経済成長は、極度の貧困を削減し、世界中の多くの貧しい人々の暮らしを改善するうえで不可欠な役割を果たしてきました。これは議論の余地のない事実です。
しかし、経済成長が貧困削減にもたらす効果は、国によって同じなのでしょうか。一般に信じられていることとは異なり、私たちはそうは考えていません。その理由を説明します。
各国の所得分布を見ると、極度の貧困状態にある人々(すなわち、1日1.25ドル未満で暮らす人々)がどれほどいるかが分かります。これを用いて分析すると、分配に中立的なプラス成長は、形を変えずに所得分布を右へ移動させることが分かります(図1左側)。この分配中立的な移動によって貧困から抜け出す人々の割合は黄色で示されています。これは、2つの分布の間で、貧困ラインより右側にある領域です。貧困から抜け出す人の数は、所得分布における貧困ラインの位置によって決まります。たとえば、貧困率が非常に高い、または低い場合、つまり極度の貧困ラインが所得分布のいずれかの裾に位置する場合、1%の成長で極度の貧困から抜け出す人は相対的に少なくなります。
極度の貧困ラインが所得分布のピーク、すなわち1人当たり所得の最頻値に対してどこに位置するかによって、分配中立的な成長が続けば、極度の貧困から抜け出す人はさらに増える場合があります(右側の図の垂直線より右側、つまり緑色の領域)。一方、極度の貧困ラインが所得分布のピークより左にある場合は、成長が続いても極度の貧困から抜け出す人は次第に少なくなります。
図1:所得分布、極度の貧困、成長の影響

図2では、各国の1%の成長率が貧困者数に及ぼす影響を算出し、各国の2010年時点の初期貧困率と対比して示しました。予想どおり、極度の貧困ラインが各国の所得分布のピークに近いとき、1%の成長の影響は最大になります。これは通常、貧困者数の割合が約35~50%のときに当たります。同じ図で緑色で示された国々では、貧困ラインがその国の所得分布の最頻値より右にあるため、成長が続けば極度の貧困削減に対する成長の効果が高まると見込まれます。これに対して、青色で示された国々では、所得分布の最頻値が貧困ラインより右にあるため、成長が続くにつれて極度の貧困者数に対する効果は低下すると考えられます。
図2:

出典:PovcalNetを用いた著者らの試算、http://iresearch.worldbank.org/PovcalNet/Index.html
極度の貧困層の絶対数に成長がもたらす影響を十分に理解するには、各国で1%の成長率が極度の貧困層の人数をどれほど減らすかを分析することも有用です。図3はその分析結果を示しています。貧困から抜け出す人の数が最も多いのは、インド、中国、バングラデシュ、インドネシア、ナイジェリアのような人口の多い国です。ただし、各国の所得分布の最頻値に対して初期の極度の貧困ラインがどこにあるかによって、追加的な成長に伴い、貧困から抜け出す人の絶対数は増減します。ここでも、追加的な成長によって極度の貧困層の絶対数に対する効果が高まる国を緑色で、そうでない国を青色で示しました。
図3:家計消費の1%成長によって貧困から抜け出す人々

出典:PovcalNetを用いた著者らの試算、http://iresearch.worldbank.org/PovcalNet/Index.html
注:図示のため、貧困削減による減少人数が5万人を超える国のみを掲載
もちろん、私たちが説明した方法も含め、成長が貧困に及ぼす影響を算出する方法には、それぞれ限界があります。大きな限界の一つは、ほとんど成長率がこの水準になる国がないにもかかわらず、成長率を1%と仮定していることです。もう一つは、所得分布が時間とともに変化するため、2010年の国際比較データに基づく私たちの試算が、現在の各国の議論に当てはまらない可能性があることです(以前のブログ記事「 貧困削減、成長、所得分布の変化 」および「 所得分布の変化が果たす役割」を参照)。それでも、この分析は、国、地域、あるいは世界全体で極度の貧困をなくす戦略を策定する開発専門家にとって、考慮に値する情報を提供すると私たちは考えました。特に、極度の貧困削減において成長がどれほど重要かを考えるうえで、各国の所得分布の最頻値に対して極度の貧困ラインがどこにあるかを把握することが重要です。
この記事は、当初、 世界銀行のブログ「Let’s Talk Development」に掲載されました。 掲載されたことは、世界経済フォーラムが記事の見解を支持することを意味しません。
アジェンダの最新情報を受け取るには、 週刊ニュースレターにご登録ください。
著者:Israel Osorio Rodarte氏は現在、世界銀行の開発見通しグループのコンサルタントです。Jos Verbeek氏は、2015年以降の開発課題を担当する世界銀行グループ総裁特使室のアドバイザーです。
画像:送電塔から延びる電線の向こうに見えるコージェネレーション発電所の煙突。REUTERS/Kim Kyung-Hoon。


