米国では、新しい企業が次々と誕生しています。しかし、そのうち大企業へと成長する力を最も備えているのはどの企業でしょうか。MITの研究者が実証研究に基づいて開発した手法は、ハイテク企業の成長可能性をこれまでにない精度で予測します。地域や州の政策担当者が、企業の成長見通しを評価するうえでも役立つ可能性があります。
「企業の創出、スタートアップ、イノベーションに関する政策の影響を評価するうえで、中心となる問いは、成長企業を築く可能性の高い起業家のタイプを、どのように測定するかということです」と、研究を主導したMITスローン経営大学院のデイビッド・サーノフ経営学教授、スコット・スターンは述べます。このテーマについてさまざまな理論が論じられてきた一方で、「体系的な方法で測定し、分析を行う方法には、歴史的に大きな隔たりがありました」と付け加えます。
しかし今、カリフォルニア州の企業を対象にした他に類を見ない包括的な分析に基づき、スターンと同僚のホルヘ・グスマン(MITスローンの博士課程候補者)は、高成長のテクノロジー企業がどのような特徴を持ち、どこに存在するのかを詳細に描き出しました。この研究をまとめた論文「シリコンバレーはどこにあるのか?」が、本日『Science』誌に掲載されます。
企業が正式に登記し、資本投資を求め、創業初期にニュースで取り上げられることなどは、成長可能性の高さと関連しています。これは直感的に思えるかもしれません。しかし、スターンとグスマンによれば、企業名さえも成長可能性を示す確かな手がかりになります。たとえば、創業者の名前を含む企業は、一般に他のタイプの企業ほど拡大しません。
「こうした要因の組み合わせは、成長する可能性が相応にある企業と、成長する可能性がかなり低い企業を見分けるうえで、非常に有用な診断指標となることが分かりました」とスターンは述べます。
この研究は、スタートアップの数だけでなく、いわゆる「質」を評価することで、成長可能性の高いスタートアップが集まる町も明らかにしています。カリフォルニア州では、メンローパーク、マウンテンビュー、パロアルト、サニーベールの各市がこの順位で上位を占めました。これらの地域のスタートアップには、IPOを実施したり、大規模な買収の対象になったりすることと関連する特徴があり、その割合は州平均の約10倍です。
シリコンバレーからマサチューセッツ州へ
スターンとグスマンは現在、マサチューセッツ州についても同じように細かな分析を進めています。カリフォルニア州の研究を補完するため、ワーキングペーパーと、マサチューセッツ州に関する初期のデータ可視化を公開します。
研究を実施するにあたり、スターンとグスマンは、2001年から2011年までのカリフォルニア州公式企業登記簿に掲載された新設企業の包括的なリストを用いました。企業の70%について、2001年から2006年の期間に高成長企業を特徴づけた一連の要素との相関を調べることができました。次に、その結果を使って、同じ期間に設立された残り30%の企業の実績と照合しました。また、2007年から2011年に登記された新設企業に対してもモデルを検証しました。
スターンとグスマンが確認したことの一つは、テクノロジーの中心地であっても、新たに登記された企業の大半はテクノロジーを主軸としていないということです。
「パロアルトやマサチューセッツ州ケンブリッジのような場所でさえ、新しい企業のほとんどは小売関連の小規模事業で、成長する可能性はあまり高くありません」とスターンは述べます。
スターンは、この研究が、地域経済に不可欠なピザ店、クリーニング店など、さまざまな小規模事業の価値を軽視することを意図したものではないと強調します。ただし、地域のニーズを満たすこうした事業には、成長に本質的な上限があります。
「これらはすべて正当な事業であり、地域経済にとって重要です」とスターンは述べます。しかし、「こうした事業の意図と可能性は異なります。そして、分析を使えば、おおむねリアルタイムでそれを評価できます」と付け加えます。
ちなみに、創業者の名前を冠する可能性が最も高いのは、こうした地域密着型の事業です。特に飲食やさまざまなサービス業では、常連客に個人的な親しみを感じさせる名前が使われます。「それは、創業者の意図をほぼ宣言しているようなものです」とスターンは述べます。
これに対し、この研究には、高成長・ハイテク企業の名称によく見られる何百もの単語のリストが含まれています。
政策の形成
ピザ店が意欲的なテクノロジー企業のように成長することはめったにないと明らかに思えるかもしれませんが、ある地域にある企業群全体の成長可能性を集計して評価するのは、はるかに困難です。
しかし、スターンとグスマンが開発した手法を使えば、地域、州、広域地域の計画担当者は、この点で前進し、テクノロジーを基盤とする成長の可能性をもたらす事業活動の構成になっているかを評価できます。そのため、他の研究者らは、この研究が経済政策の設計に役立つと述べています。
研究に関与していないデューク大学教授のアーロン・チャタジーは、「政策立案では、物事の数え方は分かっていることが多いのです。……しかし、質の面から区分するのは、はるかに難しい」と指摘します。スターンとグスマンは、「人々が関心を寄せる問いに真正面から取り組みました」と付け加え、「政策コミュニティから好意的に受け止められると思います」と述べています。
もちろん、成長の可能性があるのはテクノロジー企業だけでなく、多くの産業です。スターンが共著し、つい先日発表された別の研究論文では、さまざまな産業の企業クラスターを形成することで、多くの都市や地域が成長を実現できるという知見を示しています。スターンによれば、どちらの論文にも共通する重要な動機は、政策担当者が新たな施策をより適切に策定できるよう、データツールを提供することです。
「起業家エコシステムを測定できなければ、それを運営するのは非常に困難です」とスターンは述べます。「私たちの研究は第一歩ですが、政策担当者、実務家、研究者は、特定の地域における起業活動の量と質を総合的に評価できれば、その恩恵を受けられると考えています。私たちが目指すのは、新たなリアルタイムの経済統計を実際に生み出すことです。」
この記事は、 MIT Newsとの共同企画として掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:ピーター・ディジケスはMIT Newsに記事を執筆しています。
画像:階段越しに見えるピエール・ビルディング。REUTERS/Adrees Latif



