貧困解決に向けて、なぜお金の先まで考える必要があるのか

A train passes through the Kibera slum of Kenya's capital Nairobi February 26, 2015. REUTERS/Darrin Zammit Lupi (KENYA - Tags: SOCIETY CITYSCAPE TRANSPORT) - RTR4RC5F
The poverty trap is a concept widely used to describe situations in which poverty persists.Image: REUTERS/Darrin Zammit Lupi
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OECDによると、開発援助額は最近、年間1,426億米ドルという過去最高額に達しました。

しかし、貧困緩和を目的とする国際援助は、自然と文化の双方に望ましくない、しばしば意図しない影響を及ぼすことがあります。環境や文化的価値を損なわずに貧困を緩和するにはどうすればよいのか。これは依然として世界的な大きな課題です。

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思考の枠にとらわれて

学術誌Science Advancesに掲載された新たな総説論文で、私たちは開発援助の根幹をなす考え方、すなわち「貧困の罠」と、その解決策としての「ビッグ・プッシュ」に疑問を投げかけています。

貧困の罠とは、一定の資産水準を下回ると、自己維持のメカニズムによって貧困が続く状況を説明するために広く使われる概念です。言い換えれば、貧困の悪循環です。貧しい人々は貯蓄を蓄えられなかったり、働くための十分なエネルギーがなかったりするため、ますます貧しくなります。

この用語は、2005年にジェフリー・サックスとポール・コリアーの両者が、経済的な豊かさが低水準にとどまる世帯や国を表すために用い、国連のミレニアム開発目標の中心的な概念となりました。

開発経済学の初期の理論の一つである「ビッグ・プッシュ」は、よく知られた限界があるにもかかわらず、今も広く支持されている、画一的な貧困緩和アプローチです。これは、地域社会や世帯のレベルで貧困を緩和することを目指します。この理論の基本的な考え方は、貧困の罠で定義される臨界点を越えて経済を成長軌道に乗せるには、投資を大規模かつ協調的に一気に行う必要がある、というものです。

ご覧のとおり、この二つの概念は密接に結びついています。

しかし、問題があります。貧困の罠は、貧困が続く状況を捉える代表的な枠組みですが、貧困を厳密に経済面からのみ捉える考え方は、これまで自然と文化の役割を無視してきました。

世界で最も貧しい人々の78%が農村部に暮らしていることから、開発援助はしばしば、農業における金融面・技術面の解決策に向けられます。開発機関は農家に、インドの遺伝子組み換え綿花のような単一の換金作物、すなわち単一栽培作物を育て、販売して貧困から抜け出すよう促します。

この戦略の成果は一様ではなく、場合によっては、貧困を深刻化させる重大な生態学的・社会的影響をもたらすことがあります。

貧困緩和策のモデル化

私たちの論文では、貧困の罠をめぐる考え方を拡張し、経済的な豊かさ、自然、文化の結びつきをより十分に取り入れる方法を示しています。

私たちの新たなアプローチは、貧困を緩和する解決策を三つの種類に分類します。

一つ目は、いわゆる標準的な「ビッグ・プッシュ」です。国々を「障壁の向こう側」へ押し上げ、経済をより良く機能させることを目指します。二つ目は障壁を下げることです。農家の研修から行動や慣行の変更まで、さまざまな方法が含まれます。

この二つの分類が、現在の援助戦略の柱となっています。

これに対して私たちは、従来の介入戦略を見直すことを目的に、「システムの変革」と呼ぶ第三の分類を導入します。

世帯や地域社会のレベルにおける貧困と環境のさまざまな関係を表す理論上の多次元モデルを用いて、これらの貧困緩和策の有効性を検証しました。

たとえば、広く知られ、実証的な裏付けもある説明では、貧しい人々が環境を劣化させるとされています。しかし、あまり知られていない実証的な証拠は、貧しい人々が環境を不均衡に劣化させているわけではないことを示しています。彼らは自然の管理者であることも多く、たとえば農業生物多様性のような特徴を生み出し、維持しています。

例として、タジキスタンとアフガニスタンにまたがるパミール山脈を挙げましょう。この地域は、生物学的・文化的(いわゆる生物文化的)多様性に富んでいます。こうした環境では、人々は金銭面では貧しくても、豊かな生態学的知識や文化的慣行を生かし、驚くほど多様な農作物を大切にしています。

さらに、伝統的な種子の多様性は、地域レベルで人々がショックに対する強靱性を高める助けにもなります。

こうした場所では、改良種子や肥料を使って食料生産を増やすという従来型の「障壁の向こう側」への押し上げ策が、生物多様性や伝統知識の喪失につながるおそれがあります。

私たちのモデルは、変革戦略、すなわち内発的な取り組みによって現状を変える戦略が、状況によっては自然や文化に深刻な影響を及ぼさずに貧困を緩和できることを示しています。この可能性は、アグロエコロジーや食料主権など、現在は十分に取り上げられていない開発の考え方に道を開きます。

変革的な変化

モデルの結果は、自然や文化を考慮しない従来型の開発介入が貧困を深刻化させる可能性を示しています。そうした状況では変革的な変化が必要となる一方、別の状況では資産の投入が有効な場合もあります。

これらの結果を「貧困キューブ」にまとめました。このキューブは、貧困の多次元性、さまざまな介入経路、多様な状況をどのように統合したかを示しています。

Image: The Conversation

私たちの貧困の罠へのアプローチは、開発分野に携わる人々が、多様な開発の道筋がもたらす影響を検討するうえで役立つ可能性があります。多次元的な貧困キューブを提示する以前は、貧困の罠のモデルは通常、貧しさの金銭的側面だけを考慮していました。

今では、開発の担い手は、さまざまな貧困緩和策が経済的な豊かさだけでなく、自然や文化に及ぼす影響と、それらがどのように相互作用するかも、より容易に思い描けます。私たちが開発した枠組みは、さまざまな分野における介入策と、自然や文化への影響を分類するのに役立つ可能性があります。

学際的な取り組み

この論文は、理論物理学者、サステナビリティ科学者、経済学者が数年にわたって協力して生まれました。非常に学際的な研究アプローチが用いられました。

貧困緩和において生物物理的・文化的な環境が重要であることは、以前から理解されてきました。しかし、こうした要因を通常は考慮しない貧困の罠という概念に基づいて、介入策の設計が今も続いています。

私たちの貧困キューブは、援助機関が貧困、環境、文化をより適切に統合し、構想や開発計画に反映する助けとなる可能性があります。これらの要因を統合することは、持続可能な開発目標にとって大きな課題となるでしょう。

次に必要なのは、この種の動的な多次元モデリングを、地域社会を対象とする場所に根ざした研究でどのように活用できるか、理解を深めることです。

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