ドイツが描く欧州のビジョンとは?

ドイツが描く欧州のビジョンとは?
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欧州連合(EU)閣僚理事会が入る巨大な建物から、シンクタンク「ドイツ国際安全保障問題研究所(Stiftung Wissenschaft und Politik、SWP)」のブリュッセル事務所までは、路面電車でわずかな距離だ。最近のある朝、両者はともに、欧州におけるドイツの政治的影響力が高まっていることを示す、同じほど示唆に富んだ例を提供していた。

SWPで議論されていたのは、再選された英国政府が計画するEU加盟をめぐる「残留か離脱か」の国民投票と、その実施までの期間への対処法だった。同じ頃、閣僚理事会ではドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相と、英国との関係の「再交渉」を主導することになる同国のジョージ・オズボーン財務相が会談していた。

欧州問題に関する政策決定におけるドイツの姿勢は、しばしばいささか二面性を帯び、強硬であったり、巧妙であったりする。ギリシャ債務危機に対する厳しく妥協のない姿勢は、外交・安全保障問題や、物議を醸した原子力エネルギーの放棄における、分かりにくいほど微妙で、さらには平和主義的な立場とは対照的だ。

閣僚理事会での最近のやり取りでは、ショイブレ氏がユーロ圏改革に関するオズボーン氏の見解を「ばかげている」と退けたと伝えられ、ドイツの鉄拳があらわになった。EU財務相による毎月恒例のこの会合を利用して、英国は大規模な条約改正をめぐる考えを捨てるべきだとオズボーン氏に示唆したとみられている。

ベルベットの手袋は、SWPの会合にも見て取れる。ドイツの知識人層による、説得力があり思慮深いEU問題への取り組みが会合を活気づけている。参加者は20人ほどで、その大半はドイツ人だが、作業言語は英語だ。SWPの英国政治専門家は、デービッド・キャメロン首相が取りそうな戦術を分析し、英国人の気質だけでなく、政治の細部にも精通していることを印象的に示す。

参加者はまた、英国の要求に応じる際、ドイツが不本意ながら何らかの指導的役割を担うことになるという「避けられない」運命にも触れる。長らくEUの大国の中で最も控えめで自己主張を抑えてきたドイツは、今なお表舞台に立つことに複雑な思いを抱いているようだ。

戦後初期、ドイツの発言力が抑えられていたのは当然のことだった。欧州の政策決定においてドイツが決定的な影響力を持つ兆しが初めて現れたのは1980年代半ばである。当時、ヘルムート・コール首相はフランスのフランソワ・ミッテラン大統領と手を携え、EUの経済・政治統合をそれまでで最も力強く推進した。仏独連携がもたらした成果には、欧州単一通貨ユーロが含まれる。1999年にユーロが誕生した後、ボンからベルリンへ移転していたドイツ政府は、再び欧州で目立たない立場に甘んじた。

その控えめで慎ましい役割は、今や完全に過去のものとなった。ただし、ドイツの力にはまだ想像力が伴っていない。欧州統合の創設者であるジャン・モネやロベール・シューマンのようなフランス人が示した知的リーダーシップは、記憶の中で薄れつつある。ドイツはEUの見通しと人気を回復させるため、同等に力強い戦略をまだ打ち出せていないからだ。28加盟国の中で疑いなく最も強く、最も頼りになる国であるドイツには、苦境にある欧州がどこへ向かうべきかというビジョンが欠けている。

ドイツの国力の高まりは、EUの官僚機構や欧州機関の内部で、ドイツ国民が現在担っている役職から測ることができる。ドイツ人の官僚や欧州議会の選出議員は、ブリュッセルの権力を動かす多くの手段を握っている。その中には、現在 マルティン・シュルツ氏が務める欧州議会議長職も含まれる。

欧州委員会のルクセンブルク人委員長、ジャン=クロード・ユンケル氏の首席補佐官という要職にはドイツ人が就いている。ポルトガルのジョゼ・マヌエル・バローゾ氏がEUの執行機関を率いていた時の前任者もドイツ人だった。EUの公務員を構成する「ユーロクラット」の文化では、公平無私な中立性が重視されるが、国籍がまったく影響しないと考えるのは甘いだろう。

首席補佐官とそのスタッフは、政治情勢を敏感に察知するアンテナであり、情報のフィルターでもある。そのため、こうした役職に就くドイツ国民の数は、ブリュッセルの関係者の間で大きな注目を集め、さまざまな憶測を呼んでいる。同様に注目されているのは、年央までドイツ人が欧州議会と閣僚理事会の両方で、事務総長という極めて強力な職を担うという事実だ。

ウーヴェ・コルセピウス氏は7月1日、閣僚理事会での職をデンマークの上級外交官に引き継ぎ、その後、ドイツのアンゲラ・メルケル首相のEU問題担当顧問として新たな職に就く。ブリュッセル在任中、政府間の議題設定に相当な影響力を及ぼしたと広く見られている。一方、欧州議会での対応する役職に就くクラウス・ヴェレ氏は、職を退く兆しも、議会の権限をさらに強化するという野心を弱める兆しも見せていない。

しかし、EU機関の要職に就く人物の数を数えても、ドイツの台頭の全貌は分からない。その真の姿と規模は、市民社会の各層に見いだされる。シンクタンクやNGOからメディア、企業のロビー活動に至るまで、ドイツ人はEUを動かす最も有力な担い手となった。英国で国民投票が行われる可能性を前に、ドイツに求められているのは、効果的なリーダーシップに必要なビジョンと創造性を欧州に示すとともに、パートナー国を遠ざけない外交手腕を発揮することだ。

この記事は プロジェクト・シンジケートとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:ジャイルズ・メリット氏は、 『Europe’s World』 の編集者であり、ブリュッセルを拠点とするシンクタンク Friends of Europeの代表を務める。

画像:ドイツの国旗が国会議事堂の屋上に掲げられている。ロイター/ファブリツィオ・ベンシュ。

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