6月に開催が迫る世界的な「貿易のための援助」レビューを前に、国際貿易では静かな革命が進んでいる。世界中の個人や中小企業が、オンラインで商品やサービスを販売し、国境を越えた取引にますます参加している。実際、 データによると 、どの国でも電子商取引を行う企業はほぼすべて輸出もしており、実店舗で販売する企業のうち輸出する割合が小さいこととは対照的だ。電子商取引は中小企業に輸出の大きな機会をもたらす一方、世界の多くの地域と大半の企業は依然としてウェブから切り離されている。さらに、接続環境がかなり整っている数十の新興市場でも、接続を輸出や経済的・社会的利益につなげることに 苦労している 。
世界中で電子商取引の普及を加速するには、新たに一貫性のある「Aid for eTrade(電子貿易支援)」イニシアチブが必要だ。 私がCSISの政策論文で詳述した この取り組みは、eBayの支援を受けて作成したもので、「貿易のための援助」イニシアチブと密接に関連する。同イニシアチブは過去10年間に、主としてインフラや農業などの生産部門を整備するため、開発途上国に二国間・多国間の貿易関連支援として2,000億米ドル超を供与してきた。その効果は現れている。 援助総額が倍増するごとに 開発途上国の輸出は5%増加し、貿易円滑化への援助が倍増するごとに、輸出は10%増加する。
開発途上国の中小企業の輸出と起業を促進し、輸出の多様化を後押しする万能薬が一つあるとすれば、それは電子商取引だ。例えばチリでは、 eBayで販売する企業の100%が輸出も行っている (平均して28の異なる市場へ)。一方、オフラインで販売するチリ企業で輸出しているのは18%で、通常は1~2市場にとどまる。他のすべての先進市場・新興市場でも、データはほぼ同じだ。オンライン販売者は全社またはほぼ全社が輸出し、多数の市場に輸出する一方、オフライン販売者で輸出する企業は少なく、輸出先もわずか数か国に限られる。
オンライン販売は中小企業に大きな利益をもたらす。 ボストン・コンサルティング・グループは11か国の中小企業3,250社を調査し、ウェブを積極的に活用する企業はより広い市場にアクセスでき、製品やサービスを自社の地域外で販売する可能性が約50%高いと明らかにした。また、より遠方から製品やサービスを調達する可能性も63%高い。言い換えれば、ウェブは最良の条件を探して比較検討する手段となる。
電子商取引は、何世紀にもわたって遠く離れた買い手と売り手の間の認知、信頼、取引を妨げてきた地理的距離を無意味にする。オンライン取引を行う何千もの中小企業や起業家が、世界貿易をますますボトムアップで生み出している一方、世界の多くの地域はまだウェブに接続されていない。接続環境が比較的整った新興国や移行経済国の中にも、ウェブを十分に活用できず、先進国がインターネットから得てきた社会的・経済的利益に後れを取っている国がある。さらに、デジタル保護主義、検閲、不十分なオンライン決済システム、時代遅れの通関手続きも、電子商取引の普及を妨げている。
こうした課題を克服し、新興国・開発途上国のデジタル時代への移行を加速するには、新たな投資と賢明な技術支援が必要だ。こうした取り組みは、新しく一貫性のある「Aid for eTrade(電子貿易支援)」イニシアチブの下にまとめるのが有効だろう。同イニシアチブは、2016~2020年に開発途上国および新興国で電子商取引関連投資1,000億米ドルを動員する、官民一体の取り組みであるべきだ。
「貿易のための援助」の年間資金は2005年以降80%増加したが、IT関連投資は総額のわずか1.2%を占めるにすぎない。オンライン貿易が持つ触媒としての可能性を考えれば、電子商取引を促進する投資は控えめな規模でも大きな利益をもたらし得る。しかし、独立したイニシアチブがなければ、「Aid for eTrade」は「貿易のための援助」が従来重視してきた分野の陰に隠れる恐れがある。
「Aid for eTrade」を始めるタイミングは非常に良い。メガ地域FTAの勢いに乗ることができ、援助受入国と主要援助国で構成される環太平洋パートナーシップ(TPP)の枠組みで試験導入できる。または、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)で共同の試験的取り組みとして実施し、これまでウェブから得られた利益が限られている東欧諸国の経済を後押しすることもできる。
援助国はすぐに利益を得られる。電子商取引の利用拡大により、援助国の中小企業が輸出できる、開発途上国の巨大な消費者市場が開かれる。およそ40億人はまだインターネットに接続しておらず、さらに多くの人々がウェブを断続的にしか利用していない。データ・ナショナリズム、サーバーの国内設置を強制する慣行、サービス貿易における保護主義など、今日の厄介な貿易障壁の撤廃を条件とすれば、「Aid for eTrade」は援助国にとっていっそう魅力的なものとなるだろう。
民間部門の有力な連合も「Aid for eTrade」を支持するだろう。GoogleやFacebookなどの企業は、地球上でウェブを普及させるための建設的なアイデアについて公に議論し、 大規模な投資を行ってきた 。電子商取引プラットフォーム、クラウドコンピューティングサービス、ソーシャルメディア企業、金融サービス企業など、実に多くの企業が、おそらく拠出金や現物拠出を伴って、「Aid for eTrade」イニシアチブを支援することは間違いない。
本記事は、 e15イニシアチブとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:Kati SuominenはTradeUp Capital Fundの創設者兼CEO。
画像:ワルシャワでコンピューターのキーボードを打つ男性。REUTERS/Kacper Pempel/Files


