毎年1月、私は別の世界をのぞき見る機会を得ます。スイスの山岳リゾート地ダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会に、億万長者や政財界のエリートたちが集まる世界です。
物珍しそうな友人たちからは、億万長者に会ったことがあるか、どんな人たちなのかとよく尋ねられます。私はいつも、彼らは運に恵まれて生まれてきたのだと答えています。男性として生まれたという点で幸運です。億万長者の9人に10人は男性です。裕福な家庭に生まれたという点でも幸運です。億万長者の資産の3分の1は相続によるものです。そして、2億6,200万人の子どもたちが学校に通えていない世界において、まともな教育を受けられるという点でも幸運なのです。
オックスファムにとって、ダボスは極端な不平等という危機を検証する機会となります。
当機関の不平等に関する報告書は、ここ数年間における少数の幸運な人々の資産の急増を追跡してきました。最新の報告書「私的な富か、公共財か(Private Wealth or Public Goods)」では、昨年、世界の億万長者の資産が12%、1日あたり25億ドル増加したことが示されています。2017年から2018年の間には、2日に1人の割合で新たな億万長者が誕生しました。
一方で、世界で最も貧しい半数の人々、38億人の資産は11%減少しました。世界人口の半分弱は、1日5.50ドル未満で生活しています。学費や医療費の支払いが1回滞るだけで、極度の貧困に陥りかねない状況です。
女性の労働は経済の基盤であるにもかかわらず、女性はその恩恵を受けていません。世界的に見ると、男性は女性より23%多く稼ぎ、50%多くの資産を保有しています。
このような貧富の格差の極端な拡大と深刻化は、偶然の産物ではありません。それは政府による政策決定の結果です。とりわけ重要なのは、政府が税金をどのように徴収し、どのように支出するかという決定です。
多くの富裕国では富裕税が削減または廃止されており、貧困国ではほとんど導入されていないことを考えてみてください。2015年に世界全体で徴収された税収のうち、相続税や固定資産税などの富に対する課税から得られたのは、1ドルあたわずか4セントでした。
富裕層や企業に対する税率が大幅に引き下げられていることを考えてみてください。億万長者は、その秘書よりも低い税率で納税しています。ブラジルなど一部の国では、社会の最貧層10%が、最富裕層10%よりも所得に占める税負担の割合が高くなっています。
政府は、税金逃れを取り締まることを怠ることで、事態をさらに悪化させています。その結果、富裕な企業や個人は、未払いの税金で数十億ドルもの利益を懐に入れています。貧困国は、富裕な個人や企業による税金逃れにより、年間約1,700億ドルを失っています。
同時に、政府は医療や教育といった、貧困削減に不可欠な公共サービスを、資金不足のために衰退するままにしています。あるいは、最貧層を排除する民間企業にこれらのサービスを委託しています。これらのサービスは、人々が貧困から抜け出すための土台となるものですが、一般市民からそれが奪われつつあります。
こうした政策決定の結果は、医療を受けられないために毎日命を落とす1万人を含め、世界中の何百万人もの人々の生活に深く刻み込まれています。
いつの時代も、最も深刻な打撃を受けているのは女性と少女たちです。私の故郷であるウガンダの村で知っている少女たちを思い浮かべます。お金がなく学費を払えないために退学させられる少女たちや、公共サービスが機能しないときに、子どもや病人、高齢者の世話をして、その穴を埋めるために数えきれないほどの時間を費やしている女性たちです。
人類はこの状況を受け入れられませんし、受け入れる必要もありません。この危機は政府の政策によって生み出されたものです。政府は、企業や富裕な個人が公正な税金を納めるようにし、その資金を万人に無料で質の高い医療と教育を提供するために投資することで、この危機を解決できるのです。
これが可能であることはわかっています。2017年9月にガーナ政府が高等学校の学費を撤廃したところ、9万人の生徒が新たに学校の門をくぐりました。
また、わずかな変化が大きな効果をもたらすこともわかっています。オックスファムの試算によると、最富裕層1%の資産に対する税率をわずか0.5%引き上げるだけで、現在就学できていないすべての子どもたちに教育を提供するための費用を上回る税収が得られ、330万人の命を救う医療を提供することもできます。
これらの考えは極端なものではなく、常識です。国際通貨基金(IMF)でさえ富裕税を後押ししており、所得税率を高めることは、経済成長を損なうことなく不平等の是正に役立つと述べています。学校に通うことや、病気のときに医師の診察を受けることが、一部の幸運な少数者だけの特権であってはならないと知っている世界中の人々の声に、彼らも耳を傾け始めています。
これらは、すべての人々の基本的人権であり、安定した社会と強い経済の基盤です。それこそが、今週ダボスで私が伝えるメッセージです。
オックスファム・インターナショナルの事務局長であるウィニー・ビャニイマは、2019年1月にスイスのダボスで開催される世界経済フォーラムに出席する予定です。



