労働時間の短縮で雇用を守れるか?

労働時間の短縮で雇用を守れるか?
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操業短縮制度とは、解雇を防ぐため、政府が従業員の労働時間短縮を補助する制度です。多くの国では、製品需要が生産能力を下回る場合に企業がこの制度を利用できます。景気後退時には需要不足に直面する企業が増えるため、操業短縮制度にはルールに基づく要素があります。これは、税法を改正しなくても所得の減少に伴って税額が自動的に下がる所得税制度に似ています。さらに、政策当局は景気後退時に操業短縮制度を利用しやすくします。したがって、この制度には裁量的な要素もあります。税制に置き換えると、景気後退時の税率引き下げに相当します。

ルールに基づく要素と裁量的な要素の効果を定量化するため、豊富なミクロ・マクロ経済データと労働市場のマクロ経済モデルを用い、ドイツを事例として分析します(Balleer et al. 2013)1。ドイツではすべての企業が同じルールの適用を受けるため、操業短縮制度の利用状況と生産の時系列における企業間のばらつきを使って、生産の変化に対する制度利用の自動的な反応を推定できます。次に、この結果を二つの目的に用います。

  • 第一に、ベクトル自己回帰分析において、操業短縮制度のルールに基づく要素と裁量的な要素を切り分けます。

  • 第二に、操業短縮制度がある経済とない経済を反実仮想分析するためにマクロ経済モデルをパラメータ化し、制度の自動安定化効果を定量化します。

ドイツの事例では、この区別が非常に重要であることが分かりました。裁量的な要素とルールに基づく要素を区別したのは、私たちが初めてです(純粋に裁量的な分析については、例えばFaia et al. 2013を参照)。

裁量的な操業短縮政策は失業に影響しない

時系列推定からは、意外な結果が得られました(図1参照)。裁量的な操業短縮措置は、失業に統計的に有意な影響を与えません。これは、景気後退時に追加的な雇用を守ろうとする政策当局の措置が、ドイツではまったく効果を上げていないように見えることを示唆します。興味深いことに、私たちの労働市場モデルはこの結果を説明できます。解雇するかどうかの境目にある企業は、制度の存在、すなわちルールに基づく要素のおかげで、すでに操業短縮制度を利用できます。こうした企業はすでに制度を利用しているため、利用しやすくなっても恩恵を受けません。利用しやすくなると、新たに制度を利用する企業が増えますが、それらの企業は操業短縮制度がなくても従業員を解雇しなかった企業です。そのため、景気後退時に制度を拡充すると、一部の企業への補助は増えますが、解雇には影響しません。

図1。操業短縮政策ショックに対する推定インパルス応答。正の1標準偏差ショックに対する四半期ごとの反応。信頼区間はブートストラップによる90%区間です。構造ベクトル自己回帰モデルは、1993年第1四半期から2010年第4四半期までのドイツのGDP成長率、雇用に占める操業短縮制度利用者の割合、失業率のデータを用いて推定しています。

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操業短縮制度による強力な自動安定化

本稿は裁量的な政策介入の効果が限られることを示唆する一方、モデルのシミュレーションからは、操業短縮制度が非常に強力な経済安定化策であることが分かります。ドイツの操業短縮制度は、失業の変動を21%、生産の変動を約4%抑えます(表1参照)。操業短縮制度の費用が平均でGDPのわずか0.03%であることを踏まえると、これは非常に大きな効果です。比較すると、所得税はGDPの約10%に相当し、先行研究による安定化効果の推定値はGDPの6%から30%です(in’t Veld et al. 2012参照)。

表1。自動安定化効果。詳細はBalleer et al. (2013)を参照。

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安定化効果の規模をより具体的に把握するため、モデルで大不況のシナリオをシミュレーションします。失業率が4.8ポイント上昇するようなマクロ経済ショックを設定します。これは、このような深刻な景気後退で予想される影響です。反実仮想分析によると、ドイツでは大不況期に操業短縮制度のルールに基づく要素が466,000人分の雇用を守りました。したがって、操業短縮制度は大不況期の雇用維持に重要な役割を果たしましたが、ドイツの労働市場の奇跡(雇用の大幅な喪失を伴わないGDPの約7%減少)のすべてを説明するものではありません。

モデル分析から分かるもう一つの興味深い点は、企業にとって解雇費用が高い国ほど、操業短縮制度の安定化効果が大きいことです(表1参照)。従業員の解雇に多額の費用がかかる場合、企業は解雇する代わりに、操業短縮制度の補助を受けて労働時間を調整する強い動機を持ちます。このため、解雇費用がゼロの場合、操業短縮制度が雇用の変動を抑える効果は6.5%にとどまり、基準ケースの21%を下回るとシミュレーションは示しています。これは、解雇費用が相当高い国ほど操業短縮制度が多く利用されているという観察結果とも一致します(Cahuc and Carcillo 2011)。つまり、こうした国の政策当局は、自国の労働市場制度のもとでこの措置がより有益であると認識しているようです。米国には、労使交渉が集団交渉ではなく個別交渉であるなど、制度面でさらに違いがあります。そのため、米国経済における安定化効果は、表1の解雇費用ゼロのケース(それ以外はドイツの制度)よりもさらに小さくなるでしょう(数値と考察はBalleer et al. 2013を参照)。

結論

この分析は、政策当局が一定のルールに基づく要素に任せ、操業短縮制度を受動的にしか活用できないことを意味するのでしょうか。答えは明確に「いいえ」です。ただし、制度をより積極的な安定化策として活用するのであれば、その仕組みをルールに組み込むべきです。例えば、深刻な景気後退時には、雇用主への補助金や操業短縮制度の最長利用期間を自動的に拡大すると、政策当局が事前に決めておくことができます。そうすれば、企業は先を見越した採用・解雇の判断にこのルールを織り込み、操業短縮制度は本稿で示した効果を超えて景気を安定させる可能性があります。ただし、こうした反循環的なルールに基づく政策の費用(または最適性)に関する詳細な分析は、今後の研究課題とします。

この記事は当初、 voxeu.org

著者: Almut Balleer、アーヘン工科大学(RWTH Aachen University)応用経済学教授。 Britta Gehrke、エアランゲン・ニュルンベルク大学博士課程在籍。 Wolfgang Lechthaler、キール世界経済研究所エコノミスト。 Christian Merkl、エアランゲン・ニュルンベルク大学マクロ経済学教授。

著者注:著者らは、本研究プロジェクトへの支援についてFritz Thyssen Stiftungに謝意を表します。

画像:オフィスでコンピューターを操作する従業員 REUTERS/Navesh Chitrakar

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