世界では、より多く、より質の高いインフラが緊急に必要とされています。インフラ不足を縮めるために必要な支出額は年間約4兆ドルと推計され、政府が税収で賄えると現実的に見込める額をはるかに上回ります。つまり民間投資が必要ですが、非常に長い期間を経て初めて収益をもたらすプロジェクトへの資金拠出に伴うリスクを、民間投資家は警戒しています。資本の膠着状態を解消し、必要な資金を呼び込むには、どうすれば投資家の信頼を高められるでしょうか。
慎重になるのは理解できます。政治サイクルよりもライフサイクルの長いプロジェクトは、幅広い政治・規制上のリスクにさらされる可能性があるからです。例えば、将来の政府が新たな規制や税を課したり、支払いの約束を反故にしたり、インフラ資産の運営権の期間を短縮したり、さらには資産を全面的に国有化したりする可能性があります。こうしたリスクを検討する民間投資家は、当初の合意を執行するうえで司法手続きが効率的でも効果的でもないという事実も考慮しなければなりません。
こうした課題は新しいものではありません。例えば2011年、カンヌで開催されたB20およびG20のインフラに関するハイレベル・パネルでも議論されました。しかし、これらの課題や、官民双方が対処するためにできることを体系的に考える枠組みは、これまでありませんでした。世界経済フォーラムの新しい報告書「 戦略的インフラ:インフラプロジェクトにおける政治・規制リスクの緩和」は、その空白を埋めることを目指しています。

まず、政治・規制リスクの根本原因を特定する必要があります。原因には、環境責任などに対する考え方の変化に伴い、公共の利益についての認識が時とともに変わること、現在の議会が将来の議会の主権を制限するのを困難にする政治制度の性質、そしてある問題をめぐる世論の圧力が高まる可能性や、それに政府が対応する可能性についての投資家の誤認が含まれます。
投資家が求める予見可能性と、有権者が求める柔軟性を両立させる万能策はありません。しかし、予見可能な形で柔軟性を認めるルールを定められる場合もあります。例えばドイツの新設太陽光発電所向け固定価格買い取り制度は、送電網に接続される太陽光発電容量に応じて自動的に調整されます。
投資安定化法の制定や憲法上の保証の提供は、政府にできることの一部です。しかし、それだけでは不十分であり、信頼できる機関と、腐敗防止への強い取り組みによって支えられる必要があります。また、二国間投資協定がより大きな役割を果たす余地もあります。こうした協定はすでに数多く存在しますが、保護条項の文言が曖昧だったり、仲裁手続きに議論の余地があったりすることもあり、十分に活用されていません。
政府の取り組みに加えて、民間部門もより幅広いリスク緩和策を開発できます。資産の収用や現地通貨の交換不能化など、より困難なリスクの多くは金融商品を通じて対処できます。現地パートナーや多国間開発銀行との合弁事業など、慎重に検討された所有構造は、政治的介入を抑止する助けになります。また、企業がより専門的で、持続可能かつ開かれた形で事業を運営するほど、そもそも政治的介入を求める世論の圧力が表面化する可能性は低くなります。
世界が都市化し、経済成長を続け、繁栄を広げ、気候変動という課題に取り組むには、インフラ不足への対処が不可欠です。インフラへの民間投資のリスク緩和は、官民が真摯で透明性の高いパートナーシップのもとで協力して初めて可能になります。
本日発表した、インフラプロジェクトにおける政治・規制リスクに関する報告書は、 こちらからご覧いただけます。
ダボス2015のセッション「 インフラ不足の解消」をご覧ください。
著者:ペドロ・ロドリゲス・デ・アルメイダ、インフラ・都市開発産業部門ディレクター兼責任者
画像:2012年9月29日、カリフォルニア州ロサンゼルスで撮影された航空写真。10号線の下を南向きに走る405号線。ロイター/ジーナ・フェラッツィ


