米中間選挙で経済はどのような役割を果たすのか

An immigrant signs up to vote in the upcoming midterm elections after participating in a naturalization ceremony to become a new U.S. citizen in Los Angeles, California, U.S. March 20, 2018. REUTERS/Lucy Nicholson
Electoral models predict that a strong economy favours the party in power.Image: REUTERS/Lucy Nicholson
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米国経済は成長し、インフレ率はついに米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%に達した。失業率もかなり低く、さらに、アフリカ系米国人とヒスパニック系米国人では、 過去最低となっている。記憶にある限り初めて、米企業が公表する求人件数が失業者数を上回った。こうした状況は通常、実質賃金(インフレ調整後)の上昇を予兆する。これは、危機後の力強さに欠ける景気回復のなかで取り残された人も多い米国の労働者が、好調な経済の恩恵をようやく受けられる可能性を示している。

選挙予測モデルは、経済が好調なら政権与党が有利になり、低迷すれば大敗を喫すると予測する。それにもかかわらず、経済が10年以上ぶりの好調さを見せるなか、今年11月の2018年中間選挙を前に、世論調査の多くは民主党が大きくリードしていることを示している。さらに、政治評論家の大半は、民主党が下院の主導権を取り戻すと予測する。共和党よりはるかに多くの議席を守らなければならないにもかかわらず、民主党が上院も奪還する「青い波」を予想する人さえいる。最近の複数の補欠選挙では、共和党は同じ選挙区で過去に行われた選挙よりもはるかに小さな差で議席を守った。

この異例の状況には、もっともらしい説明がいくつかある。まず、2016年の選挙で多くがそうだったように、世論調査の担当者や評論家の見立てが単に間違っている可能性がある。同時に、ドナルド・トランプ大統領は、自身を批判する人々――人気バスケットボール選手のレブロン・ジェームズを含む――に個人攻撃を仕掛けることで、とりわけ郊外の女性の間で、自身と党の選挙の見通しを損ねている可能性がある。また、経済運営への 高い評価にもかかわらず、多くの有権者が経済の好調をトランプの政策のおかげだとは考えていない可能性もある。

もう一つの可能性は、選挙における「経済効果」がもはや当てはまらないことだ。経済的な苦境は政権与党に打撃を与えるかもしれないが、経済の好調は以前ほど与党の助けにならない可能性がある。有権者が豊かになるにつれ、ほかの問題に目を向ける余裕を持つ人が増えている。

Image: 米国経済分析局

今年初めに行われたニューヨーク州第14選挙区の民主党予備選で、民主社会主義者のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスは、 圧勝した。相手は現職下院議員のジョセフ・クローリーで、下院民主党内で序列4位の人物だった。明らかに自信過剰だったクローリーは、選挙運動らしい活動さえほとんどしなかった。その後、オカシオ=コルテスはメディアの寵児となり、自ら社会主義者を名乗り、2016年の民主党大統領候補指名争いで惜敗したバーモント州選出の上院議員バーニー・サンダースと並んで登場している。民主党内では急進左派が勢いを増しているものの、党は11月に勝つ現実的な見込みのある候補者を選ぶことにも力を入れてきた。

一方、共和党の予備選では、トランプの支持を受けた候補や、トランプに近い候補が勝つ傾向にある。しかし現時点で、共和党支持者の熱意は民主党支持者ほど強くなく、11月の支持者の投票率に影響する可能性がある。

中間選挙はほぼ常に、大統領とその政策への信任投票となる。2010年と2014年の中間選挙では、共和党が大幅な多数を獲得したことは、バラク・オバマ大統領への拒絶と受け止められた。これを踏まえ、民主党は中間選挙をトランプへの信任投票と位置づけている。同時に共和党は、中間選挙の焦点をナンシー・ペロシにしようとしてきた。サンフランシスコ選出のリベラル派である下院少数党院内総務のペロシは、民主党が下院の過半数を得れば、議長に復帰する可能性が高い。問題は、次期議長候補は現職大統領より攻撃の的にしにくく、ましてやメディアでトランプほど説得力を発揮する人物ではないことだ。

今のところ、選挙で経済が果たしうる役割に注目が集まっている。しかし、投票日を過ぎれば、選挙結果は経済政策に、ひいては経済見通しに影響を及ぼす。共和党が上下両院の主導権を維持すれば、これまでに実施された 成長促進型の税制・規制改革は維持され、おそらく拡充されるだろう。同様に、上院を維持すれば、保守派の連邦判事の承認が続くだろう。

これに対し、下院で民主党が多数派となれば、トランプの法案提出を阻むのは確実だろう。上院でも民主党が多数派となれば(その可能性は低いが)、保守派の判事候補の承認を阻止するだろう。分割政府は政策面で妥協を生み、好調な経済を維持することもあるが、民主党が上下両院の一方または両方を奪還した場合にそうなるとは考えにくい。

実際、穏健派とみなされていた民主党議員でさえ、社会主義を掲げる候補の挑戦を退けるため、さらに左寄りになっている。また、政府支出の大幅拡大と増税を掲げる方針に、より多くの民主党議員がまとまりつつある(ただし、増税についてはまだあまり語っていない)。

広く出回ったギャラップの世論調査は最近、資本主義より社会主義を支持する民主党員の割合のほうが高いと明らかにした。そのため、左傾化する民主党員の大半は、政府が提供する国民皆保険(「すべての人にメディケアを」)、大学授業料の無償化、連邦政府による雇用保障、またはベーシックインカムを提案している。

もちろん、その政策を実現するには、民主党の大統領と上下両院の過半数が必要になる。それでも、費用は数十兆ドルに上る。財源を確保するには、欧州型の大規模な付加価値税(VAT)か、所得税と給与税の大幅な引き上げが必要となり、欧州型の経済停滞を招く可能性が高い。

一方、共和党は、従来型の自由市場・自由貿易を掲げる保守派と、米国の貿易相手国から譲歩を引き出すために移民と貿易を制限したい、トランプ流の「経済ナショナリスト」に分かれている。

そのため、11月の選挙後、好調な米国経済は、激化する貿易戦争や増税の懸念によって脅かされる可能性がある。中国や欧州などで成長が鈍化するなか、世界経済は米国がこうした危険な政策上の誤りを避けることを必要としている。

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