公共財政理論では、経済に対する公共部門の介入は主として、資源の効率的配分、富の平等な分配、景気循環を通じた経済活動の安定化という原則に動機づけられると論じられてきた(Musgrave 1959)。しかし、過去30年間に行われた研究は、政治的な配慮が、異なる地域への公共支出の配分に大きな影響を及ぼし、利益誘導型のばらまきを招くとともに、公共資源がより大きな社会的厚生を生み出す能力を損なってきたことを繰り返し示している(例:Besley and Coate 1998, Johnston 1977, Margolis 1968)。
本研究では、民主主義の回復(1974年11月17日)から2009年の経済危機勃発までの期間を対象に、ギリシャにおける選挙結果と地域別公共投資支出の関係を実証的に検証する。
なぜギリシャなのか?
政治的背景
ギリシャは、公共投資の政治化を研究するうえで非常に興味深い事例である。ポルトガルやスペインなど他の南欧諸国と同様、過去50年間に大規模な政治的・社会経済的変容を経験した。最も重要なものは、独裁制から民主制への移行と欧州連合への加盟である。1974年の独裁政権崩壊により第三ギリシャ共和国が誕生し、近代史における最も多元的で進歩的な時代の一つが始まった。ギリシャの政治情勢はまもなく二大政党制となった。右派の新民主主義党(ND、自由党としても知られる)と左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK、社会党としても知られる)が、分析対象期間全体(1974~2009年)を通じて交互に政権を担った。二大政党は有権者の圧倒的多数の支持を集め、ときには合計で投票総数の80%を超えた(Lyrintzis and Nikolakopoulos 2004)。第1党を優遇する選挙制度、すなわち勝利政党に議会の追加議席を与える「強化比例代表制」の導入は、安定多数をもたらして政治的安定を高めた一方で、汚職やパトロネージュの機会も数多く生み出した。安定政権を保証するために設計された制度は、国政選挙で第1党になるよう与党に誘因を与えた。2009年の危機勃発まで、ギリシャの選挙制度がもたらす結果は一党政権だけだったためである。
国会議員(MP)は非拘束名簿式で選出され、有権者は政党と候補者への選好を表明できた。定数300の議会では、151人の議員が過半数を構成した。議員は56の選挙区から選出された。56選挙区のうち49は県(NUTS 3の地理的レベル)と一致し、分析対象期間中に変更はなかった。選挙区ごとの議員数は人口に比例し、人口変化に応じて調整されることがあった。人口で最大の選挙区はアテネB区で、2004年選挙では42人の議員を選出した。小規模な8選挙区では、それぞれ議員を1人だけ選出した。
行政が高度に中央集権化され、議会での投票規律が厳格な国では、現職政権が公共投資の地理的配分に関する意思決定を常に独占していた。そのため、与党の議員はアテネにおける地域の政治的利害の主な伝達役を担った。本研究では、公共投資の地理的配分に関する決定において現職政権が果たす役割に特に注目した。
公共投資
ギリシャの公共投資の配分は高度に中央集権化されていた。公共投資支出総額のほぼ75%は国の省庁が管理していた。残る25%のうち、10%は地方(県)に移譲され、15%は自治体に移譲された。公共投資の地理的配分には特定の公式が用いられておらず、公共資金の地域配分は政治的な駆け引きに極めて左右されやすかった。
本分析では、地域別に特定できる公共投資の割合のみを対象とする。これは平均で総額の55%を占め、ギリシャに対するEU構造支援、EU共同出資事業への国内拠出、さらに純粋に国益にかなう事業とその資金を含む(Rodríguez-Pose et al. 2012)。公共投資の地域間配分には大きな偏りがあった(図1)。資金の地域配分は地域経済の発展促進を目的としていたが、この目的は政治の影響でゆがめられた可能性がある。資金配分に関する中央政府の決定は、程度の差こそあれ、社会経済的基準よりも政治的基準に従っていた可能性がある。そのため公共投資は、利益誘導型のばらまきと政治的影響力を捉えうる。いずれも、公共財および集団で消費される財・サービスの供給に関わるからである。利益誘導型のばらまきは、一部の種類の投資(例:道路インフラの建設)に、他の種類(例:社会福祉関連支出)よりも大きな影響を与えた可能性がある。それでも、ギリシャの支出制度全体が政治的操作の対象だったというのが一般的な見方である。
図1. 1人当たり公共投資支出と1人当たりGDPの地域別分布

調査結果
本分析の結果は、ギリシャにおける公共投資の地理的配分で政治が重要な役割を果たしてきたことを示している。危機勃発前の34年間、公共支出は選挙結果と密接に連動していた。ギリシャの二大政党は政権に就くと、「浮動票」モデルよりも「忠実な有権者」モデルに従い、将来の選挙でより多くの票や議席をもたらす可能性のある接戦地域を優遇するのではなく、自党を政権に復帰させた地域に報いた。政権に就いた二大政党は、a)最も多くの票と議員を送り出し、b)主要野党との得票差が最も大きかった地域に資金を注ぎ込んだ。対照的に、野党が強い地域(つまり、与党にとって「勝ち目のない」地域)や、接戦地域(つまり「僅差」または「浮動票」の地域)が利益誘導型の政治から何らかの恩恵を受けたという証拠はない。全般に、利益誘導型投資は二大政党の地盤が強く、しばしば選出議員数を独占していた地域に行き着いた。1人区はこの制度の主な受益者であり、複数議席の地域と比べて、1人当たり公共投資の配分が有意に高かった。最後に、現職政権が再選された後には、利益誘導型のばらまきが強まった。国政選挙後に政権の政治的立場が変わると、公共投資の政治的配分は減少した。
総じて、本分析は、ギリシャにおける1人当たり公共投資の地理的配分にとって政治が重要であることを示している。公共投資が国内に広がる地域間格差の縮小を目的とする基準に従っていたことを示す証拠は乏しい一方、政治的介入や利益誘導型のばらまきは多く見られた。比較的弱い制度のもとで強い政治的二極化が存在し、政治的安定の確保を目的とする選挙制度が政治的な見返りをもたらした結果、国内の二大政党には、自党を政権に復帰させた地域に報いる大きな余地が残された。
本記事は、 VoxEUとの共同で掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:Yannis Psycharisは、パンテイオン社会政治科学大学の地域経済開発学科に所属する地域経済分析教授です。Andrés Rodríguez-Poseは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済地理学教授であり、CEPRのリサーチフェローです。Vassilis Tseliosは、テッサリア大学の計画・地域開発学科に所属する地域経済学助教です。
画像:パルテノン神殿の内部に立つ修復専門家。REUTERS/John Kolesidis


