経済のグローバル化を成功させるには、各国である程度順調な成長パターンが必要だ。第二次世界大戦後のおよそ30年間は、そうした動きが特徴的だった。幅広い国々で成長率が比較的高く、その恩恵は各国内で広く共有され、発展途上国の台頭によって世界の不平等は縮小した。この時期は、グローバル化の最盛期だったと言えるだろう。
もちろん、グローバル化は1970年代以降も続いた。しかし、その根底にある成長パターンは変化した。経済のグローバル化に内在する労働力の裁定取引と、破壊的なデジタル技術の台頭により、先進国では中間層の製造業の雇用が失われ、所得中央値が停滞し、GDP成長率が堅調なままでも、雇用と所得の二極化が進んだ。1980年代から1990年代を通じて続き、2000年以降に加速したこの新たなパターンは、不平等を急激に拡大させ、グローバル化の基盤を弱めた。
各国の対応は大きく異なる。不平等を減らすため、税制を通じた再分配、社会保障や教育制度、さまざまな社会保護策、効果的な再訓練への支援などに取り組んだ国もある。こうした取り組みの効果は、文化的規範、労働者の制度的な交渉力、労使間の信頼の度合い、そして個人や企業の富が政治に及ぼす影響によって左右される傾向がある。
緩和する力が弱い国々、特に米国と英国では、所得、富、機会の格差が最も極端な水準に達した。実質的な政策対応がなかったことに加え、経済的な交渉力を強めた人々がほとんど懸念を示さなかったように見えたことが、最も大きな影響を受けた人々の深い怒りを招いた。
多くの国が直面する分配をめぐる問題に加え、日本、欧州の一部、そして一部の発展途上国は、低成長と高止まりする失業率に直面している。欧州の場合、こうした問題の根底には、逃げ道や調整の仕組みがほとんどない制度がある。
しかし、包摂性を欠く成長が長く続き、近年、経済を変容させていることは事実だ。こうした状況では、政治が転換点となり、しばしば劇的な展開をもたらす。先進民主主義国以外では、包摂性が長期にわたり損なわれると、ほぼ常に長期的な成長と発展に壊滅的な打撃を与え、しばしば暴力や内紛につながる。この傾向は、数年前に成長報告書で成長と開発に関する委員会が指摘した。
機能する民主主義国では、政治的な騒動は通常、選挙や国民投票にとどまる。英国の欧州連合(EU)離脱を問う投票や、ポピュリストで既成政治の外から登場したドナルド・トランプが勝利した米大統領選挙がその例だ。不満を抱く有権者は、問題を生み出した既存の制度を拒む。これは正常で健全な反応だ。そして、成長の力学や政策に地殻変動のような大きな転換がなければ、今後数年、欧州、特にフランス、イタリア、ドイツで、こうした動きがさらに見られる可能性が高い。
既存の制度を拒まないよう有権者を説得するには、もう遅すぎるかもしれない。しかし、効果的な代替策を築く時間はまだある。世界中の多くの人々が感じている途方もない不確実性には、白紙の状態から始められるという潜在的な利点がある。従来の前提や偏見、タブーが取り払われた今、より良いものを生み出せるかもしれない。
米国を考えてみよう。新たな成長パターンと政策は、さまざまな方向に進み得る。多国間主義を退け、二国間主義や保護主義を採ること、移民政策の転換、公共投資と財政刺激策の拡大、規制の変更、税制改革、教育、職業訓練、医療における供給側の施策などが考えられる。いずれの分野にもリスクと潜在的な利点があり、結果は政策パッケージ全体に左右される。
現段階では、考えられる組み合わせは途方もなく複雑だが、明らかな点もいくつかある。第一に、投資、個人消費、雇用の伸びに関しては、期待と信頼が重要だ。より力強く均衡の取れた政策対応が実施される兆しは、目に見える好影響をもたらしている。ただし、実施の仕方によっては一時的なものにとどまる可能性がある。期待の高まりは金融市場にも表れているが、私を含む多くの人々は、現在の資産評価は楽観的すぎると考えている。
第二に、米国の名目成長率は上昇しそうだが、その内訳をなすインフレと実質成長の割合はまだ定まっていない。これは重要だ。米連邦準備制度理事会(FRB)の対応を左右し、米国内外の資産価格に影響するためである。
一つの可能性は、公共部門と民間部門の投資拡大が生産性の低下傾向を反転させ、実質成長を生み出し始めることだ。しかし、議会の膠着状態が再び訪れれば、この傾向が断ち切られ、期待に水を差しかねない。また、人口動態のように成長を制約する長期的な傾向が、消えてなくなるわけではない。
米国の新たな成長パターンの第三の特徴として、大企業が米国内での評判を維持するよう、圧力が強まる可能性が高い。トランプは就任前から、企業の製造拠点の選択に影響を与えようとしていた。例えば、メキシコなどで製造された製品に輸入関税を課すと脅していた。キャリアとの合意のように、米国内で一部の雇用を維持するための取引をまとめた一方で、より強力な手段として、ツイッターなどを通じて企業のブランドイメージを脅かしてきた。
トランプの取り組み、とりわけツイッターでの発信は、実質よりも見せ方が中心で、長期的に見て数量面の影響はほとんどないと評する人もいる。それは正しいかもしれない。しかし私の見方では、トランプは企業の意思決定について、より深いメッセージを発しているようだ。トランプ自身のビジネス実績には、反対派が指摘するように、複数回の破産や請負業者とその従業員への未払いが含まれる。それでも、資本、企業、株主の利益を優先し、労働者を使い捨てにするビジネス・投資文化を、彼が今変えようとしている可能性はある。
確実に言える第四の傾向は、デジタル技術が今後も進展し続けることだ。しかし、確実なのはそこまでである。労働者の適応を支援するという課題に、トランプ政権がどう取り組むのかについては、これまでのところ、ほとんど何の兆しも示されていない。
今後数カ月で、最近の経済楽観論の高まりが確かなものか、オフショアリングを阻止し成長と雇用を押し上げようとするトランプの取り組みが長期的な影響をもたらすか、そして保護主義が優勢になるかが明らかになるだろう。そのとき初めて、トランプが米国の不満を抱く労働者にとって本当に正しい経済的選択だったかどうかを判断できる。



