金利が恒久的に低いままであることを懸念すべきか?

金利が恒久的に低いままであることを懸念すべきか?
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ここ数カ月、欧州の一部で奇妙な現象が広がった。欧州中央銀行が今後の量的緩和プログラムの一環として国債を購入する準備を進めるなか、政府発行債の利回りが マイナス に転じたのだ。この短期的な現象は、金利の長期的な動向について疑問を投げかける。ユーロ圏だけでなく米国でも金利が極端に低いのは、「長期停滞」と呼ばれる長期的傾向の結果なのだろうか。それとも、こうしたマイナスの債券利回りは、特に深刻な景気循環の結果にすぎないのだろうか。

ある新たな論文は、金利が恒久的に低下するとの懸念は誇張されていると論じている。著者は、カリフォルニア大学サンディエゴ校のJames D. Hamilton、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのEthan S. Harris、ゴールドマン・サックスのJan Hatzius、ウィスコンシン大学のKenneth D. Westで、 特に批判の矛先を向ける のは、自然利子率、すなわち経済が均衡状態にあるときの金利を決める主な要因は経済成長率だという考え方だ。この関係が成り立たないなら、将来の経済成長が鈍化しても、必ずしも金利低下につながるとは限らない。

著者らは過去200年間の金利の推移を検証し、自然利子率を決めるうえではほかの要因も重要だと論じる。挙げられた要因は数多く、人口動態、各国政府による債務不履行、金融規制の水準などが含まれる。最後の要因は特に興味深い。4人の経済学者は、金融規制が強化された時期は金利の低下と重なることを示している。1970年代と1980年代に金融部門の規制緩和が進んだことを踏まえると、経済においてほかの資金調達手段が利用できるようになったため、自然利子率は上昇しているはずだと彼らは考える。その一例として、企業は銀行から融資を受ける代わりに、債券市場を利用できる。

しかし、この論文が示すより大きな論点は、自然利子率を特定するのが非常に難しいということだ。データによれば、金利は長年にわたって大きく変動してきた。論文を読むと、金利を正確に推定するのは至難の業だと思わずにはいられない。主な理由は、実際の長期的な自然利子率を知るのが非常に難しいことにある。

FT AlphavilleのMatthew Kleinは、こうした一見克服不可能な状況を、金融政策におけるニヒリズムのさらなる証拠として 捉え ている。これほど重要なパラメーターを推定できないのなら、金融政策の立案者は「景気循環の変動を平準化するどころか、いつまでも暗闇のなかで手探りを続ける運命にある」と彼は言う。しかし、長期的なパラメーターが不確かだからといって、景気循環の平準化に向けた取り組みを放棄するのは正当化できないように思われる。

実際、Hamilton、Harris、Hatzius、Westは、この不確実性を米連邦準備制度理事会(FRB)スタッフが好むマクロ経済モデルに織り込み、その結果、金融政策にはより大きな「慣性」が必要だとの結論に至っている。言い換えれば、不確実性がある場合、FRBは方針転換の前にしばらく待つべきだということだ。現状を踏まえれば、これは利上げをしばらく待ち、時期が来たら迅速に利上げすることを意味する。

興味深いことに、自然利子率が分かっていると仮定するモデルからも、同じ勧告が導かれる。Greg Ipは、サンフランシスコ連邦準備銀行の経済学者が作成したモデルを 用い て、現時点で需要が主な問題であり、長期金利がまったく変化していないと考える場合、金利をどのように引き上げるべきかを検討した。政策上の勧告は、金利を長期間低く保ち、その後、急速に引き上げるというものだ。

経済モデルは現実を単純化したものであり、はるかに複雑な実体経済における重要なパラメーターについての仮定、推測、推定に大きく依存することが多い。ときには、こうした入力値があまりにも大きく現実から外れ、取り組み全体が無意味になってしまうこともある。この新たな論文が示すように、妥当な仮定を見つけるだけでも非常に難しい。それでも経済学者や政策立案者は複雑な世界を解釈するためにモデルを必要とし続けるため、これから先の道を覆う霧をある程度受け入れながら、進み続けるほかない。

本記事は、 The Washington Centre for Equitable Growthとの協力により公開されています。 本記事の公開は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Nick Bunkerは、Washington Center for Equitable Growthの政策アナリストです。

東京で株価を表示する電子掲示板を見る男性。REUTERS/Yuriko Nakao。

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