新興国の成長を加速させる方法

新興国の成長を加速させる方法
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新興国の成長は過去3年間に鈍化しており、トルコのイスタンブールで開かれたG20会合でも緊急の課題として議論されている。減速の一部は景気循環によるものだが、かなりの部分は潜在成長率の低迷を反映している。本稿では、新たな実証的証拠に基づき、意欲的な構造改革によって新興国の潜在成長率の減速を完全に相殺できると論じる。開かれた市場への障壁を取り除き、金融へのアクセスを改善する改革は、全要素生産性の伸びを回復させ、民間投資を促進するうえで重要な役割を果たす。

2008~09年の世界金融危機に先立つ時期、開発途上国では目覚ましい経済成長と貧困削減が見られた。しかし、2010年に力強い回復を遂げた後、中国、インド、ブラジルを含む新興国の成長は着実に鈍化している。開発途上国全体では、2010~2013年の一人当たりGDP成長率は年率4.6%で、危機前の時期を約2ポイント下回った。

新興国の成長鈍化には、主に二つの懸念がある。第一に、この減速は、いわゆる「中所得国の罠」にさらされていることを反映している可能性がある。この現象には、中所得水準で停滞し、先進国グループへ「卒業」できないリスクが伴う。第二に、銀行システムの脆弱性、高水準の債務、高い構造的失業率、その他の構造的なボトルネックにより、危機後の先進国の低成長が続くのではないかとの懸念がある。急成長する輸出市場と有利な交易条件に依存してきた多くの国が、同程度の外需による刺激を期待できなくなるため、これは構造的な成長鈍化のリスクをさらに高める可能性がある。

危機後の実績と成長における構造的ボトルネックの重要性

最近の 論文では、危機後の時期に構造的ボトルネックが新興国の成長をどの程度妨げてきたか、また適切な構造改革によってそれらを取り除けるかを評価する。先行研究よりも細分化した分析を行うため、開かれた市場への障壁 (貿易、外国直接投資、競争に対する障壁に反映される)、 事業運営への障壁、および 金融へのアクセスの容易さを測る指標を用いる。

実証研究では、G20の新興国メンバー全てを含む、上位中所得の新興国30カ国について、構造的ボトルネックの指数を作成した。これらの指数には、世界銀行の「ビジネス環境データベース」と世界経済フォーラムの「世界競争力報告書」の指標が含まれる。

分析では、全要素生産性(TFP)の伸びと、GDPに占める民間投資の割合に注目する。どちらも潜在成長率を左右する重要な要因であり、経済が構造転換を促し、資源をより生産性と付加価値の高い部門に配分する能力を反映している。TFPの伸びと民間投資について、2010~12年の危機後の傾向を、危機前の2003~07年と比較する。対象国の大多数では、危機後のTFPの伸びは危機前に比べて低調だった。これに対し、GDPに占める危機後の民間投資の割合は、かなり高い底堅さを示している。

前述の三つの複合指数で測定した成長に対する構造的ボトルネックが小さい新興国ほど、危機後のTFPの伸びと民間投資が強かったことを示す証拠がある。この点は、各国の2010~12年と2003~07年のTFP成長率の差を、成長に対する構造的ボトルネックを示す三つの総合指数それぞれの国別平均スコアに回帰させた分析によって確認される。GDPに占める民間投資の割合についても、危機後と危機前の差を用いた同様の回帰分析を行った。

分析の結果、次のことが分かった。

  • 金融への アクセスの改善、 開かれた市場への障壁の低下、そして 事業運営への障壁 の低下は、いずれも危機前と比べた危機後のTFP成長率の上昇と関連している。ただし、事業運営への障壁の影響は統計的に有意ではない。

  • 金融への アクセスの改善 は、民間投資の変化に有意なプラスの影響を与える。 開かれた市場への障壁 が低いことは、危機後の民間投資の増加と関連しているが、その影響は統計的に有意ではない。 事業運営への障壁が低いことは予想と逆の影響を及ぼすが、統計的に有意ではない。

危機後の各国におけるTFP成長率の差と、金融へのアクセスの容易さおよび開かれた市場への障壁を示す指数との有意な相関を図1に示す。危機後の各国の民間投資実績の差と、これらの構造的ボトルネック指数との相関は図2に示す。

図1:TFP成長率の変化(2010~2012年と2003~2007年の比較)と構造的ボトルネック指数の相関

金融へのアクセスの容易さ

開かれた市場への障壁

図2:民間投資の変化(2010~2012年と2003~2007年の比較)と構造的ボトルネック指数の相関

金融へのアクセスの容易さ

開かれた市場への障壁

開かれた市場への障壁が危機後のTFP成長率に及ぼす影響について、頑健な結果が得られた点は強調に値する。こうした障壁の削減は遅々として進まず、実際、いくつかの新興国では障壁がむしろ高まっている。ほぼ全てのG20加盟国が危機の発生以降、貿易を歪める措置を講じており、その程度には国によって差がある。危機後の時期には、複数のG20新興国が貿易と外国直接投資(FDI)への障壁を引き上げた。この分野でより意欲的な改革課題に取り組めば、TFPの伸びを高め、潜在成長率をより速く引き上げることに貢献できる。

分析結果は、金融へのアクセスの容易さと市場開放性の分野で政策枠組みを改善し、最も評価の高い新興国の水準に近づけることで、危機後の新興国における成長鈍化の構造的部分を相殺できる可能性を示している。実際、推定結果に基づくと、この二つの分野で各国のスコアを改善し、G20新興国のうち評価上位3カ国(メキシコ、サウジアラビア、南アフリカ)と下位3カ国(アルゼンチン、ブラジル、ロシア)の差を埋める構造改革を行えば、危機後の減速を完全に相殺するのに十分なほどTFPの伸びを高められる。さらに、同じスコア改善によって民間投資も増加し、GDP成長を一段と促進するとともに、新興国での雇用創出を後押しする。

本記事は、 世界銀行の「Let’s Talk Development」ブログとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Aristomene Varoudakisは現在、世界銀行チーフエコノミスト室の経済顧問。Zia Qureshiは現在、世界銀行上級副総裁兼チーフエコノミスト室の戦略・運営担当ディレクター。Jose Luis Diaz Sanchezは、世界銀行チーフエコノミスト室のエコノミスト。

画像:2012年5月11日、東京の証券会社の外で株価表示板を見る男性。REUTERS/Toru Hanai。

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