川が赤く染まるのを見て、聖書の預言が現実になったと思う人もいるかもしれない。しかし実際には、工業規模の汚染によって水が汚染された可能性のほうが高い。
2016年にロシアのダルディカン川が深紅に染まった際、非難の矛先は近隣にある、世界最大のニッケル・パラジウム生産企業ノリリスク・ニッケル所有のナデジダ冶金工場に向けられた。当初、この金属大手は関与を認めなかったが、後に大雨によってろ過用ダムがあふれたと認めた。
これは、ロシアの「単一産業都市」の日常に過ぎなかった。ソ連時代の政策の名残であるこれらの都市では、ひとつの産業を中心に地域社会全体が築かれた。
ソ連崩壊後の社会・金融・産業の変化によって、多くの単一産業都市は崩壊するか、大幅に縮小し、2008年の金融危機以降もさらに打撃を受けた。
深刻な問題
2014年のデータによると、単一産業都市は約319あり、都市人口の大きな割合を占め、GDPの40%を生み出していると、フィナンシャル・タイムズは報じている。
「アジアン・ソーシャル・サイエンス」の報告書は、単一産業都市が抱える問題の深刻さを指摘した。ロシアの他地域より居住空間が狭く、病床や医師も少ないなど、社会インフラが機能不全に陥っていること、プールや運動場などの公共施設が減少していること、地方予算の赤字により工学・社会インフラが老朽化していること、住民の生活水準低下によって中小企業の事業機会が乏しいこと、若年層が流出していることなどが挙げられた。
FTに単一産業都市の状況について寄稿した、ビジネス情報コンサルタント会社Alacoのアナリスト、セプティマス・ノックスによると、ロシアは2014年に単一産業都市開発基金を設立し、現在の評価額は約300億ルーブル(5億300万ドル)だという。

この基金は、官民連携を通じて単一産業都市の持続可能な社会経済開発を促進し、投資家にとって魅力的な都市にするとともに、経済と社会状況の安定化に向けた政府の取り組みの一貫性を確保することを目的としていた。
現在、単一産業都市を投資家にとってより魅力的にするため、インフラ事業に資金が投じられている。また、基金は企業向け融資も行っている。
さらに基金は、連邦政府のプログラム「単一産業都市の総合開発」およびスコルコボ・ビジネススクールと連携し、市長を専門的な都市経営者に育成することを目指して、単一産業都市の市長向け研修を実施している。
「問題は」とノックスは問いかけた。「この基金には、これほど巨大な問題に対処し、硬直化したロシアの数百の町を再生させるだけの能力がどれほどあるのか。人口の約11%が暮らす町を立て直すのに、5億ドルで十分なのだろうか」
都市の改善
2017年、政府は住民から改善案を募るウェブサイト「単一産業都市ニュース」を開設した。一方、ロシア建設省の資金は、単一産業都市やその他の地域の都市環境改善に活用されてきた。
非政府機関Strelkaに勤務し、単一産業都市の改善プロジェクトを率いたマクシム・イサエフは、こう述べた。「ロシアの単一産業都市319すべての住民に参加の機会が与えられました……自分たちの町で何を改善したいか、提案を投稿することで参加できたのです。

「また、気に入った提案に投票できるようにしたため、各都市の担当者は、住民のニーズや希望を反映した最も人気のある案を把握できました」
3か月間で1万5,000件を超える提案が集まり、その一部は自治体の計画に取り入れられた。ウェブサイトは、世界各地の改善案へのリンクを掲載した知識ベースにもなった。
地域の例としては、図書館や文化センターの開設、公園の再開発、青少年センターの開設などがある。
イサエフによると、2018年3月のプロジェクト終了までに、こうした計画約1,500件が完了する予定だった。
さらに彼はこう語った。「これらのプロジェクトは一般に、新しい形の経済への本格的な転換を目指すものではなく、短期間で変化を目に見える形にすることを重視しています」
彼はこうしたプロジェクトを、単一産業都市の住民の暮らしと都市の外観を改善することを目指す「早期に成果が見える取り組み」と呼んだ。
このプロジェクトで優先される都市計画は、一定の基準を満たす必要があった。最も人気のある公共空間の改修、若者向け公共空間の創出、歴史的に重要な場所の修復、放置された空間や施設の整備などが含まれていた。
「変化の規模は驚くべきもので、前例がありません」とイサエフは語った。「プロジェクトによって住民は新たな、または改善された公共空間を得ました。それにより、雰囲気は一変し、前向きな変化が次々に生まれる流れができています」

再開発の模範例
政府の委託を受けた報告書は、欧州、日本、米国にある単一産業都市に類似した地域の再開発を検討し、各地の競争優位性を生かして複数産業の雇用主を育成すること、町のインフラを整備すること、住みやすい環境をつくることを提言した。

ノックスによると、再開発の模範例としてよく挙げられる都市のひとつがコガリムだ。エネルギー企業ルクオイルの主要油田がある。
ノックスによれば、この町は経済の多角化に成功し、現在は地域で多数の中小企業が営業しているほか、観光産業も芽生えつつある。
「単一産業都市がどう変わり得るかを示す模範例と言えるでしょう。しかし、ロシア紙『コメルサント』が9月に指摘したように、これは例外であって、標準ではありません」
ノックスはさらに、ルクオイルが官民連携を通じてこの都市に莫大な資金を投じており、多くの単一産業都市にとって、それに匹敵する投資は想像もできないと付け加えた。
しかし、問題の規模を考えれば、「ほとんどの町が苦境から抜け出せない状況は続くでしょう」とノックスは言う。「こうした町が国民の意識に上ることは非常にまれで、上るとしても最も衝撃的な事件が起きたときだけです。それ以外では、問題は背景でくすぶり続けています」



