米国経済の成長の最盛期はとうに過ぎたのか。それとも、これから訪れるのだろうか。ノースウェスタン大学の2人の経済学者、ロバート・J・ゴードンとジョエル・モキアの間で長年続いている論争だ。ゴードンは、最大の進歩は過去2世紀の間に起きたと考えている。たとえば、家庭ではろうそくから電灯へと切り替わった。その後の進歩は、こうした大きな飛躍をさらに磨き上げるものだった。したがって、経済は過去のような力強い成長を再び実現することはない。
一方、モキアは、成長の最盛期はこれからだと考える。科学と技術が緊密に連携し、かつては想像もできなかった革新を生み出す時代であり、たとえば遺伝子編集ツールは、いずれ新たな生命体の創出につながる可能性がある。こうした要素はGDPに十分反映されていないと同氏は述べた。GDPは過去を測る指標である面が大きい。ゴードンとモキアは先ごろ、SiriusXMのチャンネル111で放送される番組「Behind the Markets」で議論を交わした。インタビューを行ったのは、ウォートン校の金融学教授、ジェレミー・シーゲルと、番組司会者でWisdomTreeのジェレミー・シュワルツだ。
以下は、会話を編集した記録である。
ジェレミー・シュワルツ:番組に、世界を代表する経済学者のお二人をお迎えし、米国経済とイノベーションの未来について話を伺います。一人は進歩は緩やかで漸進的だと主張し、もう一人は未来は明るいと見ています。このお二人、ロバート・ゴードンとジョエル・モキアは、ともにノースウェスタン大学の経済学教授です。お二人に話を聞く前に、[ウォートン校の]ジェレミー・シーゲル教授、市場についてコメントしたいとのことですね。
ジェレミー・シーゲル:ダウ平均株価とS&P 500は史上最高値を更新し、ナスダックも[最高値]をわずかに下回る水準です。[編集者注:このインタビューは6月30日に行われた。]……株価上昇と債券売りは、11月、12月、1月、2月に起きたトランプ現象だったと思います。しかし、トランプ政権の政策課題が停滞するなか、市場を支えたのは第1四半期の非常に好調な企業業績でした。
第1四半期の業績は、過去3、4年で最も良く、年間見通し[業績見通し]も実際に最良でした。データもそれを明確に裏付けています。通期業績の予想は、私が見てきたなかで最も良い水準です。通常、アナリストの見通しが楽観的すぎるため、業績予想は年を通じて下方修正されます。今回は、私が見てきたなかでも下方修正の幅が特に小さい年の一つです。
それが[市場]を押し上げました。もちろん、金利低下もあります。10年物[米国債利回り]が2.31%になると誰が予想したでしょうか。……ドルは軟調で、これはS&P 500にとって非常に好ましいことです。[構成企業の]利益の40%は海外で得られており、ドル安の恩恵を受けます。基本的に、トランプ政権の政策課題への期待がしぼむなか、その下落を補う要因がいくつかありました。それが市場を下支えしたのです。
シュワルツ:シーゲル教授が講演でよく取り上げ、経済に関する考え方に影響を与えた本の一つが、ロバート・ゴードンの著書、『アメリカ成長の興亡:南北戦争以降の米国の生活水準』です。昨年の優れた書籍の一つとして数々の賞を受賞しました。ジョエル・モキアも経済について幅広く執筆しています。最新刊は、『成長の文化』で、昨年プリンストン大学出版局から刊行されました。
シーゲル:ボブ、ご自身の主な見解を要約していただけますか。
ロバート・ゴードン:米国の経済成長を振り返り、全体像を捉える必要があります。大統領によれば、2%成長が続いた7年間を抜け出し、たちまち、しかも苦労なく3%や4%へと成長率を引き上げるところだ、とよく耳にします。そこで、2%や4%という数字に関連して、いくつか説明しましょう。
1870年から1970年までの1世紀に、米国経済は約4%の成長を遂げました。私が「偉大な発明」と呼ぶ、電気と内燃機関が成長を後押しした時代です。電気によって電灯、機械、エレベーター、地下鉄が実現しました。農場を離れるにつれて生産性を高めた、都市の高密度化も可能になりました。内燃機関は自動車輸送と航空輸送をもたらしました。速度に革命が起き、セントラルヒーティングやエアコンの登場で温度調節にも革命が起きました。乳児死亡率と平均寿命にも大きな変化がありました。これらはすべて、非常に短い期間に起きたのです。
「 偉大な発明の主要な効果は、ほぼ出尽くしていた。」―ロバート・J・ゴードン
厳密には、1870年から1970年までの全期間ではなく、1890年から1930年の間に目覚ましい変化が起きました。1970年以降……成長率は約4%から3%近くまで鈍化しました。その大部分は生産性の伸びの低下によるものです。私の見方では、偉大な発明の主要な効果がほぼ出尽くしていたからです。
労働力人口が1970年代、1980年代、1990年代に急速に増えたため、成長率は生産性ほど落ち込みませんでした。1970年代にベビーブーム世代の若者が労働力に加わっただけでなく、20世紀後半は女性が労働力に参入した主要な時期でもありました。
1970年から2006年まで、成長率は約3%でした。2006年以降の10年間は2%成長に届かず、1.3%にとどまりました。なぜか、と言われるでしょう。それは、私たちがたどってきたこの2%成長の経路が、景気後退のどん底から始まっているからです。失業率が10%から現在の4.5%に下がることで可能になった労働供給を使い切ってきた時期です。したがって、過去10年間の成長率は1.3%にすぎず、前の35年間の半分を大きく下回っています。
……2006年以降、実質GDP全体の成長率はわずか1.3%でした。この大幅な減速の理由を見ると、約半分は[労働]時間によるものです。その一因は、ベビーブーム世代が退職し、労働力から抜けることで労働力人口の伸びが鈍化していることです。また、働き盛りの男女の労働参加率も大幅に低下しました。
先進国20カ国を比較すると、米国の働き盛りの男性の労働参加率は下から2番目、女性は下から3番目です。理由については後で話せるでしょう。しかし、労働投入の伸びの低下がGDP成長の鈍化の半分を占め、残りは生産性の伸びの鈍化です。
私の見方では、過去10年から15年に生産性の伸びが大きく鈍化した主な理由は、コンピューター革命にあります。業務の手法や手続きを、紙や計算機、タイプライターから、フラットスクリーンやインターネット、表計算やワープロのソフトウェアへと移すうえで大きな力を発揮したこの革命は、生産性への主な影響を……1990年代後半から2000年代初頭にかけて及ぼしました。
10年前、米国のオフィスは、デスクトップやノートパソコンに頼る現在とほぼ同じ形でした。スマートフォンとその影響については後で話せますが、私の見方では、経済の多くの分野――[教育、医療、小売業、オフィス業務]――で、10年前と基本的に同じ方法で仕事をしています。それが生産性の伸びが大きく鈍化した根本的な理由です。
シーゲル:ジョエル、あなたの意見も聞かせてください。
ジョエル・モキア:私は生涯、経済史家として過ごしてきましたが、自分が座っている枝を切り落とすようなことを言います。過去は未来を予測するためのあまり良い手引きではないと思います。
私の著書『成長の文化』は1500年から1700年までの時代を扱っていますが、未来については何も述べていません。ですから、歴史から推論を引き出すことには慎重でありたいと思います。主な理由は、19世紀と20世紀に経済成長が何らかの相転移を経験したと考えるからです。単に成長が加速しただけでなく、その変化の動的な道筋を決めるパラメーター一式も[変化した]のです。私たちは別の世界にいます。そこでは、技術を動かす要因も大きく異なります。
1700年頃まで、科学と呼べるもの――身の回りの世界を非公式な形で探究すること――は、物を作る方法にほとんど影響していませんでした。技術と科学は実質的に分断されていたのです。その後、最初は非常にゆっくりと、やがて加速度的に、科学が技術に知見をもたらすようになります。現代の誰かが、たとえば原子炉を偶然、あるいは思いがけず設計するなど、今日では考えられません。以前はそのようにして発見がなされていました。
当然、何が科学を動かしているのかという問いが生まれます。それが基本的に、私の楽観論の最大の根拠です。私が「命題的知識」と呼ぶ世界についての知識と、「規範的知識」と呼ぶ物の作り方に関する知識との相互作用は、双方向の関係だと考えています。科学が技術を推進するだけでなく、技術も科学を推進するという点を理解することが非常に重要です。
このことは17世紀にまでさかのぼれます。偉大な科学革命を見れば、それを大きく推進したのは、自然を調べる人々が利用できるようになった新しい道具や器具だったとわかります。顕微鏡、望遠鏡、気圧計、真空ポンプなどを考えてみてください。科学者ではない職人たちが作り、科学者が使ったものが数多くありました。
それは技術にも還元されます。真空のようなものが可能だという事実を人々が理解しなければ、たとえば蒸気機関がどうやって生まれたのか想像もつかないでしょう。そういうことです。これが優れたモデルだと考え、現代に当てはめるなら、今日の科学者が使える道具は、過去に夢にも思わなかったものよりはるかに強力であり、システム全体が劇的に変わったと気づくでしょう。
……はるかに高性能な顕微鏡や望遠鏡があり、ナノスケールの研究ができるというだけではありません。レーザーや高性能コンピューターなど、かつて誰も想像しなかった道具もあり、計算物理学のようなことが可能になっています。技術を動かす要因のうち、この部分は25年前と比べても今日のほうがはるかに強力です。これが技術進歩の急加速につながらないとは考えられません。
シーゲル:ジョエル、こうしたコミュニケーション能力は、将来、生産性と成長を強力に刺激する要因になり得ると思いますか。
モキア:そう思うだけでなく、これまで何度もそう述べてきました。もう一度、歴史上の類例を挙げましょう。……18世紀に検索エンジンが発明されました。当時の検索エンジンは今ほど強力ではありませんが、百科事典が生まれたのです。
ディドロとダランベールの大百科全書は、啓蒙運動を代表する出版物と見なされることがよくあります。項目をアルファベット順に調べることで、最良の実践知にアクセスできるようにしました。これは一例にすぎません。索引の充実した技術書は数え切れないほどありました。それが、その後の展開を大きく促しました。しかし、ガリレオの望遠鏡と同じように、そうしたものはハッブル望遠鏡とは大きく異なります。
「過去は未来を予測するためのあまり良い手引きではない。」―ジョエル・モキア
当時の百科事典に比べると、今日のインターネットでは、人類の知識全体が、誰もが利用できるようになりつつあります。ウィキペディアだけの話ではありません。図書館に所蔵されている科学雑誌や専門誌のすべてをまとめて利用できるということです。驚くべきことです。しかし、ここからわかるのは、これまで無関係だった知識の断片を組み合わせることでイノベーションが大きく生まれるのなら、これこそがさらなる進歩の鍵だということです。
シーゲル:ボブ、これにどう答えますか。
ゴードン:少し立ち戻って、物事を正しく測れていない可能性について話しましょう。経済がGDPや生産の測定値に含まれない形で、膨大な便益と福祉をもたらすことは、昔から変わりません。馬から自動車への移行がもたらした大きな便益や、それによって街が清潔になったことを考えてください。生まれたばかりの赤ちゃんが生後1年以内に亡くなる確率が25%もあると心配しなくてよくなった母親の安心を考えてみてください。
感染症の治療法が生まれたことも考えてください。20世紀初頭に実現した、こうした人類への恩恵は、GDPに含まれていませんでした。したがって、今日の発明、特にスマートフォンやタブレット、その派生製品やアプリを見ると、そこから大きな恩恵を得ていますが、GDPには含まれていません。また、スマートフォンによって可能になったソーシャルネットワーキングやゲームの多くは、企業がより多く生産したり、より高い賃金を払ったりする能力を高めるものではありません。正当な理由があってGDPに含まれないのです。
無料で費用のかからない情報という点では、重い印刷版百科事典からウィキペディアへの移行も、1990年代後半から2000年代初頭にピークを迎えた革命の一部だと思います。ウィキペディアが発明されたのは2001年です。つまり、インターネットの恩恵はすでに約20年にわたって存在しています。Windows 95が登場したのはもちろん1995年で、今から22年前です。
ですから、今日になって突然、新しい道具が現れて、明日には光年単位の進歩をもたらすというわけではありません。優れた道具はすでに20年間使われており、その恩恵の多くは新たな発明の発見にすでに生かされています。
シーゲル:しかし、特に中国やインドの開放に伴う国際的なインターネット普及を考えると、利用者は何十億人にも上ります。誰もが「この特定の問題について、誰か考えたことがあるだろうか」と思ったら、インターネットで検索するだけで、世界中の知力が問題解決に動員されます。そうした技術が20年前に発明されたのは確かですが、特に国際的な普及は、この5年で本格化したと思います。世界で最も難しい問題のいくつかを解決するために、国際的な規模で知力を活用できるのです。
シュワルツ:大きな疑問や懸念の一つは、最新技術の一部が労働力の必要性に取って代わるのかどうかです。将来を考えるとき、これは生産性に関する課題の一つでしょうか。
「今日になって突然、新しい道具が現れて、明日には光年単位の進歩をもたらすというわけではありません。」―ロバート・J・ゴードン
モキア:技術悲観論者には2種類います。ボブのように、最良の時代は過ぎ去り、これからは進歩が遅くなると言う人たち。そして、技術が加速し、私たちを破滅させると言う、もう一方の技術悲観論者です。人々を破滅させ、仕事を奪い、超高性能コンピューターの奴隷にすると言います。両方が正しいはずはありません。真実はその中間にあるのかもしれません。
あなたが指摘した問題は、基本的に200年前からあります。1821年、[経済学者デービッド・]リカードは[経済学者ジョン・ラムゼイ・]マカロックに宛てた有名な手紙で、労働節約型の技術が……このまま進めば、間もなく誰も働かなくなると述べました。それから200年たった今も、人々は働いています。仕事の性質は変わり、機械がよりきつく、単調で退屈な仕事に取って代わるでしょう。いずれ働くのは、働きたい人だけになる状況に至るかもしれません。
シーゲル:労働参加率はさらに低下すると言っているのですか。以前は週60時間働いていました。その大半は……週40時間、あるいは週35時間へと減りました。
モキア:低下する可能性はありますが、労働参加率が下がれば、すでに経済の非常に大きな分野を占めるボランティア活動が増えると思います。人々は、やりがいを感じ、やりたいと思い、社会に参加したり、人と出会ったりできるなど、仕事がもたらす他の恩恵を得られるから働くのです。そうした変化が見られるでしょう。もちろん、大きな問題となるのは、人々に何らかの市民所得をどう支払うかです。これは所得分配の問題で、誰もが頭を悩ませています。私にはすぐに答えを出せません。
シーゲル:ボブはどう考えますか。
ゴードン:まず、英国オックスフォードの経済学者2人が2013年に発表した論文から始めたいと思います。彼らは今後20年間で仕事の47%がなくなると予測しました。その20年間のうち、すでに4、5年が経過しましたが、予測されたことはまだ何も起きていません。大幅に減少するとされた職種をいくつか見てみましょう。
彼らは、今後20年間で航空機パイロットの仕事の55%が代替されると予測しました。しかし、連邦規制当局が商業航空機を2人ではなく1人のパイロットで運航することを認める動きは、まったく見られません。不動産仲介業者の仕事の86%がなくなるともしましたが、今もほぼすべての不動産取引に人が関わっています。小売店員の仕事の92%がなくなるとも述べました。確かに電子商取引へと移行していますが、昨年時点で小売業全体に占める電子商取引はわずか8%でした。小売部門で働く人々の仕事がすべてなくなるまでには、まだ長い道のりがあります。
お話にあったように、技術楽観論者も技術悲観論者もいます。私が今後も続くと予測する低成長について話すとき、聴衆には、これは雇用にとって朗報だといつも伝えています。過去8年間に1,600万人の雇用が生まれたのは、偶然ではありません。今後も、雇用は失われるより生み出されるでしょう。
シーゲル:ボブ、今の話を受けて続けたいと思います。将来の生産性について、やや悲観的な予測をされています。生産性は生活水準を左右します。視聴者向けに統計をいくつかまとめると、GDP発表後に四半期ごとに公表される非農業部門の生産性は、第二次世界大戦後の期間に年平均で2%を少し上回っていました。この景気拡大局面では、基本的にゼロをわずかに上回るか、0.5%ほどです。
この景気拡大局面での低さは驚くべきことです。過去7、8年間にエネルギー価格が下落した時期の数字としても驚きです。……ボブ、長期的に見て、生産性の伸びと、平均的な米国人や先進国の人々の生活水準をどう予測しますか。
「科学が技術を推進するだけでなく、技術も科学を推進するという点を理解することが非常に重要です。」―ジョエル・モキア
ゴードン:生産性の伸びと生活水準を区別してくれたのはありがたいですね。先ほど述べられた非常に低い伸び、つまり過去7、8年間の生産性の伸びは年0.5%にすぎませんでした。それに対し、今後25年間で1.2%まで加速すると私は予測しています。過去7、8年間のおよそ2倍の速さです。
しかし、だからといって生活水準が年1.2%の速さで伸びるとは限りません。主な理由は2つあります。第一に、ベビーブーム世代の退職や働き盛りの男女の労働参加率低下によって、労働力人口が減少します。そのため、将来の1.2%は0.8%に下がります。
次の問いは、中央値の人の生活水準も平均の0.8%と同じ速さで伸びるのか、ということです。ここで、まだ触れていない興味深い問題、すなわち格差の拡大に行き着きます。上位の良い仕事に就く人々の所得は、下位の人々よりはるかに速く増えています。過去30年間と同じペースで格差が所得を上位に集中させ続けるなら、中央値の人の所得の伸びは、将来、年0.8%ではなくその半分にとどまるでしょう。
大きな問題は、所得格差がさらに拡大するかどうかです。国勢調査の所得中央値と平均値を見ると、中央値は分布の真ん中にいる人の所得ですが、平均値には上位層の所得もすべて含まれます。この所得中央値と平均値の差は、過去10年間でさえ年約0.4%ずつ広がり続けています。
したがって、生活水準の伸びについて見通しは明るくありません。しかも、連邦債務の危うい将来、資金が枯渇しつつある社会保障、そして高齢化する人口の将来をどう支えるかという問題には、まだ触れていません。
……今日の若者は多くの点で親世代より恵まれていないことを示す証拠は、すでに数多くあります。特に高校卒業以下の学歴の人々に当てはまり、実質賃金は30年間上がっていません。確定給付型年金のある安定した組合加入の仕事は大幅に減りました。それらは不安定な雇用、福利厚生や医療の欠如に置き換わっています。したがって、人口のかなりの部分、特に大学教育を受けずに社会に出る若者は、すでに親世代より恵まれていません。
シーゲル:ジョエル、ボブの指摘に応答しますか。
モキア: 労働力人口からの離脱や退職などによって、経済成長は鈍化するでしょう。ここで重要なのは、国民所得勘定では余暇を計上していないという点です。働きたくないから働かない人がいれば、国民所得は減少します。それは悪いことです。
もちろん、悪いことではありません。余暇そのものに価値があることは誰もが分かっています。さらに、人工股関節や人工膝関節、ペースメーカーなどのおかげで、今日の退職者はゴルフをしたり、ヨーロッパの美術館を巡ったり、楽しい時間を過ごしたりしています。40年、50年前の人々が車椅子で過ごしていたのとは違います。こうした福祉の向上は、どれも計上されません。
もう一つ、こうした人々が働かないとは限らないことも明らかです。お二人には、先週発表された『エコノミスト』の調査論文をご覧いただきたいと思います。そこでは、特に65歳から74歳の年齢層を中心に、働く能力があり、働く意欲もある人が人口のかなりの割合を占める可能性が指摘されています。働くべきでない理由はありません。ただし、社会の制度が彼らを組織的に差別してきた状況を変えられればの話です。
両方を同時に主張することはできません。こうした人々が働けば、労働力人口に加わるため、成長はこれまでより実際に速くなるでしょう。『エコノミスト』はまた、第二次世界大戦後に女性が労働力人口に加わったことで国民所得が大幅に押し上げられたことと比較しています。働かないのであれば、働かないことを選ぶほうが本人にとって望ましく、余暇を楽しんでいるということです。生活水準はGDPに計上されるものだけではありません。
ボブによれば親世代よりずっと不遇だという若者についても、正しく測れば実際にそうなのかは明らかではありません。彼らの親世代は、アップルストアで人々が買う小さな箱の中に、世界中の情報が詰まっているという恩恵を受けていませんでした。車を買わない人々は、買えないからではなく、Uberを使えるため車を持ちたくないのです。家を買わずに賃貸物件を借りています。
テクノロジーは生活のあらゆる面を変えており、今も小麦と鉄鋼の経済にいるかのように物事を測るのは、根本的に誤解を招くと私は思います。生活水準は一貫して向上してきたと考えています。実質賃金だけを見ると、デフレーターが、実際に起きている福祉の向上ではなく、測定可能な種類の成長を偏重していることが、私には大いに懸念されます。ボブもよくご存じのとおりです。
「雇用は失われるよりも、引き続き創出されるでしょう。」―ロバート・J・ゴードン
彼の言うとおり、こうしたことは過去にも起きました。ただ、今日ではこれまでになく目立つようになっていると思います。変化の速度も速まっています。今では無料で手に入り、当たり前のものとして享受しているのに、国民所得勘定にはまったく計上されないものをいくつか考えてみてください。
たとえばGPSを考えてみてください。誰でもGoogleマップを使って道を見つけられます。地図を買う必要も、行き先を人に尋ねる必要もありません。……こうしたことは、この5年か10年の間に実現しました。音楽についても、SpotifyやPandoraなど、いくつあるか分からないサイトで、想像できるあらゆる音楽にアクセスできます。こうしたものは無料か、ほとんど無料です。いずれも経済厚生に寄与しますが、消費者が直接対価を払っていないため、国民所得勘定には計上されません。
……ただ、現在の、そして特に今後10年から15年の技術進歩は、デジタル経済への偏重から自ら脱却していくと指摘したいと思います。[理論物理学者・数学者の]フリーマン・ダイソンは最近、20世紀が物理学の時代だったとすれば、21世紀は生物学の時代になると書きました。今や可能になりつつあるのは、植物と動物の両方を、これまでにない程度まで操作することです。こうした新しい遺伝子編集技術によって、まったく新しい世界を生み出すものを作れるようになります。……CRISPR-Cas9[標的ゲノム編集]技術が開発され、10年から15年で、私たちの仕様に沿って生物を設計できるようになりました。
シュワルツ:経済の見通しについて多く話してきました。ゴードン教授、政策面について、まずご意見や締めくくりの考えをお聞かせいただけますか。
ゴードン:政策面では、出発点となる経済成長率全体について考えましょう。高齢世代を支える負担に備える必要があります。退職者には余暇を楽しむ時間も能力も十分あるというジョエルの主張とは裏腹に、彼らは十分な貯蓄をしていません。余暇を楽しむにはお金が必要ですが、その資金を蓄えていないのです。したがって、65歳で退職し、90歳や95歳まで生きる人々の将来には、財政上の影響が重くのしかかります。この点を考えなければなりません。
高齢化する人口の負担に対する最も直接的な解決策は、移民の受け入れ拡大です。米国では現在、毎年、人口の約1%の3分の1に相当する人数を合法的に受け入れています。カナダでは人口のちょうど1%を受け入れており、相対的に3倍です。教育、語学力、職業訓練を評価するカナダのポイント制に倣えば、より有能な人材、雇用を生み出す人、新しい企業を立ち上げる人を受け入れられるでしょう。ですから、政策課題の筆頭にこれを挙げます。移民政策ではトランプ大統領と正反対の方向を目指すことになります。
もう一つの問題は、米国で働き盛りの男性の労働参加率が非常に低い理由の一つとして、多くの国民が刑務所に収容されていることが挙げられます。米国の収監率は、先進的な西欧諸国の大半の7倍です。軽微な薬物犯罪や非暴力犯罪で収監されている人、社会への脅威となるには高齢すぎる人など、釈放されるべきなのに刑務所で長く過ごしている人が大勢います。また、幼稚園に入る5歳児の語彙力には、貧困層と中流・上位中流層との間に大きな格差があります。
政府の資源を家庭教師による指導や教育に充てる必要があります。対象は3歳や4歳からではなく、生後6カ月からです。将来、より平等で格差の少ない社会を築きたいのであれば、貧困層に重点を置くべきです。政策面では、まずこうしたところから着手するでしょう。
モキア:ボブの話にはすべて同意します。また、私たちが現在進めていることがすべて現政権の方針に逆行しているという点にも同意します。さらに2点付け加えます。第一に、競争力を保ち、科学がもたらす恩恵を享受するには、世界各国と競争できなければなりません。開かれた経済が必要です。グローバル化という競争に参加すべきです。今日、この地球上で存在する競争はそれしかありません。「米国第一」という議論は、まったく逆効果だと感じます。
もう一点、政権は口先では支持していますが、何もしていないことがあります。それは、インフラが著しく不十分だということです。……既存のインフラへの大規模な投資だけでなく、米国のエネルギー部門の脱炭素化を基盤とする新たなインフラの構築にも投資する必要があります。エネルギー部門は、今後15年から20年で化石燃料依存から脱却する必要があります。おそらくそうなるでしょうが、それが不要であるかのように装う政府の政策は、まったく逆効果だと思います。



