つながりが深まる現代社会において、オープンイノベーションは研究コストの削減、リスクの分散、イノベーションの迅速な市場投入を可能にする。バークレー大学のヘンリー・チェスブロウ教授が生み出した「オープンイノベーション」という言葉は、革新的な製品やサービスを生み出すために企業、個人、公共機関が協力し、その過程でリスクと利益を分かち合うことを指す。この考え方の前提にあるのは、知識が分散する世界では、企業は社内の研究だけに頼ることはできず、パートナーと共にイノベーションに取り組むことで大きな恩恵を得られるという信念だ。このアプローチは、医療、ITのビジネスモデル、公共政策など、多くの分野で大きな成果をもたらしている。
たとえば「Open access malaria box」プロジェクトでは、Medicine Malaria Ventureが抗マラリア特性を持つ400種類の化合物を無料で公開し、誰もが利用できるようにしている。新薬の設計や新たな特性の特定にこれらの化合物を利用する人は、その成果を共有し、新たに開発した化合物があればコミュニティが利用できるようにすることが条件だ。現在、約30カ国で利用されているこのボックスは、新たな抗マラリア薬のほか、皮膚潰瘍や睡眠病の治療薬の開発にも役立っている。
IT・ソフトウェア業界では、オープンイノベーションによって、企業が互いのソフトウェアをライセンスし、新しい種類の製品を開発できるようになった。これにより、ライセンスを受ける企業とそのエンドユーザーは、インフラ開発にかかる多額のコストを削減できる。AndroidとAppleのプラットフォームは、このモデルの非常に成功した例であり、その上に構築された革新的なサービスを数多く生み出してきた。CiscoのCommon Big Data Platformは、ビッグデータ・アプリケーションの構築に特化した新しいタイプのプラットフォームの一例だ。開発者は、一連のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じてCiscoのデータ分析エンジンと大規模並列処理機能を利用し、そのインフラ上にサービスを構築できる。
政府もオープンイノベーションの考え方を取り入れている。英国では、非営利団体Open Data Institute(ODI)が2012年、企業によるオープンな公共データを活用したイノベーションを促すため、政府から1,000万ポンドを確保した。国の国民保健サービス(NHS)が提供する公開処方データを分析した結果、ODIのインキュベーションを受けたスタートアップ、Mastodon Cは、医師がより安価で同等に有効なジェネリック医薬品を使わず、特許医薬品の処方に月2,700万ポンドを費やしていることを示した。この問題に対処すれば、年間2億ポンドを節約できる可能性がある。
AppleとSamsungの特許侵害をめぐる争いが示すように、オープンイノベーションは厄介な意見の対立を招くこともある。これまでのところ、その利点は欠点を上回っているようだ。
この記事は、 GE Look Aheadとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Elie ChachouaはGE Look Aheadに寄稿している。
画像:高齢者や障害者の日常生活を支援するために設計されたロボット「Twendy-One」が、2009年1月8日、東京の早稲田大学でトーストを提供する様子を実演している。REUTERS/Issei Kato。


