開発において文化はどのような役割を果たすのか?

開発において文化はどのような役割を果たすのか?
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さまざまな理由から、経済学者は文化という概念や、経済発展との関係に深く関与することを避けてきた。文化が人々を特定の道筋へ導く役割を担うことは一般に認められている。しかしLandes(1998)が指摘するように、特定の文化への暗黙の批判と受け取られかねないことへの不快感から、幅広い公の議論は抑えられてきた。

最近の 論文で論じたように、経済発展における文化の役割は、簡単に把握できるテーマではない。まず、定義の問題がある。定義が包括的になるほど、発展のパターンを説明するうえで役立ちにくくなる傾向がある。経済学者は文化を、「民族的、宗教的、社会的集団が世代から世代へと比較的不変のまま伝える、慣習的な信念や価値観」と狭く定義する傾向がある(Guiso、Sapienza、Zingales、2006年)。このアプローチは、時間を通じて一定している文化の側面に焦点を当て、因果関係を特定するという目的によって主に定められている。意外ではないが、このテーマについて最も洞察に富む文章のいくつかは人類学者によって書かれている。Murdock(1965) は、文化とは社会の成員に共有される習慣から成ると論じる。それは遺伝ではなく、学習の産物である。Woolcock(2014)は、社会学の研究が、文化を「人々が『行為の戦略』を組み立てるための習慣、技能、様式のレパートリー、すなわち『ツールキット』を形作るもの」と捉えるようになったことを示している(Swidler、1986年、p.273)。

第二の複雑さは、妥当な定義を用いたとしても、 文化的アイデンティティは固定されたものではないという事実に向き合わなければならないことだ。人類学者によれば、文化の変化はイノベーションの過程から始まり、そのなかでも文化の借用や伝播が圧倒的に一般的である。しかし、社会的な受容、選択的な排除、統合によって引き起こされることもある。

政策の観点からは、介入の可能性を開くため、変化しうる文化の側面のほうが関心を引く。世界銀行の 2015年『世界開発報告』 は、福祉の改善を促す文化的変化をもたらした介入の例をいくつか挙げている。その一例が、西ベンガル州における女性への政治的な積極的差別是正措置である。

しかし、経済発展を文化によって説明しようとする際には、ほかにも複雑な問題がある。

Huntington(2000)は、1960年代初頭のガーナと韓国は、一人当たり所得、生産構造、対外援助の点でおおむね比較可能だったと述べている。30年後、その対照はこれ以上ないほど鮮明になった。Huntingtonによれば、文化はその違いを説明するうえで大きな役割を果たした。「韓国人は倹約、投資、勤勉、教育、組織、規律を重んじた。ガーナ人は異なる価値観を持っていた。要するに、文化は重要である」。この説明の問題は、ガーナが韓国に追いつくにはどうすればよいかについて、ガーナと対話を始めるためのあまり有望な土台にならないことだ。当然ながら、国際金融機関や二国間援助機関は、文化的規範という枠組みで議論することを避けてきた。

提示の仕方に関する問題にとどまらず、「文化」は実際には、変化させやすい別の作用要因を覆い隠している可能性もある。ガーナの発展の停滞は、どれほど単に不適切な政策の結果なのだろうか。多くの発展途上国では、政治的不安定に伴うリスクのため、投資家は長期的な計画を立てようとしない。文化的特性に見えるものも、実際には経済的インセンティブによって形作られた行動であり、したがって根底にあるインセンティブを変えれば変化させられる可能性がある。たとえば、ソ連に労働倫理がなかったのは、根深い文化的特性を反映したものではなく、賃金格差が極めて小さく、昇進が業績と結びつかず、終身雇用がほぼ保証されていた環境に対する自然な反応だった。人々の職場での行動は、この特有の意欲をそぐ仕組みと完全に整合していた。

Sachs(2000)は、世界各地の発展に根本的な影響を及ぼし、文化という概念から切り離して考えられる要因をいくつか挙げている。たとえば天然資源へのアクセス、内陸国であること、貧しく不安定な近隣地域の一部であることなど、地理的な有利・不利を指摘している。Easterly(2006)は、国際国境が歴史的に恣意的に画定されたことがアフリカにもたらした重い負担を論じている。貧困は、純粋に文化的な要因よりも、地理や気候、天然資源の管理、そして民族の多様性と人為的な国境との有害な相互作用に、より深く関係している可能性がある。

グローバル化の結果、「人々は他の場所で成功している行動に、より多く触れるようになっている」(Porter、1990年、p.26)。生産性と経済成長を左右する主要因として、地理、気候、天然資源に代わり、知識、教育、新技術へのアクセスが徐々に台頭している。市民的権利と人権、男女平等、財産権の尊重、法の支配、資源配分の仕組みとしての市場原理の受容といった価値観に基づく、普遍的なグローバル文化が徐々に生まれつつある。

教育や知識・技能の習得が望ましい開発目標だと述べるとき、私たちは世界のさまざまな地域に当てはまり、現代のあらゆる文明に適用できる主張をしている。もちろん、社会によって、こうした価値観の一部を政策、伝統、制度に取り入れている方法や程度は異なる。たとえば男女平等が望ましいと認めることは、程度の差こそあれ、私たちすべての文化に深く根差したジェンダーに基づく不平等や不正義が突然消えるという意味ではない。しかし、ジェンダー格差が現代性にそぐわず、その存在が人類の進歩を妨げるという見解に異を唱える人は少ないだろう。開発とは、所得の上昇を背景に貧困を減らし、機会を広げることだけではない。人類の道徳的発展にかなう価値観を採用することも、根本的な意味で開発の一部である。

参考文献:
Landes, David. 1998. 『The Wealth and Poverty of Nations』, Little, Brown and Company.
Easterly, William, and William Russell Easterly. 『The white man’s burden: why the West’s efforts to aid the rest have done so much ill and so little good』. Penguin, 2006.
Sachs, J.(2000)「Notes on a new sociology of economic development」. 『Culture matters: How values shape human progress』, 29-43.
Guiso, Luigi, Paola Sapienza, and Luigi Zingales. 2006. 「Does Culture Affect Economic Outcomes?」, 『Journal of Economic Perspectives』20: 23-48.
Murdock, George Peter. 1965. 『Culture and Society』, University of Pittsburg Press.
Woolcock, Michael. 2014. 「Culture, Politics, and Development」. Policy Research Working Paper 6939. Washington: The World Bank.    Swidler,Ann. 1986. 「Culture in action: symbols and strategies」, 『American Sociological Review』51: 273-286.
Harrison, Lawrence E., Samuel P Huntington. 2000. 『Culture Matters』, Basic Books.

本記事は、 世界銀行の「Let’s talk Development Blog」との協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Augusto Lopez-Clarosは世界銀行のグローバル指標・分析部門ディレクター。Valeria Perottiは世界銀行の開発経済担当副総裁室の民間セクター開発スペシャリスト。

画像:2008年6月24日、アビジャン近郊のビンゲルビルで、キャッサバの根をすりつぶす準備をする人々。REUTERS/ Thierry Gouegnon。

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