ドイツの経済的岐路は、「再工業化時代」での繁栄につながる可能性がある

Platz der Republik, Berlin, Germany with national flag at full mast: Focusing on long-term investments can help Germany lead in the re-industrial era
Focusing on long-term investments can help Germany lead in the re-industrial eraImage: Unsplash/Maheshkumar Painam
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  • ドイツの経済停滞への懸念がある一方で、同国には強みがあり、新政権の財政改革が経済再生を促す可能性を秘めている。

  • ドイツの経済モデルは、高いエネルギーコスト、変化する貿易動向と競争によって大きな混乱に直面しており、戦略的な適応が必要とされている。

  • 経済的な強靭性を維持するため、ドイツは「トータル・ファンド・マネジメント」のアプローチを採用し、「再工業化時代」をリードするための長期投資に注力しなければならない。

米国株式市場の関税主導の調整からウクライナでの紛争終結の可能性に至るまで、地政学的な経済情勢の構造的な転換により、投資家は欧州株への資金シフトを本格化させている。

さらに、ドイツの選挙の結果が出たことや、同国の財政文化の劇的な転換の可能性(今後実施され得る支出策を含む)が、外国人投資家からの資金流入を引き寄せ、ドイツのDAX株式市場を史上最高値まで押し上げ。

市場参加者は楽観的すぎるのだろうか。結局のところ、つい最近まで、ドイツ経済をめぐる議論では絶望の声が支配的であり、同国は第二次世界大戦以降で最も長期の停滞期を経験している。

実際、変化する地政学的状況と世界市場の大きな不確実性を背景に、ドイツ経済の一部は、回復力と上振れの可能性を示唆している。

ドイツ企業のイノベーション、ミッテルシュタンド(中小企業)の強み、労働者の勤勉さ、サービス輸出の活力はいずれも、ドイツの現在の産業危機をめぐる悲観的な議論の水面下に潜む隠れた宝と言える。

メルツ首相率いる新政権は、大規模な財政パッケージを打ち出し、公共支出における国家主導型のアプローチを改革する可能性を模索しており、それにより「Schwartz null」(すなわち財政健全化の慣行)を歴史のごみ箱へと事実上追いやろうとしている。これにより、ドイツのビジネス環境において、さらなる文化的転換が生まれるとの期待がある。

「トータル・ファンド・マネジメント」のアプローチを採用することで、ドイツ政府と国民は、「再工業化時代」における需要パターンの変化に前向きに対応し、それに応えることができる。

つまり、各国や企業が増え続けるエネルギー需要に対処し、同時に気候変動による経済的コストに直面する中で、資源集約型の活動という「旧経済」から、サービス主導型の経済成長という純粋な「新時代」へ完全に移行したわけではないことは明らかである。

一部の国は、エネルギーのあらゆる領域から資源を確保して先手を打とうとしており、その結果、産業政策や気候保護主義の政策が復活しつつある。明らかに、我々は脱工業化時代にはいない。むしろ、この時代は「再工業化時代」と特徴づけられ、ドイツが主導的な役割を果たし得る時代である。

ドイツの経済モデルへの衝撃

歴史的に、高度に熟練した製造業と工業生産に牽引されてきたドイツの成長モデルは、天然資源への安定したアクセスに支えられてきた。これは、ルール地方の炭鉱からロシア産天然ガスに至るまで。

ユーロ導入以降、ドイツはドイツマルクに比べて相対的に弱い通貨の恩恵を受けてきたと言え、その結果、欧州内外で輸出の競争力が高まった。

第一次トランプ政権下の貿易戦争、パンデミック、そしてロシアによるウクライナ侵攻による一連の衝撃が、ドイツにおける産業危機へと結実した。

ショルツ政権は、例えば米国、アラブ首長国連邦およびサウジアラビアなどの国々との新たな資源関係の強化を図っていたが、エネルギーコストの急騰により、ドイツ企業は生産を海外へ移転させざるを得なくなった。

産業にとどまらず、ドイツの家庭は世界で最も高い電気料金のいくつかに直面しており、エネルギー危機が侵食 し、すでに縮小していた家計購買力をさらに圧迫している。

構造的な変化は、ドイツの製造業の競争力が目的に適しているのかという疑問も投げかけている。米国、中国、韓国などの経済が第四次産業革命を主導する中、ドイツは一部の面で飛躍することができず、内燃機関の枠を超えられていない。

一部の注目すべき企業を除けば、ドイツはデジタル化の時代を十分に取り入れてこなかったと主張することもできる。自動車分野においてさえ、中国は急速にドイツを追い抜いており、バッテリー式電気自動車の生産と輸出で先行している。

労働力供給の面では、ドイツの労働者は現在、技能が不足しているため、変化する需要パターンに対応できていないと主張することもできる。ドイツの職業訓練制度は極めて成功を収めてきたものの、将来の産業に求められる技能とのミスマッチがある可能性がある。

対外的には、構造的に減速しつつある中国からの需要の弱まりや、米国との貿易摩擦が、ドイツの輸出大国としての地位を縮小させる可能性もある。中国本土における高級品の需要減速の中で、ドイツ車の需要は打撃を受けている。

さらに、ワシントンとの貿易摩擦により、ドイツの輸出や資本の流れが米国から離れる可能性がある。また、ドイツは一部の産業分野で中国と直接競合する状況にあるとも主張できる。

したがって、デジタル化された、あるいは第四次産業革命の世界において適性が十分でない産業と労働力の供給という背景に加え、悪化し厳しい対外環境が重なり、ドイツ経済をめぐる悲観の声は、まったくの根拠がないわけではない。

再工業化時代における今後の道筋

しかし、将来を見据えると、重要なのはドイツが実際に欧州をリードしていることである。特許創出の分野で、近年は地域の競合国を大きく引き離している。

欧州の国別特許出願件数(千件、全体に占める割合、2019~2023年)Image: 欧州特許庁

研究開発(R&D)への支出は、世界でも最も高い水準の一つにあり、同国が全体として、前進するためにイノベーションへ投資する意欲があることを示している。さらに、ドイツは製造業大国としての役割がしばしば称賛されるものの、欧州連合(EU)域外との貿易において、アイルランドとともに欧州最大のサービス輸出国の座を争っている。

EU加盟国の非EU諸国向けサービス輸出のシェア(EU全体に占める割合、2022年)Image: Eurostat

これは実質的に重要な意味を持つ。世界は記録的な水準の物品貿易制限に覆われている中、物品貿易は人間の感情に訴えるため、ワシントンやかつての貿易相手国は、報復的な関税のエスカレーションの中でこれを選好している。

これまでのところ、保護主義の急激な高まりは、まだサービス分野には浸透していない。このため、ドイツのサービス輸出も、現在の関税の混乱の中で強靭性を保つ可能性がある。

さらに、製造活動が、主要な工業製品のアフターサービスなど、サービスに向けられるようになるにつれ、ドイツは地政学的な混乱にもかかわらず、そうしたサービスを輸出できる有利な立場にある。

これら二つが重なる明確な分野の一つがクリーンテック分野である。各国が独自の「グリーン・ニューディール」や米国のインフレ抑制法の各種版を推進する中で、拡大する気候保護主義は、各国の国内アジェンダを超えて、皮肉にも国境を越えた資本、製造の専門知識、知的財産、ノウハウを引き寄せている。

エネルギーのあらゆる領域にわたる変革的な事業を起こすことにより、ドイツは自国の有力企業だけでなく、ダイナミックなサービス輸出も生み出すことができる。したがって、壊れたモデルとはほど遠く、ドイツは再工業化時代において、実際に強力で回復力のある存在となり得る。

「トータル・ファンド・マネジメント」の発想

メルツ首相の政権が、提案されている財政刺激策パッケージの詳細を詰める中、ドイツの財政保守主義の慣行におけるこの劇的な転換は、考え方の転換によっても同様に裏付けられる可能性がある。

「Schwarze null」の過去を断ち切ることは、無駄遣いや放漫な政策を意味する必要はない。むしろ、政府とビジネスのエコシステムは、トータル・ファンド・マネジメントあるいはトータル・ポートフォリオ・アプローチを採用すべきである。

非常に洗練された機関投資家と同様の手法をとることで、政府は長期的に正の収益を生み出しうる投資の種をまくことができる。ある賢明な経営者が述べたように、このような実りある政府支出には、支出から投資への考え方の転換が求められる。

そのような資産クラスには住宅も含まれうる。ドイツで住宅価格が過去最高水準近辺で推移する中、投資家が政府に加わり、手頃な住宅の開発を進め、社会問題の緩和とインパクトの創出につながる可能性がある。

人的資本への投資もまた、多面的なリターンをもたらす可能性が高い。そのような取り組みの例として研修プログラムは、将来のベンチャーキャピタル投資家向けに強化・拡大されうる。

ドイツの前進を支えることは、金融サービスのイノベーションにおいて、もう一つの有望な機会を提供する(ただし、イノベーションが多すぎなければの話である)。さらに、将来に対応した人的資本基盤の構築には、機動的な組織計画も欠かせない。

ドイツのミッテルシュタンドの経営陣が事業承継の課題に取り組む中、政府と企業は、それを正しく行っている国々の事例を引き続き幅広く探すことができる。

このトータル・ファンド・マネジメントのアプローチを取ることで、政府とそのビジネス・エコシステムは、ドイツが重要な役割を果たし得る未来への投資が可能になる。

地政学的環境の変動する地殻プレートの中にあっても、ドイツ経済のこうした知られざる側面は、政府によるスチュワードシップ型のアプローチと相まって、財政刺激策の熱狂の余韻が最終的に飛行機雲のように消えていく場合であっても、同国を強い立場に置くことができる。

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