不確実性の中で繁栄し、新たな可能性をつかむには、金融ハブは進化しなければなりません。この目標の達成には、相互に依存する3つの分野が鍵となります。
金融ハブがつながりを築く力が、レジリエントで繁栄する世界経済の形成における、その存在意義と主導的役割を左右します。
世界経済フォーラム年次総会2026のテーマ「対話の精神」は、分断を乗り越える協力が進歩の礎であることを改めて示しています。
世界の資本秩序が変化しています。地政学的不確実性、マクロ経済の変動、技術革新による混乱が市場を再編し、資本の運用方法や運用先を再定義しています。
こうした変化は、金融ハブに脅威と機会の両方をもたらします。
不確実性の中で繁栄し、繁栄への新たな可能性をつかむには、金融ハブは進化しなければなりません。この目標の達成には、相互に依存する3つの分野が極めて重要だと考えます。
第一に、市場や参加者をよりシームレスにつなぐ緊密な連携を通じて分断に対抗し、地政学的な隔たりがあっても資本が流れるようにすることです。
第二に、新たな金融商品やイノベーション、行動様式に迅速に適応できるようにすることで、変動や技術革新による混乱に対処する、より柔軟なインフラを構築することです。
第三に、不確実性や急速な技術進歩が世界のシステムへの信頼を脅かすなかで不可欠な信頼と安定を築くため、ガバナンスを一層強化することです。
3つすべての分野で行動を起こせば、金融ハブは世界経済を再形成する力により適切に対応し、混乱を機会へと変え、今後数十年にわたる世界の繁栄を形づくることができます。
つながりを促進する
世界に必要なのは、つながりの縮小ではなく拡大です。不確実性と地政学的変化の時代に、金融ハブがつながりを築く力は、レジリエントで繁栄する世界経済の形成における、その存在意義と主導的役割を左右します。
企業、投資家、ステークホルダーは、ますます多極化する世界秩序に適応するため、分散投資やリスク管理の新たな方法を模索しています。金融ハブはそれを可能にする架け橋です。分断が進むなかでも資本の流れを可能にし、幅広い投資機会を生み出すマルチアセット商品エコシステムの発展を促します。
つながりが強く活気ある金融ハブは、企業が国内市場を越えて事業を拡大するための導管にもなります。企業を国際的な資本の調達先や新たなパートナーと結びつけることで、金融ハブは企業が変動に対処し、世界の舞台で競争する力となります。
分断された世界で世界の資本が新たな機会や解決策を求めるなか、金融ハブは同業の取引所との連携、新商品開発、市場構造の改善を通じて協力し、国境を越えた連携を深めなければなりません。
香港はまさにそれを実践しています。パートナーシップを築き、上場制度を強化し、世界の資本を中国本土の急成長する投資家層と結びつけることで、資金調達、取引、リスク管理の活気あるハブを形成しています。
インフラを強化する
しかし、金融ハブの世界とのつながりの強さは、それを支える市場構造の強さに左右されます。
テクノロジーが参入障壁を下げ、市場へのアクセスを広げるなか、投資家の行動は急速に変化しています。デジタルプラットフォーム、リアルタイムデータ、アルゴリズム取引商品により、個人投資家や「プロテール」投資家は、迅速かつ高度な取引ができるようになりました。
同時に、ブロックチェーンツールやAI主導のプラットフォームが市場の運営方法を変えるなか、取引所は仲介機能の排除という課題に直面しています。
こうしたイノベーションは従来のシステムに変革を迫り、取引所と、それを擁する金融ハブに、業務と技術の卓越性を追求するよう求めています。
こうした状況において、金融ハブは立ち止まることはできません。一度きりのアップグレードではなく、継続的な改善を基本姿勢として受け入れなければなりません。堅牢で柔軟なプラットフォームに投資し、技術力を継続的に高めることで、金融ハブはテクノロジー主導で急速に変化する世界において、進化する市場のニーズや投資家の行動に効果的に対応できます。
つまり、新たな資産クラスや取引モデル、取引量の増加に、精度と速度をもって対応できるプラットフォームを構築することです。また、取引と決済のサイクルを継続的に見直して近代化し、投資家がシームレスな環境で取引し、リスクを管理できるようにすることで、市場全体の効率性を高めることも意味します。
何よりも重要なのは、市場を近代化し、参加者とともにその道のりを歩むことです。そのため香港取引所では、参加者があらゆる段階でイノベーションと効率性の恩恵を受けられるよう、市場のマイクロストラクチャーにおける摩擦を可能な限り取り除いています。
結局のところ、市場インフラを将来に備えたものにすることは、単なる技術的課題ではありません。金融ハブの市場を開かれた、アクセスしやすく、競争力のあるものに保つための戦略的要請です。
世界の金融システムの変化をリーダーが理解するうえで、フォーラムが果たす役割
金融・通貨システムセンターは、持続可能性やレジリエンスからイノベーション、デジタル化に至るまで、世界の金融システム全体に及ぶ変革を理解するため、リーダーを招集します。
協力と知見の共有を促すことで、同センターはパートナーが金融システムを長期的な経済の安定と共通の繁栄に沿わせるよう支援します。
信頼を高める
国際的な連携が人々、アイデア、資本を結びつけ、高度なインフラがシームレスな取引を可能にします。それに加えて必要なのが、ガバナンス体制への信頼です。
信頼は、堅牢で透明性が高く、世界の基準に沿ったガバナンスによって築かれます。ガバナンスは企業のレジリエンスを確保し、リスクを管理し、市場の健全性を強化します。
それこそが、主要な金融センターを他と差別化するものです。世界中の投資家や企業が香港での事業を継続的に選ぶ理由でもあります。香港の市場運営者として、私たちは基準や枠組みを定めることで、この健全性を確保しています。
たとえば、企業のサステナビリティ開示基準の導入により、香港上場企業はネットゼロに向けた道筋に乗り、世界の慣行との整合性が図られました。また、コーポレートガバナンス・コードの改定により、香港市場の国際的な競争力と魅力が保たれています。
世界的な不確実性のなかでも、世界各地の企業がここで事業を拡大しているのは偶然ではありません。企業は、私たちが変えつつある世界のレジリエンスと健全性を確保するうえで、堅牢なガバナンスが極めて重要になると認識しています。
未来を築く
地政学的不確実性、マクロ経済の変動、技術革新による混乱など、これから直面する課題は複雑ですが、克服できます。世界経済フォーラムの2026年のテーマ「対話の精神」は、分断を乗り越える協力が進歩の礎であることを改めて示しています。
金融ハブはこの使命の中核を担います。分断に対抗するつながりを促進し、信頼を築くガバナンスを強化し、先を見据えたインフラに投資することが、急速な変化によって再形成される世界におけるレジリエンスの基盤となります。
これらの分野で成果を上げることで、不確実性を機会へと変え、資本市場が持続可能な成長の原動力であり続けるようにできます。
イノベーション、健全性、世界的な協力への共通の決意があれば、金融ハブは混乱を乗り越えるだけでなく、今後数十年にわたって繁栄する世界経済を形づくり、共通の繁栄への架け橋を築くでしょう。

