デジタル化は多くの先進国にとってパンデミックがもたらした数少ない好材料であることが証明されたものの、国や分野による格差は依然として残っている、とIMFの研究者らは述べている。
研究者らは本稿で、デジタル技術の導入拡大が生産性と労働市場に及ぼす広範かつ長期的な影響を整理している。
そのうえで政策立案者に対し、デジタル化の恩恵が広く共有されるよう、デジタル化の格差を縮小する取り組みを続けるよう求めている。
世界がパンデミックからの脱却に努めるなか、先進国に残された長期的な遺産の一つが、デジタル技術の導入拡大である。在宅勤務はいまや一般的となり、多くの企業がオンライン事業を拡大している。
危機が収束に向かうなか、インターネットに接続されたコンピューターを使用する労働者の割合で測定したデジタル化は、多くの経済圏で好材料となったことが明らかになった。これは、当研究所の新たなスタッフディスカッションノートにおいて詳述しているとおり、生産性と労働市場に広範かつ長期的な影響を及ぼしている。本ノートは先進国に焦点を当てている。
パンデミック以前、デジタル化の進展度は国、産業、企業によって大きく異なっていた。例えば2019年時点で、スウェーデンではインターネットに接続されたコンピューターを利用する労働者が5分の4を超えており、当研究の対象国の中で最も高かった。一方、ギリシャは5分の2未満と最も低かった。その2年後、ギリシャの割合は8ポイント近く急上昇して45%に達し、当研究で示された中でも最も大きな伸びの一つとしてスウェーデンとの差を縮めた。
当研究によると、先進国全体ではデジタル化が平均6ポイント上昇した。この結果は、特に遅れていた経済圏や産業において、パンデミックがデジタル化を加速させたことを浮き彫りにしている。
デジタル化は従来、対面接触を伴う業種で低く、中小企業は大企業に比べて遅れる傾向があり、この傾向は多くの国で見られる。ただし注目すべきことに、こうした格差は産業の違いだけで生じていたわけではない。例えばギリシャの飲食・宿泊業は、スウェーデンに38ポイント遅れをとっている。
従来デジタル化が遅れていた小規模企業が最も大きな伸びを示した。同様に、デジタル化が最も遅れていた分野ほど、デジタル化への投資を多く行っていた。
デジタル化の急速な進展はパンデミック中に多くの企業を救い、リモートワークやオンライン事業を通じてロックダウンへの適応を助けた。当研究では、デジタル化がもたらしうる成果を2種類の生産性指標で測定している。一つは労働時間当たりの生産量を測る労働生産性、もう一つは生産に投入された全インプットに対する生産量を追う全要素生産性である。分析の結果、デジタル化の水準が高いほど生産性と雇用が衝撃から守られたことが確認された。特にデジタル化が最も進んだ産業は、デジタル化が遅れた分野に比べ、労働生産性と労働時間の減少幅が著しく小さかった。
当研究によると、2020年のパンデミックが最も深刻だった時期において、ある分野のデジタル化が進んでいるほど労働生産性の損失は縮小しており、デジタル化の75パーセンタイルと25パーセンタイルを比較すると、その差は20%と顕著だった。さらに、デジタル化の遅れた経済圏が各分野でサンプルの75パーセンタイルの水準に達していた場合、パンデミック中の労働生産性の総成長は4分の1高かったと推計される。
パンデミックがもたらした変化の中には定着しないものもあるが、大企業のデータからは、危機が収束に向かうにつれて、デジタル化の進んだ企業と遅れた企業との間の全要素生産性の格差が拡大していることが示されている。
デジタル化の長期的な影響を評価するのはまだ時期尚早だが、パンデミック中に生産性の向上、雇用の保護、経済の混乱の緩和に寄与したことは確認できる。
労働市場とリモートワーク
パンデミック当初、政策立案者は、デジタル化の進展が高技能労働者の需要を増やし、低技能・中技能労働者を代替することで、雇用市場の不平等を拡大させるのではないかと懸念していた。
危機の間、デジタル関連職種は非デジタル職種に比べて人員削減の影響を受けにくかったが、労働需要の構成がデジタル関連職種へと構造的にシフトしたことを示す証拠は、現時点ではほとんど見られない。実際、当研究所が9月に発表したワーキングペーパーで示したとおり、経済が回復し始めると、求人データでは低技能労働者の需要が大きく増加していた。
より持続的であり、労働市場に長期的な影響をもたらしうる変化は、在宅勤務の普及である。パンデミック前、欧州で在宅勤務を通常行っていた労働者は5%に過ぎなかったが、2021年にはその割合が16%を超えた。
在宅勤務がより一般的な国では労働力参加率の上昇幅が大きく、この働き方が労働市場へより多くの労働者を引き付ける可能性を示している。例えばオランダでは、労働者の20%超が通常在宅勤務を行っており、労働力参加率はすでに危機前の水準を上回っている。一方、イタリアでは在宅勤務をする労働者が10%未満であり、労働力参加率はパンデミック前の傾向を依然として下回っている。
在宅勤務は、通勤の削減と時間管理の柔軟性の向上によって、大きな厚生上の利益をもたらしうる。また、労働市場への定着と労働供給を促進しうるとともに、通勤を減らすことで環境の保全にも寄与しうる。
パンデミックはデジタル技術の導入を加速させ、生産性を守った。しかし、国や分野による格差が依然として残るなか、政策立案者はこの機会を捉え、デジタル化の格差縮小に向けた取り組みを続け、デジタル化の恩恵が広く共有されるようにしなければならない。
これには、デジタル市場における健全な競争を維持する政策の推進と、リモートワークを促進するための労働法制および規制の見直しが含まれる。こうした取り組みは、将来の危機を乗り越えるうえでより適応力と回復力のある経済の構築につながりうる。
—本ブログは次の研究者による研究成果を反映したものである:Longji Li、Andrea Medici、Ippei Shibata およびJiaming Soh。

