明日目覚めたとき、現代的なエネルギーを利用できなかったとしたら、と想像してみてください。冷蔵庫も調理用コンロもエアコンもありません。日が沈んだ後、子どもたちは宿題ができません。携帯電話を充電することもできません。これが、アフリカの電力未接続人口の世界であり、途方もない規模で開発の機会を損なっている市場の失敗です。
トーマス・エジソンが電球を発明してからほぼ150年が経った今も、アフリカでは約6億2,000万人、つまり地域人口の3分の2が電気を利用できずに暮らしています。調理にバイオマスを使う人はさらに多く、マラウイ、タンザニア、モザンビークの農村部では、90%を超える人々がわら、家畜のふん、薪を使っています。その結果生じる家庭内の大気汚染は、年間60万人の死亡につながっており、その半数は5歳未満の子どもです。
国際社会は、2030年までに電気と現代的なエネルギーへの普遍的アクセスを保証するという目標を掲げました。しかし、サハラ以南アフリカで電気を利用できない人の数は増加しています。現在の傾向が続けば、15年後にはこの地域で電気のない暮らしを送る人がさらに 1,500万人 増えることになります。
アフリカの最貧困層は、エネルギーを利用できない代償を健康だけでなく、極めて限られた所得でも支払っています。最近のアフリカ進歩パネルの報告書『 Power, People, Planet 』(私は主執筆者を務めました)によると、1日2.50ドル未満で暮らす人々がエネルギー製品に費やす額は、年間約100億ドルに上ります。
アフリカのエネルギー市場は非効率で不公平です。国の送電網につながっている少数のアフリカ人(その大半は富裕層)は、国営電力事業者が供給する安価で多額の補助金を受けた電気の恩恵を受ける一方、未接続の多数派は、木炭、電池、ろうそく、灯油の形で供給されるエネルギーに、1キロワット時当たり約10ドルを支払っています。比較すると、米国の平均的な消費者の支払いは15セントです。つまり、世界で最も貧しい人々の一部が、エネルギーに最も高い価格の一部を支払っているのです。
この問題には効果的な解決策があります。太陽光発電技術です。アフリカ進歩パネルの推計によると、貧困層の世帯が太陽光パネルを設置すれば、平均して年間58ドルを節約できます。そのお金を教育、医療、生産的な投資に充てることができます。もちろん、パネルを提供する企業も、この大きな新市場に参入すれば大きな利益を得られるでしょう。
では、なぜ太陽光発電市場はまだ立ち上がっていないのでしょうか。問題の一因は、貧困世帯には太陽光技術の初期費用を負担できないことです。ここ数年で太陽光パネルの価格は半分以上下がりましたが、入門用の150ドルのセットでさえ、1日2.50ドル未満で暮らす人には到底手が届きません。投資家と政府にとっての課題は、太陽光エネルギーへの接続コストを下げることです。
朗報は、根本にある市場の失敗に対処する新たなビジネスモデルを、すでに一部の革新的企業が開発していることです。ナイロビを拠点とする M-KOPA は、ケニア、ウガンダ、タンザニアで20万世帯以上を太陽光発電につないできました。同社は、顧客が少額の頭金で太陽光発電キットを手に入れられるようにしています。その後、世帯は携帯電話の技術を通じて従量払いでクレジットを購入し、最終的にシステムを完全に所有します。同様のモデルを使って、太陽光ランプやより効率的な調理用コンロを提供する企業もあります。
しかし、特にバングラデシュが過去5年間に、都市部のスラムや貧しい農村地域に350万基の小型太陽光発電システムを届けたことを考えると、アフリカの再生可能エネルギー市場の立ち上がりはあまりにも遅いと言えます。バングラデシュの成功の鍵は、マイクロクレジット、リスク保証、小規模な設置助成金を通じて民間投資を促す環境を整えた政府のプログラムでした。援助も重要な役割を果たしましたが、その役割は補完的なものでした。
残念ながら、アフリカのエネルギーをめぐる議論は、アクセスを考慮せず、ほぼ全面的に電力インフラの開発に焦点を当ててきました。世界銀行やアフリカ開発銀行などの援助機関も共有する根本的な前提は、国の送電網への投資拡大と電力事業者の改革を組み合わせれば、電力が人々に行き渡るというものです。
しかし、より多くの電力が緊急に必要なのは確かですが、このアプローチはいくつかの不都合な真実を見落としています。第一に、貧困層に手頃な価格のエネルギーを届けることは、アフリカの国営電力事業者の優先事項の上位にはありません。こうした事業者は主に、富裕層に安価な電気を届け、縁故主義の機会をつくる手段として機能しており、 タンザニアの場合のように、組織的な大規模窃盗を可能にしていることもあります。さらに、国民に手頃な価格のエネルギーを届けるための信頼できる国家計画と呼べるものを、わずかでも備えているアフリカの政府はほとんどありません。
アフリカに豊富な水力、太陽光、風力、地熱の資源を活用し、低炭素エネルギー革命を推進する新たなアプローチが必要です。ある程度、こうした革命はすでに進行しており、エチオピア、ケニア、南アフリカ、ルワンダなどの国では、再生可能エネルギーが競争力のある価格で国の送電網に電力を供給しています。
しかし、分散型のオフグリッドシステムを通じて貧困層に電力を届けるという再生可能エネルギー技術の可能性を実現するには、さらに多くの取り組みが必要です。政府が強いリーダーシップを発揮し、民間部門が積極的に関与すれば、こうしたシステムは、アフリカ諸国のエネルギー供給のあり方を変革するきっかけとなり得ます。アフリカ各国の政府は、エネルギー消費への補助金として現在支出している200億ドルを、低所得世帯を電力につなぐ投資に振り向けることから始められます。
援助機関にも、さらにできることがあります。 コフィー・アナン 氏とアフリカ進歩パネルは、貧困層にエネルギーを届ける革新的なビジネスモデルを支えるために必要なリスク保証、信用供与、その他の市場の仕組みへの資金提供を支援する 「世界接続基金」 の創設を呼びかけています。これ以上の高いリターンが見込める投資を考えるのは難しいでしょう。
適切な規制環境と十分な資金があれば、再生可能な低炭素技術は、携帯電話が通信分野にもたらした変革をエネルギー部門にもたらし得ます。アフリカでは、それは地域をより豊かで環境に優しくしながら、最も不利な立場にある人々に力を与えることを意味します。電力不足が成長、雇用創出、貧困削減を妨げている度合いを考えれば、時間を無駄にする余裕はありません。
本記事は Project Syndicateとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:ケビン・ワトキンスは、国際開発および人道問題を専門とする英国有数のシンクタンク、海外開発研究所(ODI)の所長です。
画像:若者が太陽光パネルでバッテリーを充電している。REUTERS/Andreea Campeanu。


