昔から「睡眠は過大評価されている」と言われる。だが、現代の科学的研究に照らしてもそう言えるだろうか。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、睡眠不足を公衆衛生上の問題と宣言した。これに悩んでいるのは米国だけではない。西側諸国の経済圏全体で、睡眠不足が深刻化している。これは、新たな研究の結論である。同研究のタイトルは「睡眠が重要な理由―睡眠不足がもたらす経済的コスト」。この研究は、非営利の世界的な政策シンクタンク、ランド研究所が実施した。
睡眠不足は死亡リスクを高めるなど、健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある。また、学業成績や個人の生産性にも悪影響を与えうる。つまり、睡眠不足とその影響は医療制度にとどまらず、経済全体に及ぶ可能性がある。
生活習慣と仕事が睡眠に与える影響
飲酒、喫煙、ストレス、運動不足などの生活習慣により、人々の睡眠時間はますます短くなっている。報告書によれば、「オンデマンド型」の社会や経済、電子メディアの過剰な利用も、私たちの睡眠を妨げている。
睡眠時間を大幅に短縮させる最大の要因は、メンタルヘルスの問題、金銭的な不安、職場での時間的プレッシャー、長距離通勤の影響である。男女差もあり、男性の平均睡眠時間は女性より9分短い。
死亡リスクの上昇
平均して一晩に6時間未満しか眠らない人は、7~9時間眠る人に比べ、死亡リスクが13%高い。睡眠時間が6~7時間の中間層でも、自動車事故、脳卒中、がん、心血管疾患など、死因を問わず死亡リスクは依然として7%高い。

睡眠不足による損失が最も大きい国はどこか
1日6時間未満しか眠らない人は、推奨される7~9時間眠る労働者より、生産性の損失が2.4%大きいと報告されている。つまり理論上、睡眠時間が足りない従業員は、十分に眠る労働者より年間約6日多く労働日を失う。
国全体で推計すると、睡眠不足による労働日の損失は米国で約123万日と最も多く、次いで日本が平均約60万日、英国とドイツが理論上それぞれ20万日強となる。調査対象の5カ国のうち、カナダの労働時間の損失は最も少なく、8万日未満である。
睡眠不足がもたらす経済的影響
研究は、睡眠不足がさまざまな形で労働力の供給に影響すると結論づけている。死亡リスクの上昇によって労働人口が縮小し、睡眠不足の従業員は欠勤したり、職場で十分な力を発揮できなかったりする可能性が高まる。また、子どもは十分に眠らないと、技能の習得が遅れる。

通常の睡眠を取る人と睡眠不足の労働者のパフォーマンスを分析すると、この問題の深刻さが明らかになる。GDPに対する損失の割合は一見小さく見えるが、金額は驚くほど大きい。不眠による損失は米国で4,000億ドル超、日本で1,380億ドルに上る。続いてドイツが600億ドル、英国が500億ドル、カナダが210億ドルである。
睡眠不足を抑えるには
ランド研究所の研究者らは、この問題に対処するための一連の提言を示している。個人としては、起床時刻を一定にした睡眠習慣を確立すること、運動すること、カフェインやニコチンなどの刺激物を避けることが、いずれも良い影響をもたらしうる。雇用主の立場からは、就寝前の電子機器の使用を控えるよう促し、良好な睡眠習慣を推進することで、従業員が夜により十分な休息を取れるようにすべきだ。睡眠を促す公共政策について、報告書は啓発キャンペーンの実施や、子どもたちが十分な睡眠を取れるよう、学校の始業時刻を遅らせ、より効果的な時間割を導入することを提案している。



