カール・ユングはかつて、「人生における最大の特権とは、本当の自分になることだ」と述べました。この言葉を聞くと、私たちが持つ可能性を最大限に引き出すにはどうすればよいか、いつも考えさせられます。成長と学びの機会を見いだし、受け入れるのは、一人ひとりの責任です。しかし、学習する文化を築くことは、雇用主やリーダー、現場の管理職の責任でもあります。ここに問題、あるいはギャップがあるのです。
世界経済が回復するなか、企業は依然として、労働力をめぐる課題への理解が遅れています。SAPが後援したオックスフォード・エコノミクスの新たな大規模国際調査「Workforce 2020」によると、経営幹部と従業員の双方が、企業はリーダーシップの崖に直面しており、将来のリーダー育成に十分注力していないと認識しています。
リーダーシップを育み、職場に学習環境をつくることに苦慮する企業は少なくありませんが、これは成功を支える基本要素の一つです。リーダーシップのようなものは特に、進捗や成長を測定しなければ効果的に管理するのは困難です。現職および将来のリーダーのスキルを育み、高めるにあたり、各組織は公式に、あるいは成り行きに任せる形で、それぞれのペースと期待水準を定めています。(何もしない場合でさえ、それが一つの基準点になります。)
オックスフォード・エコノミクスとの共同調査では、世界の経営幹部の半数以上が、人材とスキルの問題が業績に影響していると認めていることが分かりました。明らかになった重要な違いの一つは、企業の収益成長率によって、こうした問題への対処状況が異なることです。
平均を上回る収益成長を遂げている企業は、同業他社よりも、従業員に高度な研修・育成プログラムを提供し、業務を適切に遂行するために必要な情報へのアクセスを与える傾向があります。一方、意外かもしれませんが、業績不振の企業のほうが、自社のリーダーシップ能力に自信を持っています。少なくとも、リーダーシップの実績と育成に関する自社評価ではそうです。しかし、業績の高い組織は人材に対してより懐疑的であり、社内昇進と外部採用のバランスを取り続けています。私はこれを、競合他社に先んじ、トレンド(ミレニアル世代、非正規労働者、グローバル化、高齢化する労働力など)を先取りする「健全な人材パラノイア」と呼んでいます。実際、半数以上が、基礎から中程度のスキルを持つ従業員の採用が難しいと答えており、これは人材戦略に直接影響します。私たちが見ているのは、世界規模で二極化したスキルギャップです。言い換えれば、高度なスキルを持つ人々と、スキルを持たない人々に分かれた経済です。
朗報は、研修と教育の充実によってこのギャップを埋められ、従業員と雇用主の双方に利益をもたらし得ることが、調査で示されている点です。業績の高い企業はこのメッセージを受け止め、組織に学習の方針を掲げています。その利点と事業への影響を理解しているのです。調査結果もこれを裏付けており、業績の高い企業は従業員向け福利厚生として、より多くの研修プログラムを提供していることが明らかになりました。多くの企業は上層部のリーダー職から着手します。しかし私は、労働力の大半と接する最前線のリーダーを最も強固にすることこそ、将来の優れたリーダーを育てるために最も重要な出発点だと考えます。
現実には、ほとんどの企業には明日に備えるために取り組むべきことが多く、成長を目指すなかで、社内に目を向け、資源を節約する方法を再考する必要があります。本当の自分になることは特権だというカール・ユングの言葉は正しいのです。雇用主として、私たちには、従業員が自らと組織双方の利益のために才能とリーダーシップスキルを伸ばせるようにする責任があります。そのためには、人事部門が学習文化づくりの先頭に立つ必要があり、テクノロジーが変革の触媒となります。人事と学習を戦略上の優先事項とするための土台を、今築くことが重要です。今こそ行動の時です。今をつかみましょう。
本記事は、 SAP Community Networkとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
アジェンダの最新情報を得るには、 週刊ニュースレターにご登録ください。
著者:Brigette McInnis-DayはSAP Community Networkに寄稿しています。
画像:東京のビジネス街でエスカレーターに乗る男性。REUTERS/Yuya Shino


