2014年11月10日、金融安定理事会(FSB)は、「破綻処理におけるグローバルなシステム上重要な銀行の損失吸収能力の十分性」に関する協議文書を公表した。プレスリリースには次のように記されている。
「金融安定理事会(FSB)は本日、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)の損失吸収能力および資本再構築能力の十分性に関する、一連の原則と詳細なタームシートから成る政策提案を、一般協議に付した。
この提案は、2013年サンクトペテルブルク・サミットでG20首脳が示した、2014年末までに提案を策定するという要請に応えるものである。提案は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)と協議のうえFSBが策定したもので、最終決定されれば、「総損失吸収力」(TLAC)に関する新たな最低基準となる。」
この取り組みの目的は、破綻しつつあるG-SIBを処理する際に、不可欠な銀行サービスを停止・清算したり、救済支援のために納税者に負担を求めたりせずに済むようにすることだ。主として、G-SIBを持株会社(hold-co)と事業子会社(op-co。複数の場合もある)に分けることで、これを実現しようとしている。次にhold-coは、十分な損失吸収資本(LAC)を保有するよう求められる。そうすれば、グループ内のどこかで重大な損失が発生した場合、hold-coの外部LACを減額し、必要であればhold-coを清算して、こうして解放された資本を、例えば内部LACを通じて主要な事業子会社に移転し、op-coの資本を再構築できる。考え方としては、資本再構築後のop-coが納税者の支援なしに事業を続け、必要な銀行機能を提供するというものだ。代わりに、hold-coで適格な外部T-LACを提供している株主資本保有者とベイルイン可能な債権者に損失を負担させ、資本再構築を行う。
T-LACに関するこの協議文書では、こうした新たな手続きのもとで破綻銀行を処理するまでの過程が明確に説明されている。これは確かに巧妙で繊細な考え方だ。しかし、(op-coの)資本再構築が実施された後に何が起こり得るかについては、何も述べられていない。チェスのように何手も続くゲームでは、何手も先を読む訓練を積んだ者が熟練者である。ベイルインの過程では、(主要な)事業子会社(op-co)が事業を続けることになっており、これは複数段階にわたる取り組みのはずだ。それにもかかわらず、この文書はその後の段階や、そこで生じ得る問題について何も述べていない。最初の破綻処理が発動した後に何が起きるのか、いくつか疑問を提起したい。
流動性はどうなるのか?
協議文書の主眼は、債権者のベイルインによって十分な資本を確保し、op-coの事業継続を支えることにある。しかし、十分な流動性も確保できるようにすることについては一言も触れられていない。流動性が十分に確保される保証はまったくない。
破綻処理は必ずニュースになる。hold-coが清算されたり、大幅な減額を受けたりすれば、銀行グループ全体の健全性は間違いなく損なわれている。銀行の名称と評判も疑問視されるだろう。情報を持つ投資家も持たない投資家も、(ノーザン・ロックの場合と同様に)当初は逃げ出す可能性が高い。事前に、そうならないと保証できる者はいない。関連する中央銀行が最後の貸し手(LOLR)として十分な支援を行うと約束する形で、この事態に対する保護策を設けなければ、取り組み全体が最初の難関で壊滅的な失敗に終わる危険にさらされる。
op-coは設計上、支払い能力があるのだから、こうしたLOLR支援を妨げる理念上の障壁はないはずだ。それでも、ドッド=フランク法(またはその他の制約)によって、米国ではLOLR支援が制限される可能性があるとの指摘がある。もしそうなら(そうでないことを願うが)、このアプローチ全体が危うくなりかねない。そうでないのであれば、最終文書には「このように明らかに支払い能力のあるop-coについては、その中央銀行が、結果として生じる一時的な流動性需要に応じる用意があることは間違いない」といった一文を加える必要がある。いずれにせよ、FSBはこの問題を避けて通れない。流動性供給について公然と議論しなければならない。
回復
先に述べたように、hold-coが清算または大幅な減額を受ければ、銀行グループ全体の評価と健全性は大きく損なわれる。op-coは自らの資本を十分に確保しているだろうが、もはやその上に緩衝材となるhold-coは存在しない。そのためop-coは、周囲の競合銀行すべてと比べて大幅に弱体化する。op-co単独では、他のすべての銀行に必要とされるT-LACの支援をもはや受けられない。すると何が起きるのか?
おそらく、標準的な要件を満たすhold-coを完全に再構築できるまで、op-coは配当や自社株買いを行えないのではないか。これが意図されているのだろうか。そうなら、そのことを文書に明記すべきではないか。op-coのその後の業務には、どのような追加的制約が想定されているのか。制約や、破綻処理後の事業体がどのような条件で運営されるかが、全面的かつ透明性をもって説明されない限り、op-co(および/または残存する、あるいは新設されるhold-co)が新たな株式や債券を発行するのはほとんど不可能だろう。それにもかかわらず、現行の協議文書案は最初の破綻処理までをかなり詳しく説明する一方、その後の暮らしについては完全に沈黙している。その後の姿はどのようなものなのか?
評価
破綻しつつある銀行が破綻処理に入ると、必要な債権者のヘアカット額を見積もり、op-coの資本を十分に再構築するため、詳細な調査を行う監査人が派遣されるのは間違いない。同じことを二度行う余地はほとんどない。何より、最初の減額が確定すれば、こうした資産の取引が再開するからだ。この点や、破綻処理が市場価格に与える影響の不確実性などの理由から、私自身は、詳細調査を行う監査人はこうした評価で厳格な慎重さを優先し、後になって必要以上だったと判明するような大きめのヘアカットを提案すると予想している。
もちろんそうならず、監査人が必要なヘアカットを過小評価する可能性もある。最初の破綻処理が、システミックかつ大規模な金融危機の始まりとなる場合には、とりわけその可能性が高いだろう。その後、op-coが収益性の回復に失敗し、さらなる資本再構築を必要としたらどうなるのか。ユーロ圏では、銀行同盟の枠組みのもとで、単一破綻処理メカニズム(SRM)と欧州安定メカニズム(ESM)がこの可能性に対処する。同様の世界的な最後の安全網が必要ではないか。
より可能性の高い結果、すなわち、提案されたヘアカットが最終的に必要と判明する水準を大きく上回るケースに戻ろう。そうなれば当局は「債権者を破綻処理がなかった場合より不利にしない」という原則のもとで訴訟を起こされるのではないか。この可能性は、ベイルインされた債権者に、回復による上振れ分を受け取るワラントを付与することで軽減できる。しかし、上振れ回復分が過去の債権者への償還に回るほど、op-co(または再構築されたhold-co)の株式を新たな買い手が魅力的に感じなくなる。このバランスはどのように設定されるべきか。こうしたワラントはどのような形式と詳細を備えるのか。
景気循環増幅性と伝染?
先に論じたように、詳細調査を行う監査人の評価は厳格な側に偏り、ヘアカットは破綻処理前の直近の決算に基づく従来の予想を上回るだろう。市場は衝撃を受ける。ベイルイン可能な債務は、ほぼ定義上、これまで楽観的な投資家(および情報に乏しい投資家)が購入してきたものであり、その楽観は突然、誤りだったように見えるだろう。ニュースになる最初の破綻処理の後、こうしたベイルイン可能な債務の市場は一定期間、完全に干上がり、その後、大幅に高い利回り(銀行のCEOにとって魅力のない水準)で再開する可能性が十分にある。ベイルイン可能な債務の借り換え時期が来ると、何が起きるのか。T-LAC不足に伴うペナルティを避けるため、他のすべての銀行が急速にレバレッジを縮小する誘因が生じないだろうか。あらゆる規制には景気循環を増幅する傾向がある。T-LACのアプローチが景気循環を強め、金融セクターをシステミック危機にさらに陥りやすくする、もう一つの例ではないだろうか。
この危険を和らげる要素として、(適格な外部)T-LACの1年基準(Box 11、16ページ)があるが、その効果は限定的だ。そこには次のように記されている。
「適格な外部TLACは、残存期間が少なくとも1年以上なければならない。
さらに、適切な当局は、G-SIBの資本市場へのアクセスが一時的に損なわれた場合にもTLACの水準を維持できるよう、G-SIBのTLAC負債の満期構成が十分であることを確保すべきである。」
これは、借り換えが不可能な期間(1年未満と想定される)に別の銀行が破綻処理を余儀なくされた場合でも、op-coの資本を再構築するのに十分なT-LACを保有しているという意味だ。しかし、借り換えが必要となるのと同じだけのベイルイン可能債務が1年の基準を通過するため、測定されるT-LACはそれでも減少し続ける。
この規制手続きは、他の大半の規制と同様、伝染と景気循環増幅性を強める可能性が高い。これをどう防げるだろうか。適格な外部T-LACの満期制限を変更する権限を中央銀行に与えてはどうか。そうすれば、システミック危機時(できれば裁量だけでなく、あらかじめ定めた指標に基づいて危機を認定した場合)には、すべての銀行が、最終満期までのベイルイン可能債務をすべてT-LAC要件に算入できる。T-LACの比率を状況に応じて変動させることは可能だろうか、あるいはそうすべきだろうか。T-LACの景気循環増幅の可能性をどう抑えるか、また、この取り組みが金融システムのシステミックな安定性を改善するどころか悪化させる可能性について、何らかの検討がなされているのだろうか。
こうした検討がなされていることを願うが、協議文書にはその兆しがない。文書は最初の破綻処理の時点までを扱う一方、その後に何が起きるかについては完全に沈黙している。最初の一手を正しく打つことは重要だが、ゲームのその後の段階で起こりそうな展開を予測できなければ、次の対局に敗れ、金融システムと経済もまた敗れることになるだろう。
この記事は、 VoxEUとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Charles Goodhartは、2002年までロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのNorman Sosnow銀行・金融学教授を務め、現在は同校金融市場グループの名誉教授である。
画像:2010年10月21日、ロンドンの金融街カナリー・ワーフで、Bank Streetの標識と高層オフィスビルが写っている。REUTERS/Luke MacGregor。


