ベトナムで貧しいとは、どういう意味でしょうか。1980年代後半にハノイで育った私の周囲には、貧困があふれていました。当時、人口の大半は国際貧困ライン(1日1.25ドル)を下回る暮らしをしていました。生活水準調査がなく、貧困を測定できなかったため、貧しいとはどういうことなのか明確に示すものはありませんでした。当時、裕福な人とはバイクかテレビを持っている人で、貧しい人とは路上で物乞いをする人、または食べる米が足りない人でした。1992年と1993年に実施された最初期の調査では、国際貧困ラインによると人口の約64%が貧困層でした。20年後、同じ基準で貧困層とみなされた人は3%未満となり、飢餓も撲滅されました。
ベトナムの貧困測定は、アプローチが増えたことで複雑化し、専門家でさえ混乱することがあります。最近刊行されたワーキングペーパー「ベトナムの貧困測定を解き明かす」では、一般の人々に向けて、ベトナムにおける貧困測定の課題を概説しています。これは、進行中の研究成果を共有し、開発課題に関する意見交換を促すために定期的に刊行される「ベトナム開発ディスカッション・ペーパー・シリーズ」の一環です。
ベトナムでは、貧困測定に主に2つのアプローチが用いられています。1つ目は、労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)が、国家貧困対策プログラムの対象者を決定するための分類を作成するとともに、短期的な貧困状況をモニタリングするために用いているものです。別のアプローチは、主に長期的な貧困の変化を調べる目的で、統計総局と世界銀行(GSO-WB)が用いています。貧困の変化をモニタリングする方法と政府プログラムの対象者を選定する方法に別々のアプローチを用いることは、世界各地で一般的に行われています。

2つのアプローチはいくつかの点で異なります。まず、MOLISAは所得を 福祉指標 として用いるのに対し、GSO-WBは消費を用います。次の段階では、どちらのアプローチも貧困ラインを定めるために「基本的ニーズの費用」方式を用います。この方式では、健康を保つのに十分とみなされる最低限のカロリー必要量を基準とします。第3に、GSO-WBの貧困ラインによる貧困指標は家計調査データを用いて作成されますが、MOLISAの貧困指標は5年ごとに実施される貧困に関する全国国勢調査に基づいています。国勢調査が行われない年には、MOLISAは村単位の協議、すなわち、村で誰が貧しいか、そうでないかを投票で決める会合を通じて貧困者リストを更新します。
以下の図は、最も広く引用される貧困測定方法を用いて、時系列の推移を示しています。どの指標で見ても、ベトナムでは貧困が急速に減少したことが分かります。

今後を展望すると、
ベトナムの貧困測定は、20年間にわたる急速な貧困削減がもたらした、喜ばしい課題に直面してきました。貧困が継続的に減少したことで、適切な指標の選択を見直す必要が生じています。今後を展望すると、大まかな予測では、すでに国内で無視できるほどになっている1日1.25ドルの貧困率はゼロに近づくでしょう。同様に、1日2ドルの貧困指標も、近いうちにベトナムではほとんど意味をなさなくなる可能性があります。この予測シナリオでは、GSO-WBの貧困ラインによる全体的な貧困率は、2020年までに8%に低下します。
貧困のモニタリングには、GSO-WBのアプローチを今後何年も利用できます。しかし、いずれこの指標による貧困率が極めて低い水準に達し、ベトナムの繁栄の高まりとベトナム国民のより大きな願いを反映するため、再びアプローチを見直す必要が生じるでしょう。
この記事は、当初、 世界銀行の「東アジア・太平洋地域の台頭」ブログに掲載されました。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
アジェンダの最新情報を得るには、 週刊ニュースレターにご登録ください。
著者:リン・ホアン・ヴーは世界銀行ハノイ事務所のエコノミストで、2012年4月から貧困問題に取り組んでいます。
画像:ハノイ郊外の未舗装路を運ばれる、自転車の上に積み重ねられた52個の段ボール箱。ロイター。

