紙幣に肖像を載せるべきなのは誰だろうか?
これはイングランド銀行が英国民に投げかけている問いだ。同行は新しい50ポンド紙幣に載せる科学者の推薦を受け付けており、実在した故人で、「英国の思想、革新、指導力、または価値観を形作った」人物でなければならないとしている。
この話題には論争もつきまとう。2013年、イングランド銀行が、戦時中の首相ウィンストン・チャーチル卿を、刑務所改革に取り組んだエリザベス・フライに代えて5ポンド紙幣に載せると発表した際、運動家たちの怒りを招いた。その結果、4種類の紙幣のいずれにも女性の歴史的人物が描かれないことになった。
活動家でジャーナリストのキャロライン・クリアド=ペレスが先頭に立って長年運動を続けた後、中央銀行は、新しい10ポンド紙幣に作家のジェーン・オースティンを載せると発表した。同紙幣は2017年に流通を開始した。新しい20ポンド紙幣には男性芸術家のJ・M・W・ターナーが描かれ、2020年の発行が予定されている。
この騒動は、紙幣が世界各地の文化を映し出すことを物語っている。ユーロ紙幣には、さまざまな歴史的様式の橋、アーチ、出入口が描かれている。ただし政治的な理由から、実在の建造物ではなく、それぞれの建築時代を表す架空の例が使われている。米国では、奴隷制廃止運動家のハリエット・タブマンを20ドル紙幣に載せる計画は、まだ実現していない。
運動家たちは、紙幣に描かれる人物の幅広さには象徴的な重要性があると主張する一方、2018年には現金について語ることさえ少し時代遅れに思えるかもしれない。
多くの国が現金からの移行を進めており、この傾向は、人々とお金との関係だけでなく、お金を発行し守る中央銀行の役割も変えつつある。
こうしたテーマは、世界経済フォーラムの『Beyond Fintech』レポートで取り上げられている。同レポートは、消費者の購買がオンラインやモバイルのチャネルへ移行している様子を示している。また、市場が似ていても、決済体験には大きな違いがあることを明らかにしている。
同レポートはカナダを例に挙げている。カナダでは規制により、「スマートカード」とも呼ばれるICカードの普及が米国よりかなり早く進んだ。一方、米国では小売業者からの圧力で導入が遅れた。その結果、2016年にICカードが使われた米国の店頭決済は約19%にとどまったのに対し、カナダでは90%を超えた。
インド政府はキャッシュレス経済を推進している。同国の「キャッシュレス・インディア」プログラムは、国を「デジタル技術によって力を得た社会と知識経済」へと変革することを目指し、「顔なし、紙なし、現金なし」をスローガンに掲げている。
2016年、インドで500ルピー札と1,000ルピー札が廃止されたことをめぐる論争のなか、モバイルウォレットが急速に普及した。全取引に占める割合は、2016年の約20%から2022年には57%に達すると予測されている。
ほかの国々でも、オンラインショッピングや決済が拡大している。
同フォーラムのレポートによると、大手多国籍企業がオンライン決済分野を支配するようになり、今後も利用が拡大する見通しだ。
「現金とデジタル市場には互換性がないため、決済は今後もキャッシュレスの手段へ移行し続けるだろう」と同フォーラムのレポートは述べている。
現金離れの傾向が続くなか、紙幣のデザインをめぐる議論は、今後それほど激しくなくなるかもしれない。一方で、現金が日常生活で使われる機会が減るにつれ、紙幣の象徴的な意味合いが強まる可能性もある。



