700年の歴史を持つ技術が生産性を高め、人々の暮らしを変える方法

Factory workers in India are seen working at sewing machines.
Sometimes the most impactful innovation is to fully utilize technology we already have.Image: Priyanka Mukherjee/VisionSpring
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  • 世界の支出がAIに大きく注がれるなか、シンプルな眼鏡が労働者の生産性をすぐに高める可能性がある。

  • 新たな研究により、近くを見る作業に従事する労働者に老眼鏡を提供すると、生産量が増え、コストのかかるミスが減ることが示された。

  • 従業員1人あたり10ドル未満の投資で大きな経済効果が得られ、労働者の生活の質も大幅に向上する。

世界各地の役員会や政府では、人工知能(AI)がいかに生産性を革新し、経済成長を促進できるかという議論が中心となっている。AIを活用して世界各国の成長を促す方法に、多くの時間と資金が投じられている。最近の数字によると、2026年には世界のAI支出が2.5兆ドルに達する見込みだ。

AIが間違いなく次のフロンティアである一方、生産性向上を目指す企業は、既存技術を最大限に活用しているか確かめるとよい。700年の歴史を持つ技術である眼鏡が、AIへの支出のごく一部で、すぐに生産性を高め、人々の暮らしを改善できることを示す証拠が増えている。

工場労働者から農業従事者まで、近くを見る作業に頼る産業にとって、とりわけ低所得国では、これは大きな機会となる。労働者1人あたりわずか数ドルで、苦境にある産業を後押しし、何百万人もの暮らしを改善できる。

眼鏡が経済を押し上げる仕組み

新たな研究がBritish Journal of Ophthalmologyに掲載され、老眼(加齢による近見視力の低下)がある縫製機械作業者に眼鏡を提供すると、衣服をより速く、より少ないミスで仕上げられることが示された。その結果、材料の無駄が減り、生産性は6%向上した。

これほどの生産性向上が実現すれば、世界の繊維・衣料産業の年間生産額は270億ドル増えることになる。

無作為化比較試験「PROSPER II」は、工場で実施された初の試験であり、縫製機械オペレーターの4人に1人(27%)が近見視力の低下を抱えながら、眼鏡を持っていないことを明らかにした。

この研究がとりわけ説得力を持つのは、非常に費用対効果が高い点だ。視力検査、眼鏡の提供、継続的な着用を支援する取り組みを含む介入全体の費用は、労働者1人あたり10ドル未満。3か月間の研究期間だけで、この控えめな投資により、支出1ドルにつき3.37ドルのリターン、すなわち337%の投資収益率(ROI)が得られた。

さらに、PROSPER IIは、視力矯正が経済面と健康面の成果を高めるだけでなく、持続可能な開発を支えることを示す証拠の積み重ねに加わるものだ。

近くを見るための眼鏡の効果が示されているのは、工場だけではない。インド・アッサム州の茶園労働者の生産性は22%向上した。眼鏡が提供された結果だ。また、バングラデシュ農村部で行われた別の最近の研究では、老眼鏡によって、さまざまな職業に就く低所得地域の人々の収入が33%増加したことが分かった。この研究では、眼鏡が受け取った人の生活の質に与える影響も測定され、有意な効果が確認された。自立しているという感覚が高まり、日常の作業がより楽になった。

証拠は明らかだ。眼鏡による生産性向上は、明瞭な視力を必要とするあらゆる仕事に応用できる。工場での作業、茶摘み、カカオ栽培、手工芸品の制作、画面を使う仕事などが含まれる。

経済的に不可欠な取り組み

過去10年にわたり、The Chen Yet Sen Family FoundationはVisionSpringなどの非営利団体と協力し、眼鏡がもたらす経済効果の証拠を蓄積するため、視力ケア分野全体で取り組んできた。こうした証拠がそろい、眼鏡によって幅広い産業や職種で人々の仕事の質が確実に高まることが明らかになった今、政府と企業はこの取り組みにふさわしい注目を向けるべきだ。世界では現在、回避可能な視力低下を抱えて暮らす人が推定11億人おり、その結果、世界全体で年間推定4,470億ドルの生産性損失が生じている。

企業が自社と従業員にもたらされる潜在的な恩恵に目を向け、組織全体に視力矯正を広げてくれることを期待したい。インド最大の製造企業で、工場を研究に提供してPROSPER II試験に参加したShahi Exportsは、その効果を確信している。同社は、工場網全体で働く10万人全員を対象に、無料の視力検査プログラムを実施することを約束した工場の一つだ。しかし、この機会は工場所有者だけのものではない。製品を調達するグローバルブランドも、サプライヤーと協力して、労働者の暮らしを改善すると同時に工場を支援する取り組みを実施できる。

インドのShahi Exportsの縫製工場で、労働者が初めて新しい眼鏡をかける。Image: Priyanka Mukherjee/VisionSpring

政府にも、現実的な経済機会がある。バングラデシュのような国では、衣料産業は経済にとって極めて重要で、輸出収入の80%以上を占める。この産業は関税、高いエネルギー価格、激しい競争にさらされ、その結果、工場の閉鎖が続いている。政府は視力矯正を双方に利益をもたらす取り組みと捉えるべきだ。職場の福利厚生として眼科ケアを奨励し、眼鏡を提供するプログラムを実施すれば、労働省や各国政府は国民の暮らしを改善し、経済の生産性を高められる。

世界各地の政府と企業が、眼科ケアへの投資を増やすべき時だ。世界的な見落としを正すことで、人々の暮らしを変え、労働者に力を与え、目の前にありながら見過ごされている数千億ドル規模の経済価値を解き放てる。

次の生産性向上の突破口を探すとき、いつも新しいものを発明する必要はない。すでにある技術を最大限に活用することが、最も大きな効果をもたらすイノベーションとなる場合もある。

注:本研究はVisionSpringとGood Business Labが実施し、Queen's University Belfast、University of Michigan、University of California San Diegoが学術面で主導した。資金はUSAID、The Chen Yet-Sen Family Foundation、Livelihood Impact Fundが提供した。

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