今日のインフレは一部、供給問題によって加速しているが、生産性の向上がその抑制に役立つ。
より短い時間でより多くの財やサービスを生産すれば、単位当たりコストを削減し、供給を増やして、価格に下押し圧力をかけられる。
これを実現するには、減税や地域ごとの戦略計画の策定を通じて、政府が投資を促す必要がある。
インフレは現代の大きな課題の一つとなっている。英国のインフレ率はG7で最も高く、消費者物価インフレ率の最新の統計によると、年率9%に達している。
価格を測るもう一つの一般的な指標である、小売物価インフレ率を見ると、住宅ローン金利を計算に加え、算出方法も少し異なるため、さらに高い11%となっている。これは重要な点だ。RPIは、鉄道運賃や携帯電話の契約から学生ローンまで、幅広い品目の価格改定に使われている。
インフレがこれほど高い理由は、よく知られている。最初のきっかけは需要の拡大だったが、供給問題がさらにインフレを加速させている。
高インフレの原因
需要面では、パンデミック中の量的緩和(QE)――中央銀行が経済を下支えするために「通貨を創出」した政策――によって、システム内の資金量が20%超増加した。
ロックダウンが終了すると、これによって財やサービスへの、抑えられていた需要が顕在化した。例えば、小売売上高は2021年5月に前年同月比で20%超増加し、2022年1月には再び約10%のピークに達した。同時に、企業の需要も、主要な工業原材料である銅や鉄鋼などの大幅な値上がりを招いた。さらに、原油価格は2021年に約67%上昇し、2022年もこれまでにさらに20%上昇した。
需要の高まりは、ソーシャルディスタンスや自主隔離の規則、そして中国でのロックダウン再開(エバーギブン号の座礁も含む)がもたらした世界のサプライチェーンの制約とぶつかった。その結果、商品の輸送コストはパンデミック前の最高水準より約35%高く(最低水準と比べると700%超高く)なっている。しかも、これらはすべてウクライナでの戦争に触れる前の話だ。
イングランド銀行は、政策金利を0.1%から1%に引き上げ、QEを停止した。金融引き締めは需要に影響を及ぼす。多くの債務返済で利払いが増え、借入コストが上昇しているためだ。その結果、GfK英国消費者信頼感指数は歴史的な低水準の-40となっている(数値がプラスなら、消費者信頼感が高いことを意味する)。
金利上昇と物価上昇が重なり、景気後退の可能性が高まっている。その一因は、金利の引き上げが企業の投資を抑制することだ。しかし、投資を抑えることにはもう一つ問題がある。投資は、インフレ問題を長期的に解決する手段の一つなのだ。
生産性と投資
これは英国が長年抱える生産性の問題と関係している。生産性とは、各労働者がどれだけ生産するかということだ。技術の進歩に伴い、英国の生産性は伸びていると予想されるが、その伸びは米国、ドイツ、フランスといった主要な競争相手より小さい。
ロックダウン中に急落した生産性の伸び率はパンデミック前の水準に戻ったものの、2007~09年の世界金融危機前の数年間と比べると、依然として伸びが鈍い。2019年のPwCの報告書によると、英国の生産性は2008年までの10年間に年率2%、その後の10年間には年率0.6%伸びた。また、生産性の格差はドイツに対して約10%、米国に対して30%超に達している。
G7の生産性の伸び、1997~2021年
生産性はなぜインフレに関係するのか。労働力の生産性が高まれば、より多くの財やサービスを、単位当たりコストを抑えて生産できる。つまり、供給が増えて価格に下押し圧力がかかり、インフレ率の低下につながる。
どうすれば生産性を高められるだろうか。重要な方法の一つは投資を増やすことだが、英国はこの点が弱い。企業投資はブレグジットの国民投票後の2016年に停滞し、COVID-19の影響で減少した。現在も2019年の水準をほぼ10%下回っている。GDPに占める英国の投資支出の割合(16.7%)は、見劣りする。米国は22.5%、日本は25%、EUは24.3%だ。英国企業が1,400億ポンドを保有し、蓄積したプロジェクトを多数抱えていることを示す証拠があるにもかかわらず、こうした状況にある。
何ができるか
問題は、企業に投資の潜在力を発揮させるにはどうすればよいかだ。政府は法人税の標準税率を19%から25%に2023年に引き上げる計画だが、これは助けにならず、むしろ撤回すべきだろう。投資をさらに促すには、税額控除をより手厚くする必要もある。その一環として、2年前に導入された「スーパー控除」を延長すれば、企業の納税額を25%減らせる。
企業に投資や事業拡大を促すだけでなく、政府は起業も後押しする必要がある。例えば英国では、2020年2月以降、75万人の自営業者が減少した。
起業を促すため、英国政府、権限移譲を受けた各地域の政府、地方議会が連携し、地域ごとの戦略計画を策定する必要がある。これには、大学を地域の専門知識の拠点としてより有効に活用することや、地域の専門分野を基盤に同業企業の集積をつくり、設備の共有や協業を通じて互いに支え合えるようにすることが含まれる。計画はあるが、実行に移す必要がある。地域間格差の是正は、耳目を引くスローガンだけで終わってはならない。
公共投資も対策の一部でなければならない。特に教育への投資が重要だ。学校では、若者が最新技術を十分に身につけられるよう、施設の更新が必要となる。また18歳以上については、大学教育と見習い訓練のバランスをより明確にする必要がある。
ロンドンではクロスレールの開通により、東西間の移動が大幅に容易になろうとしている。しかし、それ以外の地域では、リーズからマンチェスターへ行く場合も、エディンバラからグラスゴーへ行く場合も、移動は依然として困難だ。交通網の高速化はモノと労働力の移動を改善する。一方、インターネット接続を本格的にアップグレードすれば(フルファイバーと5G)、移動の必要がない場面での連携が向上する。どちらも生産性を高める。
こうした施策には、当然ながら追加の支出が伴う。しかし、これは長期的な解決策として捉えなければならない。第二次世界大戦後、政府債務はGDPの200%を大きく上回り、完済までに50年かかった。今も同じ時間軸で考えることができる。
英国のリシ・スナク財務相は、投資を呼び込み生産性を高める必要性について繰り返し述べているが、政府が何をするつもりなのか、具体的な説明はまだほとんどない。生産性向上には多くの経済的メリットがあるが、インフレ抑制という効果は誰もが見落としているようだ。


