米国経済は4月に22万3,000人の雇用を創出した。前月の雇用者数は下方修正され、わずか8万5,000人となった。過去3カ月間、経済は平均で約19万1,000人の雇用を創出している。同時に、民間部門の賃金は4月、前年同月比で2.2%上昇したが、これは一般に健全とみなされる名目賃金の伸びを大きく下回る。
労働者が所得に占める割合を維持または高めるには、連邦準備制度のインフレ目標を2.0%、年間の生産性上昇率を1.5%と仮定すると、名目賃金は少なくとも年率3.5%で上昇する必要がある。これに対し、名目賃金は過去1年間で2.2%、過去3カ月間では年率換算で2.3%上昇した。直近3カ月を見るのは、月ごとの変動に惑わされず最近の傾向を把握する一般的な方法だ。しかし先月、3カ月間の年率が2.7%へ加速したのは、明るい傾向というよりノイズのように見える。
生産・非監督職の労働者の賃金上昇は引き続き停滞している。民間部門の雇用のおよそ5分の4を占めるこの労働者層の賃金上昇率は、1月以降一貫して全労働者の伸び率を下回っており、賃金格差の拡大に寄与していることがうかがえる。生産職の名目賃金は4月、前年同月比でわずか1.9%の上昇にとどまった。
それでも、レジャー・ホスピタリティ部門(レストランを含む)では、より健全なペースで賃金が伸びているようだ。同部門の過去3カ月間の賃金上昇率は年率4.0%だった。同期間、建設業の賃金は年率約3.7%上昇した。金融部門の賃金は過去3カ月間に2.6%上昇し、民間部門全体の平均である2.3%を上回った。
先月、雇用創出で際立った成果を上げた部門はほぼなかった。専門・ビジネスサービスでは約6万2,000人の雇用が増えた。建設業では4万5,000人増えたが、同部門は3月に雇用を減らしており、過去2カ月間の純増は3万6,000人にとどまった。製造業の雇用はほぼ横ばいだった。最近の貿易赤字の 拡大 を踏まえれば、予想される結果だ。
25~54歳人口に占める就業者の割合は4月に77.2%となり、今年1月の上昇後、ほぼ変わっていない。これは賃金上昇にとって明るい材料ではない。労働市場の逼迫を示す指標は数多くあるが、重要な指標の一つが、働き盛り世代の人口に占める就業者の割合だ。就業率が高まれば、雇用主は労働者を引きつけ、雇用を維持するために賃金を引き上げざるを得なくなる。
過去25年間、名目賃金の伸びが3.5%という目標を持続的に上回ったのは、働き盛り世代の人口に占める就業者の割合が 少なくとも79%だった時だけで、これは現在の就業率を大幅に上回る。働き盛り世代の人口に占める就業者の割合は2014年にほぼ1ポイント上昇したが、現在は伸びが鈍化し、過去1年間で約0.7ポイント、過去3カ月間で0.8ポイントとなったようだ。そのため、就業者割合が79.0%を超えるのは2年以上先、2017年半ばごろになると見込まれる。そしてその時になって初めて、健全な名目賃金の伸びが期待できる。
賃金上昇に大幅な加速が見られない以上、米国の労働市場には依然として大きな余力がある。失業率が5.4%で賃金上昇が弱いことは、労働力人口にまだ加わっていない潜在的な労働者が大勢いるか、あるいは賃金インフレを引き起こさずに、失業率が、逼迫した労働市場に対応すると経済学者が通常想定する目標を大幅に下回り得ることを示唆している。
本稿は、 The Washington Centre for Equitable Growthとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
アジェンダの最新情報を受け取るには、 週刊ニュースレターに登録してください。
著者:ベン・ジッペラーは、Washington Center for Equitable Growthのリサーチエコノミスト。
写真説明:このイラスト写真には米ドル紙幣が写っている。REUTERS/Nicky Loh。



