災害時の保健医療対応で効果があること、ないこととは?

災害時の保健医療対応で効果があること、ないこととは?
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2015年4月24日(土)、大規模なマグニチュード7.8の地震が、正午を少し過ぎた頃にネパールを襲った。地震学者らが長らく予測していたこの大地震により、人口3,100万人の山岳国で、老朽化した建造物の多くが倒壊した。また、世界各地から訪れていた登山者に影響を及ぼす雪崩も発生した。

世界各地の発展途上国にある多くの山間地域と同様、ネパールは三つのリスクにさらされている。地震活動が活発な地形、地滑りや雪崩が起きやすい斜面、そして近代的な耐震構造物を建設するための資源不足である。同国の貧困はまた、地震で被災した住民の広範なニーズに効果的に対応するには、外部からの支援が必要であることを意味する。

現時点で最も重要な問いは、国際社会がどのように対応するのが最善かということだ。このような事態に対応する際、国際救援チームは何ができ、何をすべきなのか。

研究では、国際的な保健医療支援の多くが適切な対象に届いておらず、現地で必要とされるものよりも、支援国の国内で評価されやすい目的に左右される可能性があることを示す、十分に裏付けられた証拠が得られている。現在も続くネパール地震への対応を例に、この点を見てみよう。

被害を評価し、緊急のニーズを把握する

地域の高速道路で起きた多重衝突事故であれ、ヒマラヤでの大地震であれ、あらゆる緊急事態への対応で最初に行うべきことは、直ちに状況を評価することである。

このプロセスで最も重要なのは「ニーズ評価」と呼ばれるもので、初期の被害評価を用いて、その時点でどのような救助、保健医療、食料、避難所のニーズがあるか、また今後、短期・中期的に何が必要になりそうかを予測する。ニーズが明らかになれば、それを満たすために適切な対応を振り向けることができる。

こうした評価の経験があり、被災国全域の被害を推定する最新の衛星画像技術を備えた国際機関や国連機関は、対応の優先順位を定めるうえで現地当局を支援できる。

ネパールのカトマンズで大地震により倒壊した寺院の現場において、生存者を捜索しながら瓦礫を撤去する日本の救助隊員。
共同通信/ロイター

捜索・救助は直ちに行う必要がある

地震では建物が倒壊し、人々が閉じ込められ、多数の負傷者が生じる。2010年のハイチ地震でも、そして今回のネパールでもそうだった。倒壊した建物では、命を救うため、直ちに捜索・救助活動を行うことが極めて重要となる。

残念ながら、圧挫傷の性質上、迅速な救出が必要である一方、外部から来る捜索・救助(SAR)チームが救出できる人数には限りがある。重い瓦礫によって四肢への血流が途絶えると起きるクラッシュ症候群は、被災者を無事に救出できたとしても腎不全につながる可能性がある。また、圧挫傷は深刻な、時には致命的な失血を引き起こすこともある。どちらの場合も、命を救うには迅速な救出が必要だ。

数十年前、災害疫学者のErik Nojiらは、地震後に成功した救出の最大90%が 家族や現地の居合わせた人々によって行われることを示した。瓦礫の下に閉じ込められた人々は、直ちに救助されなければ、すぐに命を落とす可能性が高い。地震発生から48時間、72時間、あるいは96時間後に現場へ到着するチームに、大きな成果を期待することはできない。過去の事例からみて、地震発生から約72時間後にネパールへ派遣された米国のSARチームが、多くの人命を救う可能性は低い。

過去の事例から、国際SARチームは数百万ドルもの費用をかけても、救える命はほとんどないことが分かっている。その費用は、 他の救援・治療活動に充てた方がよかった かもしれない。たとえば、水の浄化、緊急食料の供給、瓦礫の中で失われた薬の代替品の提供などである。

最も必要とされる保健医療対応とは何か?

では、ネパールの人々のニーズにより適切に応える保健医療対応とは何だろうか。最初の数日間、そして最初の1週間は、緊急の外傷治療が極めて重要である。地域から派遣され、十分な訓練と装備を受け、数日で活動を始められるチームなら、違いを生み出せる。

こうしたチームは、必要な切断手術や外科的修復を行う能力を備えている。ただし、国際チームの撤収後に現地では対応できない技術を、こうした外科チームが使用しないことが重要だ。現地の医療従事者と緊密に協力することが鍵となる。

負傷者のケアの多くは外科的処置を必要とせず、診療所や移動診療の場で提供できる。骨折、切り傷、表層のけがへの処置などが含まれる。外部支援がどの程度必要かは、国際チームがどれほど速く対応できるかではなく、地震前にその国や地域がどの程度備えていたかによる。

たとえば、私たちの研究によれば、 チリは十分な備えができていた ため、2010年に発生したコンセプシオンの巨大地震(マグニチュード8.8)の後、負傷者へのケアとプライマリーケアを提供できた。同国には耐震性のあるプライマリーケア診療所と病院が複数整備されていたからだ。ここから得られる教訓は、国際対応チームは支援に乗り出す前に、現地の医療施設のレジリエンスの状況を把握しておく必要があるということだ。

2015年4月27日、4月25日の地震を受け、ネパールのカトマンズ空港の出発ターミナルの外で待ちながら眠る人々。
Danish Siddiqui/ロイター

感染症のリスク

地震は、場合によって感染症の増加を直接的または間接的に引き起こすことがある。地震によって衛生設備が損傷または破壊されることがある。また、地域の環境や人々の暮らしを乱し、蚊などの病原体媒介生物と人間双方の行動に変化をもたらす傾向がある。

たとえば、1991年のリモン地震の後、コスタリカでは マラリアが増加した 。私たちは、これが いくつかの要因によるものだと突き止めた。人々は屋外で眠り、蚊にさらされる機会が増えたうえ、橋が再建されるまで、定期的な蚊・マラリア対策プログラムが遅れた。

ネパールでは、腸管の細菌性疾患や寄生虫疾患、マラリアが長年問題となっている。地震により、国内各地の建物が破壊または損傷した。強い余震のため、人々が屋内に戻るのをためらうのも無理はなく、その結果、 多くの人が屋外で眠っている。蚊帳、仮設避難所、安全な飲料水の提供を優先するため、国際的な支援を伴う公衆衛生の総合的な取り組みを行えば、こうした疾病の地震関連の増加を抑えるうえで大きな効果が期待できる。

今後も、ネパールやハイチのような地震被災地は生じるだろう。1980年代初頭、 Claude de Ville de Goyet博士 は、ある種の災害保健医療支援が続いているのは、「写真映えする」からのようだと指摘した。しかし私たちは、ニュースで見栄えのすることではなく、実際に効果のあることに焦点を移すべきだ。

次の国際的な地震対応を見据え、過去の経験から学んだことを考慮し、現地の受け入れ側と連携しながら、被災した人々のニーズを最も満たせる可能性の高い保健医療支援を提供しよう。

この記事は当初、 The Conversationに掲載された。 元の記事はこちら。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しない。

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著者:Richard Bissellは、メリーランド大学ボルティモア郡校の救急医療サービス教授。Thomas Kirsch博士は、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の難民・災害対応センター所長であり、ジョンズ・ホプキンス大学医学部救急医学科の准教授。

画像:サイクロン・パムにより学校図書館の屋根が吹き飛ばされた後、ポートビラで本を日なたに並べて乾かしている。ロイター/Edgar Su。

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