2017年、米国では大規模な税制改革が最優先課題の一つとなっている。共和党が多数を占める下院は、法人所得と個人所得への課税方法を抜本的に見直す詳細な計画を、何年もかけて準備してきた。上院でも共和党が多数を占め、大統領も共和党員となった今、これらの計画を立法措置の基礎とすることができる。
提案されている法人税改革は、特に重要である。企業投資に非常に好ましい影響を与え、生産性と経済全体の成長を高めると私は考える。新たな税制は、海外経済にも大きな影響を及ぼすだろう。
提案されている変更が実現する保証はないものの、税制改革案の大枠は明らかになりつつある。主な柱は4つだ。
法人利益への税率引き下げ。現行の35%という税率は、すべての先進工業国の中で最も高い。下院共和党とトランプ政権はいずれも税率を半分にすることを提案しており、これにより、不動産、法人化されていない事業、海外資産から企業投資へと資本が移ることになる。
法人税収は現在、GDPの2%に相当する。提案されている税率引き下げにより、税収はGDPの約1%、現在の経済規模で年間1,900億ドル減ることになる。投資の増加は成長を促し、税収減を縮小するだろう。しかし、税収中立の税制改革を支持する議会共和党にとっても、なお課題は残る。
米国企業の海外子会社に対する領土主義課税制度。米国は先進工業国の中で唯一、企業の海外子会社が得た利益を本国に還流する際、国内税率を全額適用する(外国政府に納めた税額は控除する)。したがって、アイルランドで利益を上げる米国企業は、アイルランド政府に12%の税を納めたうえで、利益を本国に還流する際にはさらに23%を納めることになる。当然ながら、米国企業は利益を海外に留めることを選んでいる。
領土主義課税制度を導入すれば、米国内の投資が増え、生産性と成長が促進される。提案では、米国企業が将来、海外で得る利益を追加課税なしで本国に還流できるようにする。これまで海外に蓄積された2.1兆ドルの利益には、約10%の一度限りの税が課され、数年にわたって納付される。
キャッシュフロー法人税。これは2つの変更を意味する。設備や構築物への投資を、費用を長期にわたって計上するのではなく、全額を直ちに損金算入できるようにすること。そして、新たに生じた債務の利息費用の控除を廃止することだ。これにより、高い負債比率がもたらすリスクが軽減され、負債と株主資本が同等に扱われる。
議会が実務上の詳細を検討すれば、実際にこの改革を成立させるとは思えない。どの時点で新規融資とみなされ、既存の信用枠の継続とみなされるのか。設備購入資金を借り入れていた企業が、その設備をリースするように切り替えた場合はどうなるのか。
国境税調整。ほとんどの国と異なり、米国には付加価値税がない。国境税調整によって、国内取引に課税することなく、付加価値税がもたらす国際的な優位性を米国に与えることができる。
仕組みはこうだ。輸入品の費用は、課税対象利益の算定にあたって損金算入できない。法人税率が20%なら、これは20%の輸入税に相当する。輸出企業は輸出収益を課税所得から除外でき、これは20%の輸出補助金に相当する。
輸入が減り、輸出が増えるように見えるが、そうはならない。経済学を学ぶ学生なら誰もが知るように、貿易収支は国内貯蓄と国内投資の差によって決まる。国境税調整は貯蓄にも投資にも影響しないため、輸入と輸出も変化しない。むしろ、輸入税と輸出税の変更によってドルの価値が上昇し、国境税の変更がもたらす直接的な影響を相殺する。
より具体的には、国境税調整が導入されれば、ドルは他の通貨に対して25%上昇する。ドルが25%上昇すると、輸入コストは20%下がる(20%の税による輸入価格の上昇をちょうど相殺する)。一方で、海外の購入者にとって米国の輸出品の価格は上がり、暗黙の20%の補助金をちょうど相殺する。
しかし、国境税調整が米国の貿易収支を改善しないのなら、なぜ議会共和党は成立を急ぐのか。本当の理由は、米国の消費者や生産者の負担を増やさずに、税収を大幅に増やせることだ。現在、米国の輸入と輸出はそれぞれGDPの15%と12%を占める。GDPの3%に相当する差を踏まえると、20%の輸入税と20%の輸出補助金による純増収はGDPの0.6%、現在の額で年間1,200億ドルとなる。
したがって、国境税調整によって法人税減税の1,900億ドルの費用の約3分の2を賄うことができる。法人税率引き下げが成長にもたらす好影響を考慮すれば、賄える割合はさらに大きくなる。また、米国の消費者が支払う価格も、米国の輸出企業が受け取る価格も変わらないため、この税負担を負うのは海外の生産者だ。ドル高により、海外の生産者が米国向け輸出で自国通貨で受け取る金額は減る。
ドル高が暗黙の輸入税を相殺するほど進むとは確信できない米国の輸入業者を中心に、国境税調整への反対は根強い。しかし、米国の消費者や生産者に損害を与えずに年間1,000億ドルを超える税収を得られる見込みがあるため、議会は包括的な計画の一環として、この措置を進めるだろう。
今年の法案は、米国の税制にとって30年ぶりの大規模改革となる。成立すれば、米国企業にとってより有利で競争力の高い税制の枠組みが実現する。



