1869~1950年の英国不定期貨物船における運賃と生産性向上」、Explorations in Economic History 41.2: 172-203.

Ziskin, D, K Baugh, F C Hsu, T Ghosh and C Elvidge(2010)、「2006年の放射輝度夜間光データに用いられた手法」、Proceedings of the 30th AsiaPacific Advanced Network Meeting, pp. 131-142.

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