企業の専門化が生産性を高める仕組み

企業の専門化が生産性を高める仕組み
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ホンダの自動車1台は、何百もの異なる工場や企業で生産された2万〜3万個の部品でできている。自動車生産における完全な自給自足という夢を、巨大なリバー・ルージュ工場で体現したヘンリー・フォードの型破りな構想は、経済史の流れにそぐわないことが明らかになった。それに対して、過去数世紀にわたる膨大な生産性向上は、専門化した中間投入財を複雑なネットワークを通じて互いに取引する工場間の広範な分業に支えられてきた。こうした工場と中間財の流れのネットワークが国によってどのように、またなぜ異なるのか、そして経済発展とどのように関係しているのかは、いまだ解明されていない重要な問いである。

たとえばHirschman(1958)に代表される初期の研究は、こうした産業連関が経済発展に不可欠だと考え、貧しい国々で強固な投入財市場の形成を促す方法や、連関が最も強い産業に投資を振り向ける方法に注目した。しかし、これらの考えを検証するデータや手法が利用可能になる前に、中間財をまったく捨象した一部門モデルが成長研究の標準的な枠組みとなった。Ciccone(2002)、Acemogluほか(2007)、Jones(2011)らの近年の研究は、投入財市場の歪みが、原理的には国ごとの生産性格差の大きな部分を説明し得ることを示しているが、この分野の研究はおおむね理論にとどまってきた。Bartelme and Gorodnichenko(2015)では、こうした近年の研究を基礎に、産業連関と総生産性の実証的な関係を分析する。

産業連関の働き

まず、Jones(2011)の考え方に沿った簡潔な新古典派の枠組みを構築し、観察される経済の投入産出構造を、技術的制約に加えて投入財市場と産出物市場におけるさまざまな歪みと結び付ける。こうした歪みは中間投入財を利用する利得を損ない、産業連関を弱め、測定された生産性や、開発・福祉に関するその他の主要指標を低下させる。この枠組みを用いて、投入産出表に基づく計量経済学的な仕様と歪みの要約指標を導き出すとともに、識別上の課題とその解決策を明らかにする。

この枠組みの中心的な要素は投入産出表である。大規模なデータ構築作業を通じ、発展段階の異なる(ウガンダから米国まで)、また異なる時期(1950年代から現在まで)の106カ国を対象とする、独自の投入産出表データベースを作成した。たとえば、1955年のペルー、1960年のバングラデシュ、1965年のガーナの投入産出表など、希少な資料も収録している。広範な時系列・横断面の対象範囲は、産業連関と発展の体系的な関係を識別するうえで不可欠である。これらの投入産出表は、各国の統計局や中央銀行、さまざまな国際統計機関(OECD、Eurostat、国連など)、および学術・商業機関の取り組み(Global Trade Analysis Project、GTAPなど)から入手した。

  • 産業連関の強さを投入産出表から得られる平均産出乗数(AOM)で測ると、測定された労働者1人当たり産出量および全要素生産性と強く正の相関があることを示す(図1参照)。

産業連関は定量的に重要である。平均産出乗数が標準偏差1つ分上昇すると、仕様に応じて労働者1人当たり産出量が15〜35%増加することと関連しており、その大部分は生産要素の蓄積ではなく生産性の向上による。さまざまな頑健性検証を行い、この結果を検証した。追加の統制変数やサブサンプルを検討し、外れ値に頑健な手法を用い、データのパネル構造を活用し、非線形効果を認めるとともに、産業連関の別の指標も利用した。推定された関係の強さには多少のばらつきがあるものの、定性的・定量的な結果は、これらの検証を経てもおおむね維持される。こうした頑健性分析の一環として、産業連関と生産性を実証的に結び付けようとした先行研究がなぜ成功しなかったのかについても、新たな知見を示す。

図1.平均産出乗数(AOM)と労働者1人当たり産出量

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注:AOMは、投入産出(IO)行列のレオンチェフ逆行列を、は合計ベクトルを、は産業数を表す場合に、ここで算出される。IOデータはGTAP7による。

国際比較回帰には、欠落変数や測定上の問題に関する疑念がつきまとうが、モデルを較正した版と、より構造的な歪みの識別手法を用いて、知見を評価できる。投入産出データと2つの異なる識別仮定を用いて、各国の産業レベルの歪みを抽出し、次にそれらの歪みを取り除いた場合の生産性向上を算出する。

  • 歪みを取り除けば、サンプルの中央値に当たる国では約6〜10%、75パーセンタイルの国では13〜20%の利得が得られ、複数の貧しい国ではさらに大きくなることが分かった(図2)。

こうした利得の大部分は農業における中間投入財の歪みを取り除くことで生じ、より小さな割合がサービス業から、最も小さな割合が製造業から生じる。この結果は、全要素生産性(TFP)の国際的なばらつきが農業で最も大きいという事実と整合的である(Restuccia and Rogerson 2008、Gollinほか 2012)。

図2.歪みを取り除くことによる利得

注:歪みを取り除くことによる利得は、モデルと最も豊かな20経済圏における投入の使用パターンを用いて、中所得国および貧しい国の技術を予測し、歪みを識別することで算出している。外れ値に対する頑健性を確保するため、回帰直線は最小中央値二乗法で描いた。第一次産業には農業、鉱業、公益事業、建設業が含まれる。

これらの利得は、国レベルの回帰分析で見いだした定量的な関係とおおむね一致する。モデルが示唆するTFPを平均産出乗数に回帰させると、データで得たものに近い傾き係数が推定される。結果は、中間財における歪みが国際的な生産性のばらつきのうち、控えめながらも無視できない部分を説明するという仮説と、データが定性的にも定量的にも整合することを示している。この知見は、経済発展の過程を研究する際に中間財の産業連関を無視できるという見方に異議を唱える。一方、貧しい国の低生産性の主因が中間財市場の歪みだという見方を、われわれの結果は支持しない。

結びに

有名な例として、アダム・スミスはピン工場を用いて専門化の利得を示した。彼が注目したのは工場内の専門化による利得だったが、その後の経済発展によって、利得の範囲が工場や企業の境界をはるかに越えて広がることが明らかになった。たとえば北米だけでも、ホンダには600社を超える直接取引先のネットワークがある。フォードのリバー・ルージュ工場の興隆と衰退に表れる自動車産業の歴史は、成功する企業が世界中に散在するサプライヤーのネットワークにますます依存していることを示している。現代経済に遍在する専門化は、まさに驚異であり、かのスコットランドの著名な経済学者の想像をはるかに超えているに違いない。

ピン工場における分業のような極めてミクロな水準や、国際貿易のような極めてマクロな水準での専門化については多くの実証研究が行われてきた一方、国内の企業間・産業間の連関、すなわち中間の水準はあまり研究されてこなかった。この中間水準の分析は理論的・定性的なものが大半だが、その予測は明確である。これらの連関は経済発展に重要な役割を果たし、生産性向上の重要な源泉となる可能性が高い。幅広い国と時期を対象とする投入産出表データベースを構築し、こうした予測と整合する証拠を示す。すなわち、産業連関が強い国ほど生産性が高い。この関係は定量的に強く、頑健である。また、産業連関の強さに対する生産性の実証的な感応度が、較正した多部門新古典派モデルの結果と整合することも示す。

もちろん、国際比較回帰における交絡要因やモデルの誤設定を完全に排除することはできない。したがって、われわれの知見は企業間・産業間の連関の働きについて、さらなる研究が必要であることを示している。経済学では、こうした連関や専門化の重要性に取り組むさまざまな研究が行われてきた。しかし、マクロ経済学的な視点に立つ統一的な枠組みは欠けている。今後の研究がこうした課題に取り組むことを期待したい。

参考文献

Acemoglu, D, P Antras, and E Helpman (2007), “Contracts and technology adoption,” The American Economic Review, 97 (3), 916–943.

Bartelme, D, and Y Gorodnichenko (2015), “Linkages and Economic Development”, NBER Working Paper No. 21251.

Ciccone, A (2002), “Input chains and industrialization,” Review of Economic Studies, 2002, 69 (3), 565-587.

Gollin, D, D Lagakos, and M E Waugh (2013), “The Agricultural Productivity Gap in Developing Countries”, The Quarterly Journal of Economics, December.

Hirschman, A O (1958), The strategy of economic development, Yale University Press, 1958.

Jones, C I (2011), “Intermediate Goods and Weak Links in the Theory of Economic Development,”American Economic Journal: Macroeconomics, 3 (2), 1–28.

Restuccia, D and R Rogerson (2008), “Policy distortions and aggregate productivity with heterogeneous establishments,” Review of Economic Dynamics, 11 (4), 707–720.

本記事は VoxEUとの共同で掲載しています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Dominick Bartelmeはミシガン大学の経済学助教。Yuriy Gorodnichenkoはカリフォルニア大学バークレー校経済学部の准教授。

画像:製造工場の風景。REUTERS

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