パリで先月目撃されたような規模のテロは、アフリカでは目新しいものではない。ナイジェリア、カメルーン、チャド、ニジェールでは、2014年に276人の女子生徒を誘拐したことで知られる過激派組織ボコ・ハラムが、自爆攻撃や市民への襲撃によって数千人の犠牲者を出してきた。ケニアでは、ソマリアの組織アル=シャバブが、2013年のナイロビのウェストゲート・ショッピングモールへの攻撃と、2015年のガリッサ大学への攻撃という二つの大規模な攻撃のほか、多くの小規模なテロ行為を実行している。
一方チュニジアでは、イスラム国が観光客を標的にしており、博物館やビーチリゾートへの攻撃を組織した。そしてマリでは、パリでの攻撃の直後、アルカイダ系組織に属する武装勢力がバマコのラディソン・ブルー・ホテルを襲撃し、22人を殺害した。テロは、どうやらアフリカの新たな日常の一部となったようだ。
これらの攻撃やその他の攻撃は、大陸の待望の経済的台頭に暗い影を落としている。その理由は理解しやすい。テロは、アフリカの経済的・政治的発展を六つの重要な面で脱線させる危険がある。
まず第一に、人道的危機の規模そのものがある。2009年以降、ボコ・ハラムだけでもナイジェリアで1万人以上を殺害し、ほぼ50万人を自宅から追い出している。トラウマを負った住民は、カメルーン、チャド、ニジェールの難民キャンプに避難しており、特に子どもたちの間で栄養失調や病気が増加しつつある。
第二に、テロは影響を受けた国々のGDP成長を損ない、全体的な経済パフォーマンスを押し下げている。例えば北ナイジェリアの経済は、継続する暴力によって壊滅的な打撃を受けた。国際通貨基金(IMF)は現在、テロの脅威を ナイジェリア、 チュニジア、および ケニアの経済見通しに対する主要なリスクの一つとして挙げている。
すでにこれらの国々の経済指標は、テロ事件の後に下方修正されている。例えば、イスラム国による攻撃を受けて、チュニジアの2015年の予測GDP成長率は3%から1%に引き下げられた。観光部門は45%の減少が見込まれており、これは約11億ドルの収入減を意味する。この部門への打撃は、さらに広く投資家の信頼にも及び、チュニジア経済全体に波及して、生産、財政収入、外貨準備を押し下げるだろう。
第三に、テロとの闘いは乏しい財源を吸い上げている。軍事任務の拡大には費用がかかり、テロ攻撃の予測不可能性は、しばしば安全保障関連の追加支出を必要とする。それによって政府が財政目標を達成できなくなることもある。例えば、ガリッサ大学への攻撃の後、ケニア政府は安全保障関連支出をGDPの0.3%分増やし、観光部門への追加の財政支援も行った。
中部・西部アフリカでは、財政的圧力が特に強まっている。ボコ・ハラムと戦う軍の装備に必要な支出に加えて、ナイジェリア当局者は、北部の荒廃したインフラを再建するために数十億ドルが必要になると試算している。同様に、チャドの兵士はマリでテロリストと戦うフランス軍と共に戦い、現在はナイジェリアやカメルーンの部隊と連携してボコ・ハラムと戦っている。4月には、同国は1億7000万ドルの債務救済を認められた。これは長年の経済改革の成果である。しかし今や、同国は苦労して得た財政の余力の一部を、テロとの戦いの資金に充てることを余儀なくされている。
第四に、リスクにさらされている国々は、最も有望なフロンティア市場の一部である。最近アフリカ最大の経済規模となったナイジェリアでは、活気ある民間部門が、長らく石油生産に支配されてきた経済の多角化を進めている。同様に、活発なICT部門を抱えるケニアは、モバイルマネーの普及と活用で世界をリードしている。これらの経済が混乱すれば、アフリカ全体の成果を押し下げる恐れがある。
第五に、テロは国家建設を損なっている。ほとんどのアフリカ諸国では、軍は弱く、この新たな脅威に対処するための装備が不十分である。一方、テロ組織は資金が潤沢であることが多く、最新鋭の兵器を装備した献身的な戦闘員を展開している。このような対峙は、国家による暴力手段の独占を弱体化させ、国家の権力と正統性に挑戦するものである。
最後に、テロとの闘いが市民の自由に与えるリスクは、制度構築がなお進行中のアフリカで特に深刻である。非民主的な体制の中には、反テロ政策を利用して自国民を食い物にするものもあるかもしれない。また、イスラム過激主義への恐怖から、ムスリムが烙印を押され、社会の周縁に追いやられるようになれば、社会の結束も脅かされる。
アフリカの発展を何十年も妨げてきた内戦の大半は、ようやく終結した。しかしテロは、大陸が苦労して獲得した安定と力強いGDP成長を損なう危険がある。局所的な安全保障上の問題が、マクロ経済上の脅威へと拡大しつつある。アフリカが上昇の勢いを維持したいのであれば、この新たな危険に対処しなければならない。
掲載されている見解は、世界経済フォーラムによる支持を意味するものではありません。
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著者:コフィ・アッレ(Koffi Alle)は、国際通貨基金(IMF)のアフリカ担当専務理事の上級顧問であり、コートジボワール経済・財務大臣の元経済顧問。
写真:アブジャ(ナイジェリア)で、ボコ・ハラムに拉致されたチボク女子生徒219人の解放を求める「#BBOG(Bring back our girls)」擁護団体の呼びかけから1周年を記念するイベントを見守る学生たち。REUTERS/Afolabi Sotunde。


