極度の貧困の撲滅について考えるとき、多くの人はこの考えを基本的ニーズの提供と結びつけます。食料。水。住まい。清浄な空気、安全、さらには基礎的な医療や初等教育へのアクセスも含めるべきだと主張する人もいます。しかし、インターネットへのアクセスはどうでしょうか。開発においてインターネットはどこに位置づけられるのでしょうか。
これは、近日刊行予定の 『2016年世界開発報告書:開発のためのインターネット』の執筆者たちに投げかけられた大きな問いの一つです。また、世界銀行グループで最近開催された「デジタル貿易:便益と障壁」と題する円卓討論会のテーマでもありました。経済学者や開発分野の専門家をはじめ、官民両セクターの代表者が一堂に会し、こうした問題のいくつかを詳しく議論しました。
議論の中心となったのは、貿易にとってインターネットが何を意味するのか、特に開発途上国のオンライン起業家にとって何を意味するのかという点でした。インターネットはさまざまな意味で、イノベーションを象徴します。では、自らのアイデアを世界に発信し、世界市場に参入しようとする人々が、それを最もうまく実現できるようにするにはどうすればよいのでしょうか。これはインフラの問題でしょうか。それとも規制の問題でしょうか。
数字から見えてくることを見てみましょう。
世界開発報告書(WDR)は、「インターネット」という語をデジタル技術の略称として用いています。そして、ここで分かっているのは、デジタル技術の普及の速度が、歴史的に見ても前例のないものだということです(図1)。現在、 推定30億人がオンラインで、そのうち40%がオンライン商取引に参加しています。
おそらく最も基本的な点として、インターネットは企業と顧客の間のコミュニケーションや情報にかかるコストの削減に役立ってきました。企業は消費者が何を求めているかをよりよく把握でき、消費者は企業が何を、いくらで、どこで販売しているのかをよりよく知ることができます。インターネットは、オンライン決済システムを通じて、商品を購入する新たな方法を提供します。

さらにインターネットは、サプライチェーン管理の改善や物流の向上を通じて、企業の効率と生産性の向上も可能にしてきました。企業はリアルタイムで連絡を取り合い、中間投入財や最終製品が常にジャストインタイムで納入されるようにできます。
そしてもちろん、オンライン市場や、完全にデジタル化された製品・サービスもあります。これらも情報の非対称性の問題を減らし、買い手と売り手の信頼を高めるのに役立ちます。
近年の研究では、ある国におけるインターネット利用の増加は、二国間輸出の増加と相関していることが示されています。実際、輸出業者にとっては非常に大きな効果がある可能性があります。ある国でインターネットの利用が10%増加すると、貿易が1.9%増加する可能性があります。
別の研究によると、小規模企業や販売業者は、従来のオフライン貿易よりもオンライン貿易で占める割合が大きくなっています。こうした販売業者は、より幅広い商品を提供し、従来は届かなかった地域にも販売していることがよくあります。データが限られた初期段階の研究ではありますが、これらの知見は、開発途上国の経済における起業活動や中小企業に、重大な影響(および潜在的な便益)をもたらす可能性を示唆しています。
では、デジタル貿易の機会をつかむために、何ができるのでしょうか。
多くの場合、貿易には構造的な障壁があります。物理的な通信インフラや、信頼できる輸送・配送ネットワークが不足していることがあります。信頼性が高く信用できるオンライン決済システムを開発すること、あるいはそれを利用できるようにすることも、よくある課題です。人材、すなわち才能ある起業家を育成するプログラムや、オンライン事業の管理・運営を担う熟練スタッフの確保も、注意を要する分野です。
法制度や規制は、デジタル貿易を促進するうえでも制約するうえでも、極めて重要な役割を果たし得ます。これは、オンライン市場の多くに不可欠である一方、世界の主要な開発途上地域で整備が遅れている電子決済システムの構築に関して、特に当てはまります。
最後に、文化的な障壁もインターネットの可能性に影響を与え、そのあり方を形づくります。言語の壁のような単純なものもあれば、オンライン小売に対する認知や信頼に関する、より複雑な問題もあります。
WDR 2016 では、こうした問題をさらに掘り下げます。刊行に先立ち、世界銀行グループの貿易・競争力グローバルプラクティスは、5月19日にデジタル貿易に関する問題を幅広く取り上げる終日セミナーを開催します。政策、イノベーション、起業活動、ラストマイル配送などを扱います。当日は、世界各地から集まる専門家によるパネルに分かれ、学術界、シンクタンク、国際機関、そして新興市場のデジタル貿易の最前線で活躍する民間企業のイノベーターが参加します。
この記事は、 世界銀行Trade Post Blogに初掲載されました。
本稿の掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:マイルズ・マッケナは、世界銀行グループの貿易・競争力グローバルプラクティスのリサーチアナリストです。
画像:従業員が顧客をモバイル送金サービスに登録している。REUTERS/Thomas Mukoya


