インドネシア統計庁(Badan Pusat Statistik、BPS)は2月5日、四半期国民経済計算統計を公表した。四半期データの公表にはいつも大きな関心が集まる(少なくとも、短期的な成長動向の最新情報を待ち望むマクロ経済学者や経済ウォッチャーの間では)。しかし今回は特に重要な公表である。2014年第4四半期のデータを提供するだけでなく、インドネシアのGDP統計に二つの大幅な改定を盛り込んでいるからだ。(1)算定基準年を2000年から2010年に変更し、(2)統計の方法論と表示を大幅に更新した(インドネシアの国民経済計算を1993年国民経済計算体系[SNA]から2008年SNAへ更新)。[1]
これらの改定は、これまで知られていなかったインドネシア経済について何を示しているのだろうか。まず目を引く変化は、2014年の名目価格による総生産額が従来の推計より約4.4%大きく(2010~2014年の平均では5.2%大きく)なったことだ。これは大幅な変更で、2014年時点の経済規模の推計に448兆ルピア、現在の市場為替レートで約355億米ドルが加わる。BPSによると、追加計測された生産額のおよそ3分の1は、2008年SNAの下で新たな種類の経済活動を取り入れたことによるもので、約3分の2は、従来から計測されていた生産の種類をより正確に測定したことによる。
生産額の測定精度向上によってGDPの 水準 は高くなる一方、2011年以降の経済の 成長率 は低く測定される。低下幅は2011年に顕著な0.3ポイント、2012年と2013年に約0.2ポイント、2014年にはわずか0.04ポイントだ。
要するに、インドネシア経済は従来考えられていたよりかなり大きく、成長はほんの少し遅いようだ(表1)。

こうした変更が特に注目されるのは、年間経済生産額が、他の多くの経済変数を測るための不可欠な基準だからだ。改定後のGDPを分母とする比率はすべて縮小する。以下に、改定の影響を示す重要な例を挙げる。財政データについては、2014年第4四半期のGDPが新たに利用可能になった影響も示している。
インドネシアの経常赤字(すなわち、貯蓄を上回る投資支出):2014年第1~第3四半期の累計で200億米ドルに達し、同期間の累計GDPの3.1%に相当していたが、改定後はGDPの2.9%と小さくなった。
インドネシアの対外債務残高:2014年11月時点で2,944億米ドル(インドネシア銀行の定義による)に達し、2014年GDPの34.7%に相当していたが、改定後は33.2%と小さくなった。
インドネシアの財政赤字は、2014年に227.4兆ルピア(未監査)で、GDPの2.3%だったが、改定後は2.2%と縮小した。
インドネシアの税収は、2014年に1,143兆ルピアで、GDPの11.4%に相当していたが、改定後は10.8%と低下した。
上記の例が示すように、インドネシアのGDP比率の変化は、経済状況やリスクを再考させるほど大きくない。これは理にかなっている。最新の推計では近年の年間経済生産額は幾分大きくなったものの、劇的な増加ではなく、他に変わったものはないからだ。結局、インドネシアは2014年第3四半期までに200億米ドル相当の経常収支の純流出を記録し、以前と同じ財政赤字を賄わなければならなかった。また政府は、税収対GDP比が従来より低い水準からの出発となったとはいえ、より多くの歳入を確保するという、広く認識された同じ課題に直面している。[2] 対照的に、他の経済圏で最近行われた歴史的・方法論的な改定の中には、はるかに大きな差をもたらしたものもある。例えば2014年4月、ナイジェリアのGDP改定によって経済規模の推計はおよそ倍増し、アフリカ最大の経済として南アフリカを追い越した。
「トップライン」のGDP、ひいてはいくつかの主要比率の変更にとどまらず、改定値は、規模が大きく急速に変化するインドネシア経済を捉える統計を継続的に改善するうえで重要な一歩でもある。新たな方法論により、より詳細な部門別データが利用可能になり、生産面と支出面のGDPの間にあった歴史的に大きな乖離も縮小する。経済学者や政策立案者は、GDP予測への影響を含め、こうした新しいデータとそこから導かれる追加的な示唆を、今後しばらく検討し続けるだろう。
その間、インドネシアのGDP改定は有益な教訓を与えてくれる。経済統計は複雑であり、方法論の継続的な改善と改定の対象となる。GDP統計は、経済を追跡し、主要な経済ストックとフローの基準とするための重要な「スナップショット」を提供する。しかし経済はあまりにも大きく、複雑で、動的であるため、こうしたスナップショットには必然的にぼやけや欠落がある。[3] 金融市場やメディアが各公表にどう反応するか、あるいはインドネシアの予測を含め、比較的小さな調整や予測の差にどう反応するかを見れば、常にそうとは思えないだろう(その後の大幅な改定はしばしば見過ごされるのに)。経済ウォッチャーは、主要なデータが時とともに改善していく一方で避けられない限界について、より深く理解し、認め、関係者に伝えることができるだろうか。
[1] 国民経済計算体系の一般的な技術概要については、次を参照。http://unstats.un.org/unsd/nationalaccount/sna.asp。 [2] 最近の概要については、世界銀行『インドネシア経済四半期報告』2014年12月版を参照(http://www.worldbank.org/en/news/feature/2014/12/08/indonesia-economic-quarterly-december-2014)。 [3] GDPについて読みやすく有益な解説として、Diane Coyle著『GDP: A Brief but Affectionate History』を参照(http://press.princeton.edu/titles/10183.html)。
本稿は当初、世界銀行の East Asia & Pacific on the Rise ブログに掲載されたものです。掲載は、世界経済フォーラムによる見解への賛同を意味しません。
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著者:Alex Sienaertは、世界銀行でインドネシアのマクロ経済モニタリングと分析を担当している。
画像:ジャカルタのビジネス地区を上空から望む。REUTERS/Beawiharta


