最新のネットワーク準備度指数(NRI)によると、シンガポールはフィンランドを抜き、世界で最も効果的にデジタル技術を活用する国となりました。しかし、上位ランキングを占めているのは欧州諸国で、今年はトップ10に7カ国が入りました。香港と韓国が順位を落としたことで、シンガポールは唯一残ったアジアの虎です。
NRIは、世界経済フォーラムの 『Global Information Technology Report 2015: ICTs for Inclusive Growth』の一部です。NRIは、各国が情報通信技術(ICT)を活用する能力を特定するもので、政治・ビジネス環境全般、国民・企業・政府におけるICTの準備状況と利用水準、さらに経済と社会全体に対するICTの影響を評価します。
143の経済圏を対象とした2015年の結果は、先進経済圏の優位性と、経済圏間だけでなく経済圏内にも存在する多面的なデジタル格差が根強く残っていることを裏付けています。また、ICTがもたらす機会から最も必要とする人々を遠ざける、広範なデジタル貧困が明らかになっています。
こうした状況の診断に加え、報告書の2015年版は、デジタル貧困を緩和し、ICT革命を世界規模で実現するための解決策を、第一線の専門家や実務家から提示しています。
NRIによる、デジタル時代を最も活用している経済圏トップ10は次のとおりです。
1. シンガポール
この都市国家の政府は、世界屈指のオンラインサービスと電子参加ツールを提供しており、政府効率に対する情報技術の影響では、アラブ首長国連邦に次ぐ順位です。シンガポールは、世界で最もビジネスとイノベーションに適した環境を備え、デジタル対応人材の割合はフィンランドに次いで2位です。このように恵まれた土壌があれば、デジタル利用が広く浸透しているのも不思議ではありません。シンガポールは、人口当たりのモバイルブロードバンド契約数が最も多い国です。一方、インターネットの普及率は意外に低く、定期的にインターネットを利用する人は人口の4分の3にとどまり、首位のアイスランド、ノルウェー、スウェーデンを大きく下回ります。それでも人口の半数以上が知識集約型の仕事に従事しており、その割合はルクセンブルクに次いで2番目です。
2. フィンランド
2年連続で首位だったフィンランドは2位に後退しましたが、スキルでは世界最高位にあり、政治・ビジネス環境とインフラも優れています。手頃な価格でアクセスできることと相まって、こうした要因が国民や企業の間での幅広い利用を促してきました。フィンランドは大規模な情報技術産業を全面的に再編する方法をまだ見いだしていませんが、人口当たりの特許件数で日本を抜き、世界最多となりました。政府はデジタル産業を振興する方法を再検討しており、こうした取り組みによって、政府のオンラインサービス提供と電子参加の悪化に歯止めがかかると期待されています。これらの分野での後退が、同国の首位陥落につながりました。
3. スウェーデン
わずかな低下はあったものの、スウェーデンの政治・ビジネス環境は引き続き世界屈指です。優れたインフラ、手頃な価格でのアクセス、高い技能を持つ国民を背景に、企業と一般の人々の間で情報技術の利用が広く浸透しています(2013年には個人の95%が定期的にインターネットを利用)。こうした活動は、経済と社会に大きな影響をもたらしています。スウェーデン企業は新製品・サービスの創出において高い革新性を示し、ICT関連技術の特許取得をリードしています。また、現在、スウェーデンの労働力のほぼ半数が知識集約型の仕事に従事しています。
4. オランダ
オランダは、政治・規制の枠組み、ビジネスとイノベーションの環境、インフラとスキルの面で非常に高い評価を得ています。ただし、手頃な価格での利用は依然として課題で、この分野では世界72位です。そのため、モバイルおよびモバイルブロードバンドの契約数は少なくなっています。一方、個人利用は幅広く、パソコンとブロードバンドへのアクセスでは世界3位です。企業間および企業・消費者間のインターネット利用水準は非常に高く、政府サービスへのオンラインアクセス提供でも政府は先進的な立場を保っています。その結果、電子参加ではオランダが世界最高位となっています。
5. ノルウェー
北欧諸国の中で3位のノルウェーは、世界最高のデジタルインフラを備えています。インターネットへのアクセスでは、ノルウェー人はアイスランド人に次いで2位です(95%)。ノルウェーは影響度の指標でも高い評価を得ており、職場環境の適応性と教育におけるデジタル技術の利用はいずれも世界3位です。労働者のほぼ半数が知識集約型の仕事に従事しており、基本的サービスへのアクセス改善にデジタル技術を効果的に活用する分野では6位です。
6. スイス
スイスは企業利用で最高位にあり、機械設備、電子機器、医薬品、時計製造、銀行業などの主要産業を含むスイス企業は、バリューチェーンの頂点にとどまるために情報技術を活用しています。人口当たりの固定ブロードバンドインターネット契約数は世界最多であり、これが、人口の50%以上が知識集約型の仕事に従事する(ルクセンブルク、シンガポールに次いで3位)世界有数のイノベーション大国となる一助となっています。これとは対照的に、スイス政府はデジタル化を積極的に進めておらず、政府のオンラインサービスでは先進経済圏の最下位に位置しています。
7. 米国
米国は、手頃な価格での利用(53位)と国民全般のスキル(33位)を除き、ほぼすべての項目で高い評価を得ています。デジタルインフラは引き続き世界屈指(4位)で、あらゆる関係者の利用水準も高くなっています。これらすべてが、経済と社会への大きな影響につながっています。米国企業は幅広い産業・分野でデジタル技術を活用して新たな事業や機会を創出しており、米国は情報技術の可能性を生かすために投資する大規模な先進経済圏の好例であり続けています。
8. 英国
英国は、情報技術の発展に世界で最も適した環境の一つを誇ります(4位)。最高水準のインフラ、手頃な利用料金、国民の高い準備度も強みです。個人利用は近年改善し、現在は世界4位です。固定・モバイルブロードバンドインターネットアクセスの普及率は世界でも特に高く、英国企業は企業間利用(3位)と企業・消費者間利用(1位)の両方で先導的な役割を果たしています。労働力のほぼ半数が知識集約型の仕事に従事しており、情報技術は社会全体に大きな影響を与えています。特に電子参加では、英国は世界4位です。
9. ルクセンブルク
近年、政府は情報技術に関するビジョンを策定しました。また、ICTクラスター・イニシアチブの枠組みで設立された官民パートナーシップの支援もあり、ルクセンブルクはここ数年、順位を上げています(2012年にはまだ21位でした)。手頃な利用料金では50位と低い順位にとどまる一方、知識集約型の仕事に従事する労働力の割合(60%)では世界をリードしています。ただし、政府のオンラインサービス(42位)と、市民の電子参加の促進(54位)には改善の余地があります。
10. 日本
日本は過去1年間で6つ順位を上げ、企業利用ではスイスに次ぐ2位となりました。日本人は世界で最も熱心な情報技術利用者の一部です。ほぼ10人に9人が定期的にインターネットを利用し、携帯電話のほぼすべてがスマートフォンで、人口当たりのモバイルブロードバンド契約数は世界3位です。しかし、デジタル技術は、北欧諸国、米国、イスラエル、大韓民国ほど経済に同様の破壊的影響をもたらしていません。その背景には、階層的で家父長的な企業文化、社会の比較的高いリスク回避傾向、そして不利な規制体制があり、いずれもアイデアの創出と事業の立ち上げを妨げている可能性があります。
こちらもご覧ください:デジタル準備度ランキング 欧州、 サハラ以南のアフリカ、 北アフリカ・中東、 ラテンアメリカ、および アジア。
以下のヒートマップを使って、ネットワーク準備度指数をご覧ください。
著者:ティエリー・ガイガー、アソシエイト・ディレクター、エコノミスト、グローバル・ベンチマーキング・ネットワーク、グローバル競争力・リスク部門、世界経済フォーラム
画像:ハノーバーのCeBit見本市に設置されたタブレット端末。REUTERS/Morris Mac Matzen



