有力な経済学者は、キャッシュレス化が進めば、犯罪を減らし、労働慣行の透明性を高める可能性があり、格差の縮小につながり得ると指摘する。
ブルームバーグによると、米国の経済学者で、著書『現金の呪い』の著者でもあるケネス・ロゴフは、通貨廃止の「最大の恩恵」を受けるのは世界の貧困層だと考え、モデルとしてスカンディナヴィアを挙げている。
スウェーデン中央銀行の顧問を務めた経験もあるロゴフは、ブルームバーグとのインタビューで、北欧諸国はキャッシュレス経済の「最先端」にあると語った。スカンディナヴィアでは汚職と格差が世界でも特に低く、流通している貨幣のうち現金は約5%にすぎない。
現金を減らす試みは、ほかの地域ではそれほど成功していない。例えばインドでは、インフラの整備が遅れていたため、通貨廃止が経済に突然の衝撃をもたらした。
昨年11月、インドのナレンドラ・モディ首相は突然、同国通貨の約86%を無効にした。その結果、労働者階級の人々は、使えなくなった紙幣を新紙幣に交換するために、何日も仕事を休み、何カ月も長蛇の列に並ぶことになり、絶え間ない苛立ちを募らせた。
しかしロゴフによれば、適切なインフラを整えたうえで段階的に実施すれば、キャッシュレス化は、先進国で働く移民労働者の搾取の是正にも役立つ可能性がある。移民労働者はしばしば帳簿に載らない報酬を受け取り、そのため雇用主が責任を問われないことがある。
とはいえ、ロゴフは現金にもいくつかの利点があると考えている。デジタル機器や電力の障害に備え、現金は予備として残すべきだとブルームバーグに語った。また、少額の買い物にも現金は便利で、特にプライバシーを重視する取引に向いているという。例えば、人が「愛人に20ドルの商品をこっそり買う」ような場合だ。



