インドの福利厚生制度の財源調達方法を変えることが、同国の労働市場を改革するうえで最も大きな効果をもたらすだろう。企業が従業員を採用・解雇しやすくなるよう法律を変えることではない。
インドの労働法改革について考えるとき、人々は採用や解雇に関する法律、とりわけ労働争議法第5B章の改正を思い浮かべがちだ。
しかし、ほかにも多くの改革が考えられる。
中央政府の44の労働法を5つの分野に統合すること。
機能不全に陥った福利厚生制度を立て直すこと。
労働組合をより代表性の高いものにすること。
雇用主のコンプライアンスを滞りなく行えるようにすること。
また、最も大きな効果をもたらす労働法改革は、福利厚生制度の立て直しだと私は考える。この制度では、月給5,500ルピーの従業員の総賃金から義務的に差し引かれる額は45%である一方、月給55,000ルピーの従業員ではわずか5%だ。さらに問題なのは、低賃金から差し引かれるこの45%が、費用対効果の低いプログラムに充てられていることだ。インド従業員積立基金(EPFO)の1億口座のうち5,500万口座が休眠状態にある。加えて、EPFOの管理費用は440ベーシスポイントで、政府証券投資信託として世界で最も高額なものの一つとなっている。
さらに深刻なことに、雇用主によるEPFOへの拠出の大半は、現在、破綻状態にある従業員年金制度(EPS)に回されており、その80億ドルの赤字は給付を削減することで埋められている。さらに、従業員国家保険(ESI)の保険金請求比率はインドで最も低く、拠出金のうち給付として支払われるのはわずか49%だ。また、50億ドル相当の遊休金融資産を抱えている。
従業員が給与の受け取り方について3つの選択肢を持てるよう、私は次の改革を提案したい。
選択肢1:EPFOへの従業員拠出12%を支払うか、支払わないか
従業員拠出の12%は、貯蓄のない低賃金労働者にとって、負担できない給与の繰り延べだ。従業員は入社時にこの拠出を辞退するか、個人の国民年金制度(NPS)に支払うか、現状どおりEPFOに支払うかを選べるようにすべきだ。
選択肢2:雇用主拠出の12%をEPFOまたはNPSに支払う
現在、雇用主によるEPFOへの拠出の大半は従業員年金制度(EPS)に回されている。従業員は、EPSを選ぶか、雇用主拠出の全額を自身の国民年金制度の個人口座に振り向けるかを選べなければならない。選択肢3:医療保険料をESIまたは保険会社に支払う
従業員は、毎月の医療保険料をESIに支払うか、IRDAの規制を受ける任意の医療保険会社から保険契約を購入するかを選べるようにすべきだ。
インドの労働法が悪影響を及ぼしていることはよく知られている。同国では生産性や労働環境が低水準で、税収も低く、小規模な非公式企業が多数を占めている。実際、製造業が雇用に占める割合はわずか12%で、製造業の85%は従業員50人未満の企業によるものだ。
それでも、同国は正式な雇用の創出を妨げてきた規制上の「コレステロール」を、ようやく取り除き始めた。新政権はこの1年で、徒弟法を改正し、労働監督制度を刷新し、雇用主と従業員に固有の番号を付与し、コンプライアンス手続きをオンライン化しつつある。最も重要なのは、中央政府が州政府に対し、国の基準から外れた労働法を設けることを認めた点だ。これにより、ラジャスタン州に続いて、ほかの7州も改革を進めている。
しかし、政府が今実施できる改革のうち最も大きな効果をもたらすのは、福利厚生制度の規則を変えることだ。
この記事は、当初、 世界銀行の「Jobs and Development」ブログに掲載された。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しない。
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著者:Manish Sabharwalは、バンガロールを拠点とするTeamlease Servicesの会長。
画像:2015年1月8日、コルカタで道路建設現場に従事する女性労働者。REUTERS/Rupak De Chowdhuri。



