英国に寛大な条件を提示することが、EUにとって唯一の選択肢かもしれない理由

A woman holds a Union flag umbrella in front of the Big Ben clock tower (R) and the Houses of Parliament in London October 4, 2014. REUTERS/Luke MacGregor (BRITAIN - Tags: ENVIRONMENT CITYSCAPE TRAVEL) - RTR48XA7
As counter-intuitive as it may seem, the only way to keep the EU together is to let Britain go, on generous terms.Image: REUTERS/Luke MacGregor
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英国のテリーザ・メイ首相は、それを確認した。英国は間違いなく欧州連合を離脱し、新たな貿易協定を交渉することになる。問題は、EUがどのような協定を受け入れるかだ。

メイ首相が明らかにしたように、英国はスイスやノルウェーのような取り決めを望んでいない。それでは移民政策に対する一定の統制を手放す必要があるからだ。英国の指導者たちが、既得権益に基づく判決を下していると非難する欧州司法裁判所の管轄権に服することも、選択肢にはない。

しかしEUは、英国が気に入らないものを何でも手放すことを、代償なしに認める用意はない。EU首脳は、英国が人々の自由移動を認めずに単一市場との自由貿易を享受することはできないと主張している。この頑なな姿勢の一因は、英国がそのような一方的な取引を勝ち取れば、ほかのEU諸国も同じことを試みるのではないかという懸念だ。しかし、ほかの加盟国の離脱を思いとどまらせるためだけでも英国を罰したいという思いも、確かに一因となっている。

この対応はまったく誤っている。英国の離脱が遺憾なのは間違いないが、EUとの自由貿易に人々の自由移動を伴わせる必要はないというのが実情だ。純粋な貿易理論が示すように、自由貿易による経済効果と厚生上の利益は、労働力の自由移動によって高まるのではなく、置き換えられる。

移住ができなければ、国ごとに異なる賃金構造が生じやすくなり、それに伴って価格構造も異なってくる。こうした違いは貿易の利益を拡大する。実際、その違いを利用することこそ貿易の本質だ。EUが英国との自由貿易を維持することを拒めば、英国民と同じほどEU市民も苦しむことになる。

ほかのEU諸国も英国に続く可能性が高いという主張には疑問がある。政治共同体には二つの種類がある。一つはパレート最適性の基準を満たす共同体だ。共同体が全会一致で、あるいは少なくとも少数派を守る規則に従って決定を下すため、一部またはすべての構成員に利益をもたらし、誰にも不利益を与えない措置を実行する。この考え方の下では、各国が他国を犠牲にしてパイのより大きな取り分を争うことはない。むしろ、パイが成長し続け、誰もが十分な一切れを得られるよう、自発的に協力する。

Image: ブルームバーグ

もう一つの種類の共同体は、第一に国々の間で資源を再分配し、第二に多数決で意思決定することを特徴とする。ここでは勝者と敗者が生まれる。多数派は、その構成員が得る利益が少数派の被る損失に比べてごく小さくても、自らの意向を押し通せるからだ。その結果、パイはしばしば小さくなり、ひどく不満を抱く国も出てくる。

この二つ目の種類は本質的に不安定だ。敗者は離脱を選びがちだからである。彼らを引き留める唯一の方法は、たとえば罰を与えるなどして、離脱をさらに魅力のないものにすることだ。英国を見せしめにしようとすることで、EUは、一部の加盟国が必ず敗者となる連合だというメッセージを発している。これは、英国への支持を表明し、さらに多くの国が同じ道をたどるだろうとの見方を示した、米国の新大統領ドナルド・トランプが広めている筋書きである。

こうした結果を避けるには、EUは多数決で運営される再分配型の連合から、パレート原則に沿った、全会一致で運営される最適かつ自発的な連合へと変わらなければならない。第一歩は、自律的な課税権を持つ機関の長に共通のEU財務相を据える計画を撤回することだ。次に、相互に利益をもたらす自由貿易協定を英国に提案すべきである。

EUが対応を変えなければ、一部の加盟国だけが満足し、ほかの国々は離脱を望む、合意に基づかない共同体になる危険がある。制裁やその他の強制的な措置によって、離脱を迷う加盟国をしばらく引き留められるかもしれないが、このやり方ではEUは不安定化しやすくなり、加盟国は搾取される恐れにさらされる。欧州はソ連と同じ運命をたどることになりかねない。

構成員が閉じ込められていると感じる関係は、どれも発展できない。連合も同じだ。直感に反するように思えるかもしれないが、EUを団結させる唯一の方法は、寛大な条件で英国を離脱させることである。

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