最も多くの雇用を生み出すのは、どのような企業か?

最も多くの雇用を生み出すのは、どのような企業か?
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企業は雇用を生み出す。開発途上国で事業が根付くよう促すことは、より多くの雇用を創出するための長年の手段だった。しかし、開発途上国で最も多くの雇用を生み出すのはどの企業だろうか。答えは定まっていない。これは残念なことだ。なぜなら、この問いへの答えは、失業にどう対処するかという政策に重要な示唆を与えるからだ。雇用創出の弱さは、生産性の高い企業の成長を妨げる歪み(Hsieh and Klenow 2009、Hsieh and Klenow 2014、Bartelsman et al. 2013)を反映している可能性もあれば、需要の制約による可能性もある。後者の場合、生産性は成長と存続を左右する、さらに重要な要因かもしれない。また、雇用創出の限界は、既存企業の停滞、新規参入の不足、そして/または過剰な退出によって生じている可能性がある(Davis et al. 1996)。どの要因が最も重要で、誰が雇用を生み出しているのかを理解すれば、民間セクターの発展を促す政策の設計に役立つ。たとえば、中小企業振興プログラムは、小規模企業が最も多くの雇用を生み出すという考えに基づいている。

企業の規模よりも年齢が重要

先進国の企業レベルのデータを用いた近年の研究は、生産性の高い企業が急速に成長できることが、雇用創出にとって決定的に重要であることを示唆している。Haltiwanger et al. (2013) と Criscuolo (2014) は、米国やその他のOECD諸国で「成長するか退出するか」という動態が見られることを示している。最も生産性の高い新規参入企業は拡大し、最も弱い企業は事業から退出する。その結果、最も多くの雇用を生み出すのは、若く急成長する企業と、大企業である。言い換えれば、規模よりも年齢が重要なのだ。

平均的な企業規模が小さく、産業部門が所得に占める割合を拡大させている開発途上国では、状況が異なる可能性がある。自営業者を含む登録企業すべての情報を収録した独自のデータセットを用い、私たちの新しい論文(Rijkers et al. 2014)は、失業率が高く、その状態が長期化しているチュニジアにおける民間セクターの雇用創出のパターンを分析し、全雇用の大部分を占める中小企業の貢献に特に注目している。

私たちは、総雇用創出の弱さは、上方への移動の不足や既存企業の停滞として現れる活力の不足と、最良の企業の成長を妨げる市場の不完全性の結果だと論じる。小規模企業の新規参入は雇用創出の重要な原動力だった一方、参入後の雇用実績は、大企業よりも劣っていた。

第一に、1994年から2010年にかけて、チュニジアの企業規模の分布は、小規模雇用に大きく偏ったままだった。純雇用創出の大部分は、創業直後の自営業(創業から1年目で、従業員1人を雇用する企業)によってもたらされた。図1は、1996-2010年の企業規模別・年齢別の純雇用創出総数を示しており、従業員1人の企業の創業が、総雇用創出に重要な貢献をしたことを示している。またこの図は、雇用創出が若い企業に集中していることも示している。

第二に、小規模企業の参入後の実績は振るわず、上方への移動の不足が雇用創出を妨げている。平均すると、小規模企業は大企業より多くの雇用を生み出す傾向がある。図2は、雇用創出を企業規模で回帰した係数(青い点線)を示している。しかし、この関係は小規模企業のほうが若い傾向にあるために見られるものだ。企業年齢を考慮すると(赤い線)、小規模企業が生み出す雇用は大企業より少ない。つまり、米国やその他のOECD諸国と同様、小規模企業がより多くの雇用を生み出すのは、若いからであり(図3に示すとおり)、規模が小さいこと自体が理由ではない。チュニジアの企業動態で特徴的なのは、事業を継続できた小規模企業でさえ、大企業より多くの雇用を生み出さないことだ(図4)。これは、先進国の経験とは大きく異なる。先進国では「成長するか退出するか」という動態が特徴で、小規模企業は大企業より退出しやすい一方、存続する企業に限れば成長する可能性も高い。

最後に、こうしたパターンは、資源配分のプロセスの不備によって生じているようだ。収益性と生産性はいずれも純雇用創出と正の相関があるものの、その相関は非常に弱い。最良の企業は、事業を拡大して市場シェアを獲得するのに苦労している。また、企業の生産性は年齢とともに急速には高まらない。これは、市場が最良の企業を選別するのではなく、むしろ雇用創出を妨げていることを示唆する。同時に、非効率な生産者も事業を続けられている。何らかの形で市場シェアを守ることができているからだ。

開発途上国における企業動態

チュニジアの結果は、開発途上国の企業動態と、先進国の労働動態に関する研究と符合する。Hsieh and Klenow (2009; 2014) は、生産性の高い企業が時間の経過とともに大企業へ成長できないことが、開発途上国の総生産性の伸びを先進国に比べて大幅に損なうことを示している。Bartelsman et al. (2013) は、欧州諸国のグループと米国において、狭く定義された産業内での生産性と規模の共分散を推計している。彼らは、総生産性が高い国ほど、資源配分の効率性が高いことを見いだした。さらに、移行期の東欧では規模と生産性の共分散はほぼゼロ(または負)だったが、その後上昇しており、資源配分の効率性が急速に改善した。したがって、開発途上国で企業の動態が弱いことは、先進国より生産性実績が相対的に低いことを説明する大きな要因となっている。雇用に目を向けると、総生産性の伸びを支える急成長中の高生産性企業は、先進国における雇用創出の主要な源でもある(Haltiwanger et al. 2013、Criscuolo 2014)。したがって、チュニジアのように失業が深刻な国で、資源配分の非効率性が雇用創出の失敗を説明する一因となっているのは不思議ではない。

チュニジアで雇用創出を阻む根本的な制約は、最も生産性の高い企業の拡大を促すビジネス環境が欠けていることだ。企業の参入・拡大や労働者の雇用・解雇に対する規制上の障壁、煩雑な破産手続き、機能不全に陥った金融セクターといった政策や制度は、いずれも競争圧力を弱め、資源の効率的な配分を妨げている。その結果、新規および既存の中小企業に融資するプログラムは、これらの企業が成長することはめったにないため、失業への対処に適していない。チュニジアの雇用創出は、日差しを遮られた苗床のようなものだ。いくつ種をまいても、障壁を取り除かなければ、花はほとんど咲かない。

参考文献

Bartelsman, E, J Haltiwanger, and S Scarpetta (2013), 「生産性の国ごとの差異:資源配分と選別の役割」, The American Economic Review 103: 305-334.

Criscuolo, C, P Gal, and C Menon (2014), 「DynEmp: 雇用創出、成長、イノベーションにおける若い企業の役割に関する新たな国際比較の知見」, VoxEU.

Davis, S, J Haltiwanger, and J Schuh (1996), 雇用の創出と喪失, Cambridge, USA: MIT Press.

Haltiwanger, J, R Jarmin, and J Miranda (2013), 「誰が雇用を生み出すのか?」, Review of Economics and Statistics 95 (2): 347-361.

Hsieh, C-T and P Klenow (2009), 「中国とインドにおける資源配分の歪みと製造業のTFP」,Quarterly Journal of Economics 124(4): 1403-48.

Hsieh, C-T, and P Klenow (2014), 「インドとメキシコにおける事業所のライフサイクル」,  Quarterly Journal of Economics 129 (3): 1035–1084.

Rijkers, B, H Arouri, C Freund, and A Nucifora (2014), 「最も多くの雇用を生み出すのはどの企業か?チュニジアからの証拠」, Labour Economics 31: 84-102.

本記事は、 VoxEUとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Hassen Arouriは、チュニジア国立統計研究所で企業登録・経済調査部門の主任技師兼ディレクターを務める。Caroline Freundは、ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー。Antonio Nuciforaは、世界銀行のブラジル担当主任エコノミスト。Bob Rijkersは、世界銀行の開発経済学研究グループに属する貿易・国際統合ユニットのエコノミスト。

画像:東京のビジネス街で階段を上る男性。REUTERS/Yuya Shino。

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