2007年に米国の住宅バブルが崩壊した後、多くの経済学者や政策立案者は、米国はもはや信用の伸びに依存して消費と経済成長を押し上げることはできないと主張した。投資と所得が、今後の個人消費の増加を支える基盤になるはずだった。その提言の一部は実現しつつあるようだ。個人消費は現在、所得の伸びと強く結び付いているように見え、この関係は今後の経済成長のペースと安定性に重要な影響を及ぼす可能性がある。
先週後半、ブルームバーグ・ニュースは、RBCキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、トム・ポルチェリによる消費の伸びに関する分析を 報じた 。この分析では、所得の伸び、具体的には週当たり総給与額の伸びと、消費の伸びとの相関関係を調べた。ポルチェリによると、2009年6月から現在までの今回の景気拡大局面における相関係数は0.9で、非常に高い。これに対し、2001年後半から2007年後半までの景気拡大局面の相関係数は、わずか0.1強だった。この前の期間に消費と所得の伸びの関係が弱かったのは、住宅バブルが膨らんでいた時期だったことを考えれば納得できる。
ポルチェリの分析結果は、現在、消費と所得の伸びが密接に結び付いていることを示している。過去2回の景気拡大局面における週当たり給与額の伸びを見ると、その伸び率に大きな差はない。2001年11月から2007年12月までの景気拡大局面では、給与額の年率伸び率は4.12%だった。直近の景気拡大局面である2009年6月から現在までの平均年率伸び率は4.09%である。しかし、消費の伸び率には大きな差がある。前回の景気拡大局面では、インフレ調整後の個人消費支出(PCE)の平均年率伸び率は2.8%だった。それに対し、給与額がほぼ同じ伸びを示す今回の景気拡大局面では、PCEの平均年率伸び率は現在2.3%で、丸々0.5パーセントポイント低い。ただし、もちろん、今回の景気拡大局面はまだ終わりまで進んでいない。
データを詳しく見ると、経済成長を支える消費の伸びの低下は、非耐久財(食品や衣類)の消費とサービス(医療や交通)の消費の伸びに関係していることが分かる。2001年から2007年の景気拡大局面では、非耐久財の消費は平均年率2.6%、サービスは2.5%増加した。今回の景気拡大局面では、平均伸び率はそれぞれ1.9%と1.8%である。また、プリンストン大学の経済学者アティフ・ミアンとシカゴ大学のアミール・スフィが昨年 指摘した ように、今回の景気循環における非耐久財およびサービスのPCEの伸びは、歴史的に見て低調である。
景気回復期の所得の伸びは、耐久財よりも非耐久財やサービスと直感的には結び付きが強いように思われる。その理由は、耐久財(自動車や食器洗い機)は家計にとって大きな必需品であることが多い一方、非耐久財やサービスへの支出は、生活を維持するうえで不可欠ではないものが多いからだ。所得の伸びがそれほど力強くなければ、家計はこうした支出を控える可能性がある。
個人消費は米国経済全体の約70%を占めるため、消費の伸びを左右する要因の変化を理解することが重要だ。消費が所得主導の傾向を強め、所得の伸びが加速すれば、より持続可能で公平な成長につながるだろう。しかし、所得の伸びが加速しなければ、消費の伸びは恒久的に低下する可能性がある。その場合、個人消費が経済成長全体に占める割合が低下するか、経済全体の成長が鈍化することになる。いずれのシナリオも、米国経済にとって大きく重要な変化となる。
本記事は、 Washington Center for Equitable Growthとの協力により掲載しています。本記事の掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
アジェンダの最新情報を受け取るには、 週刊ニュースレターに登録してください。
著者:ニック・バンカーは、Washington Center for Equitable Growthの政策アナリストです。
画像:2010年7月13日、タリンのATMで500エストニア・クローン(40ドル)を引き出す顧客。REUTERS/Ints Kalnins。


