ダボス2012:燃え尽き症候群を克服する

ダボス2012:燃え尽き症候群を克服する
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燃え尽き症候群は、疲労、ストレス、悲観主義、冷笑主義、引きこもり、そして要塞に閉じこもるような心理状態を伴う状態です。こうした症状は個人にとって懸念すべきものですが、世界情勢においては破滅的な結果を招きかねません。開催を目前に控えた ダボスでの世界経済フォーラム年次総会には、明らかな燃え尽き感が漂っています。今年の総会が、この倦怠感を克服できる新たなリーダーシップのモデルづくりに役立つことを願っています。

大きな激変に特徴づけられた一年を経て、多くの人々は、世界のシステムが崩壊していくのを目の当たりにしているように感じています。金融危機と債務危機、失業、政治の麻痺、社会的不平等、食料とエネルギーの危機など、問題は尽きません。同時に、これほど多くの問題が絡み合って起きるなか、指導者たちは限界まで追い詰められています。その一方で、世界社会の一員としての私たちの存在を支える制度や安全網も、今日の複雑なリスクに対処しきれずにいます。

こうした状況に対する通常の反応は、より強力なリーダーシップを求めることです。しかし、この一年の出来事は、従来型のリーダーシップの限界を繰り返し示してきました。国内問題に気を取られ、次々と危機への対応に追われる指導者たちは、目に見える進展をほとんど生み出せていません。その代わりに私たちが目にしてきたのは、急速にほころびつつある世界での短期的な応急処置がほとんどです。一般の人々が指導者への信頼を失いつつあるのも無理はありません。世界各地の「オキュパイ」運動や「春」運動は、理解できる不満と苦悩の表れです。

行動を起こすことが急務です。世界の課題すべてに協力して取り組む新たなモデルを見いだすとともに、現代社会で有効に機能する新しいリーダーシップのモデルも築く必要があります。現在の課題を克服するため、ビジョンと価値観の双方を重視するリーダーシップです。この二つの組み合わせが、指導者の意思決定を導く羅針盤となります。

グローバル化した世界を正しく理解し、効果的に対応するには、ビジョンが必要です。技術の進歩、相互接続性、権力の分散はいずれも、明晰な視座を要する複雑な新しい現実を生み出してきました。ビジョンは、指導者が先にある機会を垣間見て、それを徹底して追求するうえでも不可欠です。燃え尽き症候群による麻痺に屈してはなりません。信頼を築き、あらゆる行動の基盤とするには価値観が必要です。しかし、真のリーダーシップの価値観は、短期的な株主利益や次の選挙の支持率を超えるものでなければなりません。そうして初めて、人々と指導者の間に真のつながりと意義ある交流が生まれます。

厳しい経済見通しにもかかわらず、ダボスで開催する2012年年次総会の参加者数が過去最高に達したことは、示唆に富んでいます。これは、目前に迫る困難な世界的課題に集団で協力して取り組むため、指導者たちが一堂に会する必要性を感じていることを示しています。ダボスは、ビジネス界、政府、市民社会の指導者たちが共通のビジョンを練り上げ、協力を支える価値観を築く真の機会を提供します。とりわけ今回の年次総会は、短期的で状況対応型の危機管理を行う現在のレーダー方式を、長期的な価値観に基づく明確な方向と指針を示す羅針盤に置き換えるうえで重要です。

ダボスで誰もが最も関心を寄せる主要議題は、世界経済を再編しているリバランスとデレバレッジになることは間違いありません。しかし、年次総会の目的には、指導者が道徳的誠実さをもって責任を果たし、起業家精神が公共の利益のために生かされるようにすることも含まれる点を忘れてはなりません。今年の年次総会のテーマが「大いなる変革:新たなモデルの形成」なのは、まさに私たちが深い変化の時代にあり、従来どおりのやり方をただ続けるのではなく、新たな思考法が急務だからです。

ビジョンと価値観に基づくリーダーシップは、信頼を取り戻し、燃え尽き症候群を克服するうえで大きな力となります。ただし、社会的責任と道徳的義務が空虚な言葉にすぎないのではないと、指導者自身が具体的な行動で証明できる場合に限られます。

クラウス・シュワブ
創設者兼会長
世界経済フォーラム

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