暴力が蔓延する都市は経済成長を実現できるのか。この問いについて、アフリカ大陸の人間の安全保障の促進を目的に政策志向の調査研究を行う汎アフリカ組織、 Institute for Security Studies (ISS)が主催するセミナーで議論されている。
このセミナーでは、南アフリカで最大級かつ経済活動が最も活発な2都市、ヨハネスブルグとケープタウンが、民主化後の21年間に得た教訓に焦点を当てる。両市は長年にわたり、犯罪と暴力に対処するための専用戦略を展開してきた。犯罪が2000年代初頭にピークを迎えて以降、進展はあったものの、安全上の課題は依然として続いており、ここ数年は殺人率の上昇が記録されている。また、南米の比較事例から得られる教訓にも焦点を当てる。同地域では、過去10年から20年の間に、世界でも特筆すべき規模で殺人やその他の暴力犯罪が減少した都市がある。
「南アフリカには、都市部の暴力に対処することを目的とした都市レベルの戦略を策定し、実施してきた豊富な経験があり、この点で他のアフリカ諸国に貴重な教訓を提供できる」と、ISSのマネージングディレクターであるアントン・デュ・プレシス氏は述べた。同氏は、 脆弱性・暴力・紛争に関するグローバル・アジェンダ評議会のメンバーである。
2050年までに、アフリカの人口は約24億人へと倍増すると予測されており、その大多数はサハラ以南地域に暮らす見込みだ。人口の急増と高い経済成長率が相まって、前例のない数のアフリカの人々が都市中心部へ移住することになる。35年後には、アフリカ人口の60%が都市部に暮らすと予測されている。
したがって、都市は人間開発においてますます重要な役割を担うようになる。このため、暴力に対する都市レベルのレジリエンスを促進することが、2014年に発足した脆弱性・暴力・紛争に関するグローバル・アジェンダ評議会の2つの優先重点分野の一つとなった。この取り組みの目的は、脆弱性、暴力、紛争のつながりと、こうした課題への対応における官民連携の役割について理解を深め、認識を高めることである。
南アフリカで最も人口の多い都市であるヨハネスブルグは、レジリエンスの促進と公共の安全向上を目指すさまざまな取り組みを率先して進めてきた。これには、国連ハビタットの「セーファー・シティーズ」事業(1997年から2000年)など、大規模な国際的取り組みへの参加も含まれる。近年では、市の長期的な2030年ビジョンの一環として、独自の「ヨハネスブルグ市安全戦略」を策定した。この戦略は、地理的特性に即した学際的な解決策、証拠に基づく問題解決、そして暴力に対する都市のレジリエンスを強化するための強固な複数機関間の連携構築を目指している。殺人件数は過去10年間で全体として22%減少した一方、ここ2年間は増加に転じている。
ケープタウンも長年にわたり、さまざまな安全対策を実施してきた。2000年以降、ケープタウン市は「シティ・センター改善地区(CCID)」と呼ばれる官民連携事業を実施している。しかし、2008年から2010年にかけて殺人件数の顕著な減少が記録された一方で、その後の5年間は増加に転じ、2013/14年には過去10年間で最も高い殺人率を記録した。
レジリエンスの構築に加え、都市は脆弱性をもたらす他の要因にも対応し、継続的な投資を促さなければならない。従来の政府の対応に加えて、さまざまな関係者が協力し、主要な課題を評価し、機会を明確にし、この脅威の拡大に対応するための証拠に基づく戦略を策定する必要がある。
アフリカで都市のレジリエンス構築に役立つ証拠基盤は、依然として乏しい。より精緻な測定と批判的分析がなければ、ほぼあらゆる介入策が「レジリエンス構築」と称されかねない。しかし、世界各地で「より安全でレジリエントなコミュニティ」プロジェクトを実施してきた赤十字国際委員会(ICRC)の取り組みなどから、建設的な事例をいくつか挙げることができる。
主な目的は、都市部の暴力に対する都市の強化を目指す脆弱性・暴力・紛争に関するグローバル・アジェンダ評議会の取り組みに、実践的な政策上の提言を寄せることである。さらに、アフリカ連合(AU)首脳会議の直前の週に開催されるこのセミナーは、アフリカ各国政府および地域経済共同体がアジェンダ2063の目標達成を目指すにあたり、取り組むべき重要課題を明らかにすることを目的としている。
著者:ガレス・ニューハム、ガバナンス・犯罪・司法部門長、Institute for Security Studies
画像:2015年5月19日、ヨハネスブルグのジェップスタウン男性宿舎の通路を歩く男性。REUTERS/Siphiwe Sibeko

